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著作権判例セレクション

【表現形式が異なる著作物間の侵害性】風俗記事vs風俗漫画

▶平成251128日東京地方裁判[平成24()3677]平成27521日知的財産高等裁判所[平成26()10003]
() 本件は,本訴において,原告・反訴被告(以下「原告」)が,被告・反訴原告(以下「被告」)らが漫画を掲載した雑誌を編集,発行したことが原告の著作物の著作権及び著作者人格権を侵害すると主張して,被告らに対し,不法行為による損害賠償請求権に基づく損害金の連帯支払,被告株式会社Gに対し,著作権法115条に基づく謝罪広告の掲載をそれぞれ求め,反訴において,被告らが,原告がブログに記事等を掲載したことが被告らの名誉,信用を毀損したと主張して,原告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づく各損害金等の支払並びに名誉権に基づく記事等の削除を求めた事案である。

1 本訴
(1) 争点(1)(原告の著作権の侵害の成否)について
ア 原告記事1について
() 原告記事1の場面の流れと被告漫画1の場面の流れは,ほぼ共通し,同一性があるが,これはあらすじという表現それ自体でない部分において同一性があるにすぎないから,被告漫画1各記述が原告記事1各記述を翻案したものであるということはできない。
() そこで,原告記事1各記述と被告漫画1各記述とを対比する。
a 原告記事1記述2は,風俗サービスに関する詳細な説明を記述しているのに対し,被告漫画1記述2は,主人公の短い発言のみを記述しているのであって,両記述は同一性がない。
b 原告記事1記述3ないし6は,極めて短く,筆者の個性が現れているとみることはできないから,被告漫画1記述3ないし6の記述と同一性があるとしても,表現上の創作性がない。
c 被告漫画1記述7と原告記事1記述7とは,相部屋の男性と会話したことやその会話の内容がほぼ共通し,同一性がある。原告記事1記述7は,相部屋の男性とのやりとりを創作的に表現したものであり,被告漫画1記述7は,原告記事1記述7の表現上の本質的特徴の同一性を維持し,被告漫画1記述7を一読しただけで,その特徴を直接感得することができる。
d 原告記事1記述8ないし10は,極めて短く,筆者の個性が現れているとみることはできないから,被告漫画1記述8ないし10の記述と同一性があるとしても,表現上の創作性がない。
e 被告漫画1記述11と原告記事1記述11とは,露天風呂での場面を記述している点及びその著述の順序でほぼ共通し,同一性がある。
原告記事1記述11は,露天風呂の場面を創作的に表現したものであり,被告漫画1記述11は,原告記事1記述11の表現上の本質的特徴の同一性を維持し,被告漫画1記述11を一読しただけで,その特徴を直接感得することができる。
f 原告記事1記述12は,極めて短く,筆者の個性が現れているとみることはできないから,被告漫画1記述12の記述と同一性があるとしても,表現上の創作性がない。
g 被告漫画1と原告記事1記述13とは,主人公が深夜までセックス三昧の時間が続いたことを記述する点でほぼ共通し,同一性がある。しかし,これは情景を表現したものとしてありふれたもので表現上の創作性はない。
() そうすると,被告漫画1記述7及び11は,原告記事1記述7及び11を翻案したものということができるが,被告漫画1のその余の記述は,原告記事1のその余の記述を翻案したものということはできない。
イ 原告記事2について
() 原告記事2の場面の流れと被告漫画2の場面の流れは,ほぼ共通するが,これはあらすじという表現それ自体でない部分において共通するにすぎないから,被告漫画2各記述が原告記事2各記述を翻案したものであるということはできない。
() そこで,原告記事2各記述と被告漫画2各記述とを対比する。
a 被告漫画2記述2と原告記事2記述2とは,主人公が夕刊紙に見慣れない広告を見つけたことを記述する点でほぼ共通し,同一性がある。しかし,これは,情景を表現したものとしてありふれたもので,表現上の創作性はない。
