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著作権判例セレクション

【言語著作物】休廃刊となった雑誌の最終号における読者宛の挨拶文の著作物性

平成71218日東京地方裁判所[平成6()9532]
本件記事の著作物性について
1 ある著作が著作物と認められるためには、それが思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要であり(著作権法211号)、誰が著作しても同様の表現となるようなありふれた表現のものは、創作性を欠き著作物とは認められない。
本件記事は、いずれも、休刊又は廃刊となった雑誌の最終号において、休廃刊に際し出版元等の会社やその編集部、編集長等から読者宛に書かれたいわば挨拶文であるから、このような性格からすれば、少なくとも当該雑誌は今号限りで休刊又は廃刊となる旨の告知、読者等に対する感謝の念あるいはお詫びの表明、休刊又は廃刊となるのは残念である旨の感情の表明が本件記事の内容となることは常識上当然であり、また、当該雑誌のこれまでの編集方針の骨子、休廃刊後の再発行や新雑誌発行等の予定の説明をすること、同社の関連雑誌を引き続き愛読してほしい旨要望することも営業上当然のことであるから、これら五つの内容をありふれた表現で記述しているにすぎないものは、創作性を欠くものとして著作物であると認めることはできない。
2 右観点からすると、本件記事…は、いずれも短い文で構成され、その内容も休廃刊の告知に加え、読者に対する感謝(…の記事)、再発行予定の表明(…の記事)あるいは、同社の関連雑誌を引き続き愛読してほしい旨の要望(…の記事)にすぎず、その表現は、日頃よく用いられる表現、ありふれた言い回しにとどまっているものと認められ、これらの記事に創作性を認めることはできない。
3 他方、右7点を除くその他の本件記事については、執筆者の個性がそれなりに反映された表現として大なり小なり創作性を備えているものと解され、著作物であると認められる。