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著作権判例セレクション

芸能プロダクションの過失責任

平成230629日東京地方裁判所[平成22()16472]
5 争点(3) 故意過失について
本件において,被告会社は,芸能プロダクションであるから,他人の著作物を利用する際には,その著作権及び著作者人格権を侵害することのないよう,その著作権及び著作者人格権の帰属を調査の上,事前に,演奏することや公衆送信が可能な状態に置くこと,(原)著作者名を表示すること,表題や歌詞を改変すること等について許諾を得るよう注意を尽くす義務があるところ,被告会社代表者は,中目黒のダーツバーにおいて原告及びEと協議した際,本件著作物の著作権及び著作者人格権の帰属について,歌詞は原告が著作者であることを認識し,楽曲については,原告及びEが作曲の経緯について話していたにもかかわらず,著作権等の権利の帰属について十分に聴取等しなかったものであり,また,本件著作物については,エイズチャリティコンサートのエンディングにおいて,メロディラインのない伴奏部分のみを使用することの許諾を得ただけであったにもかかわらず,包括的な許諾を得たものと軽信し,漫然と本件著作物を使用して,第3,4(2)の各行為に及んだのであるから,被告会社には,少なくとも過失があったというべきである。
また,被告Bについては,被告会社に所属する歌手であるとともに,被告Bの名義による被告ブログの管理に関与していたものであり,被告会社の役員として,自らが使用する他人の著作物について,被告会社が負う上記注意義務に関して,被告会社代表者が行う業務執行一般について監視する義務を負うものと解されるところ,被告Bは,被告会社が本件著作物の音源の複製物,歌詞及び伴奏の譜面等の提供を受けたことのみから,許諾を得たものと軽信し,本件著作物を使用して,第3,4(2)の各行為に関与したものであるから,被告Bにおいても,少なくとも過失があったと認めるのが相当である。