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著作権判例セレクション
著作権の「譲渡契約」か「利用許諾契約」かが問題となった事例
▶平成17年03月29日大阪地方裁判所[平成14(ワ)4484]
3 争点(3)(本件出版契約について)
(1) 同(3)ア(本件出版契約は,著作権譲渡契約か,著作権利用許諾契約か)について
ア 前記(当事者間に争いのない事実等),証拠,原告本人尋問及び被告ら代表者尋問の各結果)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(ア) 原告は,ビジュアルディスクに収録するデジタル画像データの基となった写真をディザインに貸与することについて,平成9年7月14日,「著作権フリー写真集CD-ROM出版契約書」と題する契約書を取り交わして合意した(本件出版契約)。
(イ) 本件出版契約の第2条は「ポジ使用の許諾」との表題が付され,その1項には原告がディザインに対して原告所有のポジ写真の情報をデジタル化によりディザインが管理又は所有するCD-ROMに書き込む方法によって使用することを「許諾」すると規定し,第6条は「ロイヤリティについて」との表題が付され,「第2条のポジ使用料として」ロイヤリティを支払うものとすると規定している。
(ウ) 本件出版契約には,著作権の利用許諾ができる地位を第三者に譲渡することを認める規定は存在しない。
(エ) 本件覚書締結当時,被告イシイは,原告に対し,既に著作権の譲渡を受けているとか,ディザインの地位を引き継いでいる等述べたことはない。また,本件覚書には,原告写真の使用許諾がディザインを通してなされていたこと,ディザインとの本件出版契約が解除されたので,改めて使用許諾が必要であるとの前提から合意されたものであることが,前文において明記されている。
イ 上記アの認定事実によれば,本件出版契約の内容は,著作権の利用許諾ができる地位を第三者に譲渡し得る旨の合意は明示・黙示ともに存在せず,原告が,ディザインに対し,原告が著作権を有する写真についてデジタル画像データを作り,これをCD-ROMに収録することについて許諾する債権契約としての著作権利用許諾契約というべきである。
ウ これに対し,被告らは,本件出版契約第4条は「商品の著作権は甲(ディザイン)が有する。」と規定しており,このことからすれば,CD-ROMへの収録という利用方法に限定される著作権を原告からディザインに譲渡する旨の契約である,仮に利用許諾契約であっても,利用権を第三者に譲渡することにつき予め承諾を与えられていたと主張する。
しかしながら,本件出版契約は,第3条において「ポジに関する権利」は原告が有することを規定し,第6条でポジ使用料の支払について規定されている。本件出版契約の上記各条項に鑑みれば,第4条にいう「商品の著作権」とは,商品(CD-ROM)の製造販売権を意味するものとして使用されていると解するのが自然であり,デジタル画像データの基となった写真に関する著作権(CD-ROMに収録するとの目的に限定する場合を含む。)自体を譲渡するとの趣旨であると解することは相当でないというべきである。
また,本件出版契約において,利用権を第三者に譲渡することにつき予め承諾を与えていたということのできる条項はないし,他にそのような合意の存在を認めるに足りる証拠もない。
(2) 争点(3)イないしエに関する被告らの主張は,争点(3)アに関する被告らの主張を前提としているものと解されるから,本件出版契約が物権契約である著作権譲渡契約であるか,又は債権契約である著作権利用許諾契約であるとしてもその地位を第三者に譲渡することを予め承諾する旨の合意があるとの被告らの主張が認められない以上,上記各争点に関する被告らの主張を判断する必要はないというべきである。