Kaneda Legal Service {top}

著作権判例セレクション

【言語著作物】祈願経文の著作物性を肯定した事例

平成251213日東京地方裁判所[平成24()24933]
本件経文の著作物性
(1) 証拠によれば,本件経文は,原告代表役員が天上界により降ろされた聖なる祈りの言葉として創作したものであり,原告における宗教的儀式の中で読誦して用いられるものであるとされるところ,甲19号証(本件経文を読み上げた音声を収録した録音テープ)によれば,本件経文の具体的内容は,次のとおりであるとされる。
ア 本件経文①は,地球人を誘拐する宇宙人の悪行を封印し,主に帰依する者の守護を祈願する旨の内容のものであり,「地球人をさらい」で始まり,その途中に「地球に守護神,エル・カンターレあり。その魂の兄弟,リエント・アール・クラウドこそ,」との部分や,「われらエル・カンターレの弟子一同,地球を愛と慈悲の光の星とすべく,日々努力せる者なり。」との部分を含み,「ご指導,まことにありがとうございました。」で終わるものである。
イ 本件経文②は,主を信ずる者につき罪が許され救われる旨を述べ,主を信ずることを呼びかけ誓うことを内容とするものであり,「幸いなるかな」で始まり,その途中に「ただひたすらに主を信じなさい。ただひたすらに主の救いを信じ,主の全能なることを祝福しなさい。」との部分や,「主エル・カンターレと共にある者に,ヒーリング・パワーが臨みますように。」との部分を含み,「魂の底より,お誓い申し上げます。」で終わるものである。
ウ 本件経文③は,人々に害をもたらす悪霊を退治し,封印する旨を内容とするものであり,「目に見えぬ世界より」で始まり,その途中に「善なる魂を持ちし人々を,惑いと苦しみの闇に落とさんとする悪霊よ。」との部分や,「われ,神仏にかわりて,汝らを退治する。」との部分を含み,「まことにありがとうございました。」で終わるものである。
エ 本件経文④は,「経営」の概念や,これに必要となる資質等について述べ,そのような資質が与えられるよう祈願することなどを内容とするものであり,「主,エル・カンターレよ。」で始まり,その途中に「主よ,吾に不退転の決意を授けたまえ。吾に勤勉なる精神と不屈の闘志を与えたまえ。」との部分や,「事業の成否は,与えられた天分と,経営者一己の精進にかかっております。」との部分を含み,「ありがとうございました。」で終わるものである。
オ 本件経文⑤は,経営に当たっての心構えや決意等を,主に対し呼びかける形で述べることを内容とするものであり,「主よ」で始まり,その途中に「私どもは,現在に対しても,未来に対しても,自信と希望に満ちあふれています。」との部分や,「サービスの一つ一つに,善なる魂を込めて,今日も千客万来」との部分を含み,「まことにありがとうございました。」で終わるものである。
カ 本件経文⑥は,事業を成功させるために必要となる資質や行動等について述べ,事業繁栄を目指すことを呼びかけることなどを内容とするものであり,「大宇宙は」で始まり,その途中に「人,物,金,情報,空間,時間のすべての経営資源を活かし切って」との部分や,「仕事の厳しさと包み込む愛を忘れずに,今日も夢を語り,一日分手堅く強く前進せよ。」との部分を含み,「成功も無限である。」で終わるものである。
()
(3) 以上によれば,本件経文の内容は前記(1)アないしカのとおりであると認められるところ,本件経文の上記内容に照らし,本件経文には,原告代表役員の個性が表現されているものといえるのであって,その思想又は感情を言語によって創作的に表現したものであると認められる。
したがって,本件経文は,言語の著作物(著作権法10条1項1号)として著作物性を有する。