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著作権判例セレクション

【権利濫用】他人の著作権(原著作物)又は肖像権を侵害しているかもしれない(二次的)著作権の行使は権利濫用に当たるか
▶平成110909日大阪地方裁判所[平成9()715]
二 争点二(原告第二図柄の著作権)について
1 争点二1(著作物性・権利濫用)について
() (証拠等)によれば、原告第二図柄は、原告Aが独自に作成したものであることが認められる。
被告らは、原告第二図柄は創作性を欠き、原告Aの著作物ではないと主張する。そこで検討するに、(証拠等)によれば、原告第二図柄の背景図柄は、楽器(ドラム)を前にした演奏家(本件第二レコード収録曲の演奏家のリーダーであるドラマーのG)の写真であること、右写真の著作者は原告Aではないことが認められるが、前掲各証拠によれば、原告第二図柄は、演奏家の写真を背景図柄として使用しているのみならず、右上部分に黄色のデザイン化された文字で「G」と、また、その下に赤色のやや小さめの文字で「SEXTET」と題名が表示され、さらに、中段右寄りに白色の文字で三列にわたり六名の演奏家の名前等が表記されていることが認められ、題名の構成、題名、演奏家名等の表示の配置、背景写真とこれらの位置関係等において、なお、思想又は感情を創作的に表現したものであって、美術の範囲に属するもの(著作権法211号)ということができるから、原告第二図柄は原告Aの創作した著作物であると認められる。
() 被告らは、原告第二図柄は写真家の著作権、演奏家の肖像権を侵害するものであって、これに基づく請求は権利濫用であると主張する。
しかし、()で認定判断したとおり、原告第二図柄それ自体が著作物であるところ、仮にこの著作物に他人が著作権を有する写真が許諾なく使用されていたとしても、著作権法の観点からは、原著作物を翻案したものとして二次的著作物(著作権法2111号)として原著作物の著作権に服することがあるとしても(同法28条)、当該二次的著作物の著作権者が二次的著作物の複製権に基づいて差止めを請求することがただちに権利濫用となるものではない。
また、原告第二図柄の利用行為が写真の被写体である演奏家の肖像権を侵害するものであるか否かは本件全証拠によっても明らかでなく、この点を措くとしても、右の点は原告第二図柄の作成者である原告Aと演奏家本人との関係で処理されるべき問題であって、被告らの原告第二図柄の複製、頒布を正当化する根拠となるものではなく、また、原告第二図柄の著作権に基づく請求が権利濫用になるものではないと解するのが相当である。
したがって、被告らの主張はいずれも採用することはできない。