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著作権判例セレクション

【二次的著作権と原著作権】二次的著作物に対する法65条の類推適用の可否

▶平成220910日東京地方裁判所[平成21()24208]
なお,原告らは,本件脚本(二次的著作物)の利用については,共同著作物に関する著作権法65条3項の規定と同様の規律がされるべきであり,原作者が二次的著作物の利用を拒絶するには「正当な理由」がなければならないなどとも主張する。同主張は,本件ただし書規定の解釈に関してなされたものであるが,二次的著作物の利用の場合に上記条項が類推適用されるとすれば,二次的著作物である本件脚本の著作者である原告Xは被告に対し同条項に基づき本件脚本を「年鑑代表シナリオ集」に収録,出版することについて同意を求めることができると解する余地があるので,念のため付言する。
著作権法は,共同著作物(同法2条1項12号)と二次的著作物(同項11号)とを明確に区別した上,共同著作物については,著作者間に「共同して創作した」という相互に緊密な関係があることに着目し,各共有著作権者の権利行使がいたずらに妨げられることがないようにするという配慮から,同法65条3項のような制約を課したものと解される。これに対し,二次的著作物については,その著作者と原作者との間に上記のような緊密な関係(互いに相補って創作をしたという関係)はなく,原作者に対して同法65条3項のような制約を課すことを正当化する根拠を見いだすことができないから,同項の規定を二次的著作物の原作者に安易に類推適用することは許されないというべきである。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。