b 被告漫画2記述3と原告記事2記述3とは,主催者が女性のパンティーオークションをする旨発言したことを記述する点でほぼ共通し,同一性がある。しかし,これは,情景を表現したものとしてありふれたもので,表現上の創作性がない。
c 被告漫画2記述4と原告記事2記述4とは,主人公が精算を済ませるとバスタオルを渡されて,簡単な注意を受けたことを記述する点でほぼ共通し,同一性がある。しかし,これは,情景を表現したものとしてありふれたもので,表現上の創作性がない。
d 被告漫画2記述5と原告記事2記述5とは,主人公が女性の尻をなで回したこと,下着ごしに女性の性器を指で触ると下着にしみができたことを記述する点でほぼ共通し,同一性がある。これらは,風俗サービスの内容を創作的に表現したものであり,被告漫画2記述5は,原告記事2記述5の表現上の本質的特徴の同一性を維持し,被告漫画2記述5を一読しただけで,その特徴を直接感得することができる。
e 被告漫画2記述6と原告記事2記述6とは,主人公が周囲の声に応えてパンティーを頭から被ったこと,恥ずかしいという心情が記述されている点でほぼ共通し,同一性がある。これらは,風俗サービスの内容,主人公の心情を創作的に表現したものであり,被告漫画2記述6は,原告記事2記述6の表現上の本質的特徴の同一性を維持し,被告漫画2記述6を一読しただけで,その特徴を直接感得することができる。
f 被告漫画2記述7と原告記事2記述7とは,主人公と女性がシックスナインの状態にあることを記述する点でほぼ共通し,同一性がある。しかし,これは情景を表現したものとしてありふれたもので,表現上の創作性がない。
g 被告漫画2記述8と被告漫画2記述8とは,主人公のほか,見ていた2人の男が乱入したことを記述する点でほぼ共通し,同一性がある。しかし,これは,情景を表現したものとしてありふれたもので,表現上の創作性がない。
() そうすると,被告漫画2記述5及び6は,原告記事2記述5及び6を翻案したものということができるが,被告漫画2のその余の記述は,原告記事2のその余の記述を翻案したものということはできない。
ウ したがって,被告らは,被告漫画1記述7及び11を不可分的に有する被告漫画1を掲載した本件雑誌平成23年1月号を編集,発行し,被告漫画2記述5及び6を不可分的に有する被告漫画2を掲載した本件雑誌平成23年6月号を編集,発行し,これにより,原告の原告記事1及び2の著作権(翻案権)を侵害したものと認められる。
(2) 争点(2)(原告の著作者人格権の侵害の成否)について
ア 原告記事1について
被告漫画1は,原告の著作物を原著作物とする二次的著作物を含むところ,被告らは,本件雑誌の平成23年1月号の編集,発行に際し,被告漫画1に原告の氏名を著作者として表示しなかったから,被告らは原告の氏名表示権を侵害したと認められる。
また,被告漫画1記述7及び11は,原告記事1記述7及び11について,漫画にする方法により,原告の著作物における表現上の本質的特徴を維持しつつその外面的な表現形式に改変を加えて記述されたものであり,被告らは,被告漫画1を掲載した雑誌を編集,発行したから,原告の同一性保持権を侵害したと認められる。
イ 原告記事2について
被告漫画2は,原告の著作物を原著作物とする二次的著作物を含むところ,被告らは,本件雑誌の平成23年6月号の編集,発行に際し,被告漫画2に原告の氏名を著作者として表示しなかったから,被告らは原告の氏名表示権を侵害したと認められる。
また,被告漫画2記述5及び6は,原告記事2記述5及び6について,漫画にする方法により,原告の著作物における表現上の本質的特徴を維持しつつその外面的な表現形式に改変を加えて記述されたものであり,被告らは,被告漫画2を掲載した雑誌を編集,発行したから,原告の同一性保持権を侵害したと認められる。
(3) 争点(3)(被告らの故意又は過失の有無)について
証拠によれば,本件ブログは「Yahoo!検索」,「Google検索」において「三行広告」のキーワードで検索すると検索結果の6番目に表示されることが認められるから,被告らは,Aから被告漫画1及び2の提供を受けるに当たり,その記述をインターネットで検索するなどして調査すれば,被告漫画1及び2の記述の中に原告記事1及び2に似た記述があることを知ることができたと認められる。それにもかかわらず,被告らは調査を怠ったのであるから,被告らには,原告記事の著作権及び著作者人格権を侵害したことについて過失がある。
