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著作権判例セレクション

【その他の支分権】譲渡権・貸与権の射程範囲(プログラムを改変してコンピュータやサーバーにインストールする行為は、譲渡権の侵害か/インターネットを通じてレンタルサーバ上のプログラムを使用させる行為は、貸与権の侵害か)

平成2883東京地方裁判所[平成27()29129]
1 請求原因2(1)(譲渡権〔著作権法26条の2〕の侵害行為)について
原告は,被告が平成26年9月18日から平成27年9月30日までの間に本件各プログラムを改変して被告の顧客のコンピュータやサーバーにインストールした行為が,原告が有する本件各プログラムの譲渡権を侵害する行為に当たると主張する。
しかしながら,著作権法上,譲渡権とは,「その著作物・・・をその原作品又は複製物・・・の譲渡により公衆に提供する権利」(同法26条の2)とされ,ここにいう「譲渡」とは,目的物の所有権を移転させる行為をいうものと解されるところ,被告が本件各プログラムを改変して被告の顧客のコンピュータやサーバーにインストールする行為は,本件各プログラムの「原作品」や「複製物」の所有権を移転させるものではなく,そもそも上記意味における「譲渡」に当たらないから,同行為が,原告の有する本件各プログラムの譲渡権を侵害するということはできない。
2 請求原因2(2)(貸与権〔著作権法26条の3の侵害行為〕)について
原告は,被告が平成26年9月18日から平成27年9月30日までの間に本件各プログラムをレンタルサーバ上に設置した上,被告の顧客にインターネットを通じて本件各プログラムを使用させた行為が,原告が有する本件各プログラムの貸与権を侵害する行為に当たると主張する。
しかしながら,著作権法上,貸与権とは,「著作物・・・をその複製物・・・の貸与により公衆に提供する権利」(同法26条の3)とされ,「貸与」とは,使用期間を限った上で複製物を占有して使用する権原を取得させる行為をいうものと解されるところ(同法2条8項参照),被告が本件各プログラムをレンタルサーバ上に設置した上,被告の顧客にインターネットを通じて本件各プログラムを使用させる行為は,使用期間を限った上で本件各プログラムの「複製物」を占有して使用する権原を取得させるものではなく(原告は,被告の顧客のパソコンを「複製物」と主張するところ,被告が同パソコンを顧客に「貸与」していないことは明らかである。仮に,本件各プログラムが設置されたレンタルサーバを「複製物」と解したとしても,インターネットを通じてレンタルサーバ上のプログラムを提供する行為は,同レンタルサーバを顧客の占有下に置くものではないから,やはり複製物を「貸与」するものと解することはできない。),そもそも上記意味における「貸与」に当たらないから,同行為が,原告の有する本件各プログラムの貸与権を侵害するということはできない。