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著作権判例セレクション
【言語著作物/地図】史跡ガイドブックの著作物性が問題となった事例
▶平成13年01月23日東京地方裁判所[平成11(ワ)13552]
(1) 原告著作物一は、このように、新選組に関する、一般に知られている史跡ばかりでなく、あまり知られていない史跡や従前のガイドブックでは紹介されていなかった史跡も含めて紹介し、それらの史跡を訪ねるためにはどのような交通手段を利用するのが便利かという情報を提供するガイドブックである。同書には、右史跡の選択、交通機関やその出発地点等の選択、またある史跡を紹介するに当たり、それに関わるどのような史実又は歴史人物を紹介するかという選択の点のほか、全体的な表現形式の統一性等にも工夫が見られ、創作性が認められる。
(2) 文章部分について
原告著作物一について、一例を挙げれば、対照表記載の「18頁 関田家」をみると、一般には知られていないこの史跡を、紹介する対象として選択したこと、この項目の記載内容として何を紹介するかという点、そのなかで、当時の地名、当時の当主の長男庄太郎が宮川信吉と共に新選組入隊を希望したこと、しかし長男は家を継げと断られ、悔し涙にくれたとの言い伝え、右宮川と新選組隊長近藤勇の関係、関田家の家業、出稽古に来る近藤のためにわざわざ離れの小屋敷を構えたこと、甲陽鎮撫隊を組織した前後には病身の沖田総司を匿い、同隊の後方野戦病院の役割をも引き受けていたこと及びその記述、右庄太郎の死亡日時、年齢等を選択したことの点に創作性が認められる。したがって、この項目の記述については、全体に著作物性が認められるというべきである。
もっとも、対照表「10頁 三鷹駅」の後半部分にある「JR中央線・総武線で東京から、特別快速24分、‥‥(中略)‥‥地下鉄東西線(総武線に乗入れ)で11分。」という記述のように、誰が記載しても異なった記述になり得ないものは、これを選択したことについても、表現形式においても創作性があるものとはいえず、著作物性を認めることができない。
(略)
(3) 地図について
一般に、地図は、地形や土地の利用状況等を所定の記号等を用いて客観的に表現するものであって、個性的表現の余地が少なく、文学、音楽、造形美術上の著作に比して創作性を認め得る余地が少ないのが通例である。それでも、記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法に関しては、地図作成者の個性、学識、経験、現地調査の程度等が重要な役割を果たし得るものであるから、なおそこに創作性が表われ得るものということができる。そして、地図の著作物性は、右記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法を総合して、判断すべきものである。
そこで、原告著作物一に掲げられた地図について検討すると、例えば対照表記載の「竜源寺」の地図では、全体の構成は、現実の地形や建物の位置関係がそのようになっている以上、これ以外の形にはなり得ないと考えられるが、読者が最も関心があると思われる「近藤勇胸像」や「近藤勇と理心流の碑」等を、実物に近い形にしながら適宜省略し、デフォルメした形で記載した点には創作性が認められ、この点が同地図の本質的特徴をなしているから、著作物性を認めることができる。他方、たとえば同記載の「関田家及び大長寺周辺」の地図などは、既存の地図を基に、史跡やバス停留所の名前を記入したという以外には、さしたる変容を加えていないので、特段の創作性は認められない。