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著作権判例セレクション

絵画の縮小カラーコピーと「複製」

平成22519日東京地方裁判所[平成20()31609]▶平成221013日知的財産高等裁判所[平成22()10052]
(2) 複製の成否
ア 著作物の複製とは,既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいうところ(最高裁昭和53年9月7日第一小法廷判決参照),前記(1)のとおり,本件コピー1は,本件絵画1に依拠して作製されたもの,また,本件コピー2は,本件絵画2に依拠して作製されたものであり,その作製された画面の大きさは,それぞれ縮小カラーコピーというように,本件コピー1では縦16.2㎝×横11.9㎝,本件コピー2では縦15.2㎝×横12.0㎝等であるから,本件各絵画の大きさとは自ずと異なるが,本件各絵画と同一性の確認ができるものであり,本件各コピーの前記認定の作製方法及び形式からして,本件各絵画の内容及び形式を覚知させるに足りるものであるから,このような本件各絵画の再製は,本件各絵画の著作権法上の「複製」に該当することが明らかである。
イ この点について,控訴人は,本件各コピーは,いずれも著作権法が本来その保護の対象とする芸術性,美の創作性や感動を複製したものではなく,流通の安全性を図り不正品を防ぐ単なる記号の意味合いにすぎないもので,美術の著作物の複製が著作権法上の「複製」に該当するために必要な鑑賞性を備えず,本件各コピーの作製は同法上の「複製」に該当しないと主張する。
しかしながら,絵画は,絵画の描く対象,構図,色彩,筆致等によって構成されるものであり,一般的に創作的要素を具備するものであって,それ自体が控訴人の主張する鑑賞性を備えるものであるから,当該絵画の内容及び形式を覚知できるものを再製した以上,その絵画が有する鑑賞性も備えるものであって,絵画の複製に該当するか否かの判断において,絵画の内容及び形式を覚知させるものを再製したか否かという要件とは別個に,鑑賞性を備えるか否かという要件を定立する必要はなく,控訴人の主張は採用することができない。
ウ また,控訴人は,本件各コピーを観ることによって本件各絵画の特徴を感得することができたとしても,その感得の対象はあくまでも縮小カラーコピーである本件各コピーの特徴にすぎないと主張する。
しかしながら,上記のとおり,本件各コピーによって本件各絵画の内容及び形式を覚知するに足りることは前記認定のとおりであるから,これをもって本件各絵画の複製を認定することに問題はなく,控訴人の主張は,本件各コピーの作製が著作権法上の「複製」に該当しないという意味であるとしても,これを採用することができない。