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著作権判例セレクション

トレース疑惑あるイラストの投稿につき、同一性保持権侵害を否定した事例

令和31223日東京地方裁判所[令和2()24492]▶令和41019日知的財産高等裁判所[令和4()10019]
[控訴審]
(5) 著作者人格権侵害(同一性保持権侵害)について
ア 前記(2)のとおり、①本件ツイート1-1に添付された画像のうち、本件投稿画像1-1-2及び1-1-3は、本件被控訴人イラスト1と乙1の2イラストを重ね合わせたものであり、また、②ツイッターのタイムライン上に表示された本件ツイート1-1における本件投稿画像1-1-2~1-1-4は、被控訴人作成のイラストの一部のみが表示されているから、それぞれ、被控訴人のイラストの改変又は切除に当たると解する余地がある。
イ しかしながら、①については、著作物がイラストであって重ね合わせて用いることで、引用の目的である批評のために便宜でありかつ客観性が担保できることに加え、その利用の目的及び態様に照らすと、著作権法20条2項4号の「やむを得ないと認められる改変」に当たるといえる。
ウ 次に、②についてみると、証拠によると、ツイッターのタイムライン上の表示は、ツイッターの仕様又はツイートを表示するクライアントアプリの仕様により決定されるものであって、投稿者が自由に設定できるものではなく、投稿者自身も投稿時点では、どのような表示がされるか認識し得ないこと、投稿後も、ツイッターの仕様又はツイートを表示するクライアントアプリの仕様が変更されると、タイムライン上の表示が変更されること、ツイートに添付された画像データ自体は当該ツイートを閲覧したユーザーの端末にダウンロードされており、タイムライン上の画像をクリックすると、画像の全体が表示されることが認められることに照らすと、投稿者が改変主体に当たるかという点を措くとしても、タイムライン上の表示が画像の一部のみとなることは、ツイッターを利用するに当たり「やむを得ないと認められる改変」に当たるというべきである。
エ そうすると、本件ツイート1-1の投稿による著作者人格権侵害(同一性保持権侵害)について、「権利侵害の明白性」は認められない。
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(4) 著作者人格権侵害(同一性保持権侵害)について
前記(1)のとおり、①本件投稿画像1-2-3及び1-2-4は、本件被控訴人イラスト2と乙2の3写真を重ね合わせて表示したものであり、②ツイッターのタイムライン上に表示された本件投稿画像1-2-1、1-2-3及び1-2-4においては、本件被控訴人イラスト2の一部のみが表示されているから、本件被控訴人イラスト2の改変又は切除に当たると解する余地があるものの、いずれも前記1(5)と同様に、著作権法20条2項4号の「やむを得ないと認められる改変」に当たるといえる。
そうすると、本件ツイート1-2の投稿による著作者人格権侵害(同一性保持権侵害)について、「権利侵害の明白性」は認められない。
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(3) 著作者人格権侵害(同一性保持権侵害)について
前記(1)のとおり、①本件投稿画像2-2-1は、本件被控訴人イラスト3に口の部分を囲う赤色枠を付記したものであり、また、②ツイッターのタイムライン上に表示された本件投稿画像2-2-2はその一部のみが表示されているから、それぞれ、本件被控訴人イラスト3又は5についての改変又は切除に当たると解する余地があるものの、①については、特に比較する部分を示すために必要な範囲での改変といえるし、②については前記1(5)と同じ理由により、いずれも、著作権法20条2項4号の「やむを得ないと認められる改変」に当たるといえる。
そうすると、本件ツイート2-2の投稿による著作者人格権侵害(同一性保持権侵害)について、「権利侵害の明白性」は認められない。