Kaneda Legal Service {top}
著作権判例セレクション
プログラムの著作物の特定性と侵害性の立証
▶平成19年12月6日東京地方裁判所[平成18(ワ)29460]
2 争点2(被告B及び被告Cによる著作権侵害の有無)について
原告は,本件プログラムの著作物性について,プログラムは,指令の組合せ方に作成者の個性が現れるので,誰が作成しても同様になってしまうという極めて単純なプログラム以外のプログラムについては,著作物性が認められるのであり,本件プログラムも,アプリケーションシステムの開発用に販売されているシステム開発用のソフトウェアであるアクセスを使用して作成されたプログラムであり,特徴的な機能を有するのであるから,著作物性を有するというべきである旨主張する。
しかしながら,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであり(著作権法2条1項1号),著作物性を肯定するためには,表現それ自体において創作性が発現されること,すなわち,表現上の創作性を有することが必要とされるものであるから,著作物性は,当該表現物の具体的な表現に即して,その創作性の有無を検討することにより判断されるべきものであり,具体的な表現を離れて論ずることは相当ではない。そして,複製権の侵害が問題とされる場合には,当該表現物と複製物と主張されている対象物のうち,同一性を有する部分の創作性の有無が検討されるのであるから,プログラムを複製されたと主張する場合には,自己のプログラムの表現上の創作性を有する部分と,対象プログラムの表現との同一性が認められることを主張する必要がある。すなわち,複製物であると主張する対象において,アイディアなどの表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,同一性を有するにすぎない場合には,既存の著作物の複製に当たらない(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決参照)ことから,通常,表現の同一性のある部分を抽出して,同部分の表現の創作性の有無を検討することによって,著作物性及び複製権侵害の有無が並行して判断されるのである。
この点につき,原告は,本件プログラムについて,機能面での特徴を指摘するのみで,被告らが使用するプログラムとの対比及びその同一性についての具体的な表現上の創作性について何ら主張するものではないから,本件プログラムについての複製権侵害を基礎付ける,本件プログラムの著作物性,被告らが使用するプログラムとの同一性の有無についての主張・立証がないものといわざるを得ない。
なお,原告は,被告Cに対する請求について,同被告が本件プログラムの複製物を使用したことが著作権を侵害したと主張するのみで,当該使用行為が著作権のどのような支分権を侵害するのか明らかにしないから,上記主張はそれ自体失当であり,これを採用する余地はない。
したがって,著作権侵害に関する原告の主張を認めることはできない。