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著作権判例セレクション
【音楽著作物の侵害性】1小節以内の5文字の侵害性が問題となった事例
▶令和5年9月19日知的財産高等裁判所[令和5(ネ)10050]
原告が、被告に無断で使用されたと主張する部分は、原告作品のうち「あたたーて」の歌詞に相当する部分であるが、仮に、被告が放送したり、DVDとして販売するなどした番組内において、対比表記載のとおりに演奏等がされていたとしても、いずれも、原告作品をそのまま再現しているものではなく、原告作品の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものではないから、同対比表を踏まえても、被告が放送等した番組において、原告作品が使用されたと認めることはできない。
なお、「あたたーて」の5文字は、文字数が少なく、誰もが偶然に発することが十分あり得る程度のものであって、一見して何らかの思想又は感情を表現したものとは認めがたいものである上、原告の主張によれば「あなたはだあれ」の趣旨で幼児が発したものであるというのであるから、他の幼児が原告作品に依拠することなく同じ文字列を発する可能性が高い。また、「あたたーて」の部分に相当する原告作品の旋律及びリズムについても、1小節以内の非常に短いものであって、偶然に同様の旋律やリズムを発することもあり得る程度のものと認められる。そうすると、仮に、被告の放送等する番組において、出演者等によって「あたたーて」と発せられ25 たり、原告作品の「あたたーて」の部分における旋律及びリズムと同じ旋律やリズムが用いられたとしても、これをもって、直ちに原告作品に係る著作権が侵害されたと認めることは困難であるというほかはない。