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著作権判例セレクション
アルファベット文字を装飾したものの創作性及び侵害性を否定した事例
▶令和元年5月21日東京地方裁判所[平成29(ワ)37350]▶令和元年10月23日知的財産高等裁判所[令和1(ネ)10045]
そこで,これらが,反訴原告の著作権を侵害するものであるかについて検討する。
イ 反訴被告標章1,2及び5の作成,使用等によって,反訴原告標章1,2及び5についての反訴原告の複製権又は翻案権が侵害されるか否かを検討するため,反訴被告標章1と反訴原告標章1が同一性を有する部分についてみると,これらは,深緑色の長方形(横長)の中に白いアルファベット文字が配置されていること,そのアルファベット文字の書体,大きさ,文字間の間隔及び配置のバランス,全ての文字が円の構成要素とされていること,「OFF」と「USE」のアルファベット文字の上部に三つの白丸で弧を描くような装飾が施されていることなどで共通している。
アルファベット文字について著作物性を肯定するためには,その文字自体が鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えていなければならないと解するのが相当である。反訴被告標章1と反訴原告標章1のアルファベット文字が反訴被告の店舗で使用等をするために様々な工夫を凝らしたものであることは反訴原告が主張するとおりであるとしても,それらの工夫による反訴被告標章1と反訴原告標章1のアルファベット文字は,いずれも「オフハウス」という名称をよりよく周知,伝達するという実用的な機能を有するも
のであることを離れて,それらが鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えるに至っているとは認められない。また,その余の共通点については,いずれもアイデアが共通するにとどまるというべきであり,仮にアイデアの組合せを新たな表現として評価する余地があるとしても,それらはありふれたものであるといわざるを得ないから創作性は認められない。
したがって,反訴原告標章1と反訴被告標章1は,表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないから,仮に反訴原告標章1が著作物であるとしても,反訴被告標章1を作成等する行為は反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものとはいえない。また,上記と同様の理由から,反訴被告標章2及び5を作成等する行為についても反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものではない。