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著作権判例セレクション

差止の射程範囲(カラオケ装置の撤去を認めた事例)

▶平成131001日名古屋地方裁判所[平成13()3153]
1 証拠によれば,原告から依頼を受けた株式会社パソナソフトバンクの調査員2名は,平成12年7月15日(土曜)の午後7時20分から午後9時10分までの1時間50分の間,本件店舗において客を装って営業実態の調査をしたが,その際,被告は,調査員らの問いに対し,本件店舗は年中無休で営業しており,営業時間は毎日午後5時から午前零時までの7時間である旨答えていること,上記調査の行われた1時間50分の間に,本件店舗では,調査員による歌唱分を除いても,管理著作物11曲がカラオケ演奏され,調査員と無関係に来店していた女性客及び被告が歌唱したこと,この間に管理著作物以外の曲が歌唱されたことはなかったことが認められ,上記事実に,被告が答弁書において,仮処分執行後はカラオケを使用できなくなったことにより客が来店しなくなり,売上げがなくなったと主張していること,被告自身,月に25日程度の営業を行うことを自認していることを総合すると,上記調査が週末の賑わう時間帯において実施されたことを考慮しても,原告が著作権侵害行為を行っていた平成10年2月1日から平成13年4月15日までの間に無許諾で演奏した管理著作物の数は,少なくとも原告主張の1か月当たり200曲を下回ることはないと認められ,この認定を左右するに足る証拠はない。
2 また,前記のとおり,被告の設置したカラオケ装置は,原告の管理著作物を演奏する目的で使用されており,それ以外の音楽著作物を演奏することはほとんどなかったと認められるので,カラオケ装置は,著作権法112条2項にいう「もっぱら侵害の行為に供された機械」に相当し,撤去請求の対象となると解するのが相当である。この点につき,被告は,今後カラオケ装置を使用する予定はないと主張するが,差止め等の必要性がないというためには,単に主観的な言明のみでは足りず,侵害のおそれがないことを保障する客観的な状況を必要とするところ,被告は,前記のとおりカラオケを使用できなくなったことにより客が来店しなくなったと主張する一方,本件店舗の営業を継続していることに照らすと,本件についてはなお差止め及び侵害行為に使用した物件を撤去する必要性があると認められる。
3 以上の次第で,原告の請求は理由があるからこれを認容し,主文のとおり判決する。