(4) 争点(4)(原告が受けた損害の額)について
ア 証拠によれば,被告Jがライターに支払う原稿料は1頁あたり5000円であることが認められるところ,被告漫画1記述7及び11は頁数で1頁を超えるものではなく,被告漫画2記述5及び6は,頁数で1頁を超えるものではないことが認められる。
そうすると,原告が原告記事1及び2の著作権行使につき受けるべき金銭の額は,1万円を超えるものではないと認められる。
イ 原告は,被告らによる原告記事1及び2の著作者人格権侵害行為により精神的苦痛を被ったものであり,本件に現れた一切の事情を考慮すれば,その精神的苦痛に対する慰謝料の額は5万円とするのが相当である。
ウ 本件事案の内容,審理経過,前記認容額その他諸般の事情を考慮すると,被告らの侵害行為と相当因果関係にある弁護士費用の額は6000円とするのが相当である。
(5) 争点(5)(謝罪広告の要否)について
被告らの著作者人格権侵害行為により,原告の社会的声望名誉が毀損されたことを認めるに足りる証拠はない。
(6) 以上によれば,本訴は,原告の損害賠償請求のうち6万6000円の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がない。
2 反訴
()

[控訴審]
1 争点1(著作権侵害の有無)について
(1) 争点1-1(被告漫画1は原告記事1の翻案物に当たるか否か)について
ア 1審原告は,被告漫画1は全体として原告記事1の翻案物に当たる旨主張するので,以下検討する。
イ 原告記事1の記述内容等
証拠によれば,原告記事1について,以下のとおり認められる。
() 題号は「混浴乱交サークル」であり,本文は総行数67行の記事である。
原告記事1は,記事の著者が乱交ツアーに潜入参加し,そこで体験した風俗サービスの内容を,自身の体験談として読者に向けて報告するという形式で記述したものである。
() 原告記事1には,おおむね,以下の内容が付した番号(①~⑦)の順に記述されている。
()
ウ 被告漫画1の記述内容等
証拠によれば,被告漫画1について,以下のとおり認められる。
() 「シリーズ連載」と欄外に添え書きされている様に,本件雑誌にシリーズとして連載されている漫画であり,被告漫画1(平成23年1月号掲載分)の題号は「裏風俗(珍)紀行 1泊2日温泉裏ツアーで乱交三昧!!」である。
被告漫画1の掲載総頁数は6頁(本件雑誌の平成23年1月号の69頁~74頁)であり,総コマ数は,題号及び作画者名(「まんが/B」)が記載された表題部を含め34コマである。
() 被告漫画1には,おおむね,以下の内容が付した番号(①~⑦)の順に記述されている。
()
エ 原告記事1と被告漫画1との対比
原告記事1(前記イ)と被告漫画1(前記ウ)の記述内容等を対比すると,原告記事1と被告漫画1とは,まず,「乱交ツアー」に参加した者が,そこで体験した風俗サービスの内容を自身の体験談として記述又は描写するという点において共通する。
また,原告記事1と被告漫画1とは,その場面展開,すなわち,ⅰ)著者又は主人公が,風俗サービスに関する情報をネット検索し,ツアーに参加を申し込む場面,ⅱ)著者又は主人公が,開催当日に宿に向かい,宿に到着して,部屋に入るまでの場面,ⅲ)著者又は主人公が,部屋で相部屋の男と会話する場面,ⅳ)著者又は主人公が,露天風呂に移動して,参加者の男や女と顔を合わせる場面,ⅴ)露天風呂における「乱交」の状況を記述又は描写した場面,ⅵ)宴会場で食事を終えた後の「乱交」の状況を記述又は描写した場面,ⅶ)2日目の朝,ツアーが解散となった場面へと展開していく点において共通する。
さらに,原告記事1の記述には,被告漫画1には記述又は描写されていない部分が存するものの,上記各場面における被告漫画1の記述又は描写の内容はわずかな部分を除き,ほぼ原告記事1の記述に含まれ,しかも,その具体的な記述(描写)及び記述(描写)順序においても,おおむね原告記事1におけるそれと共通すると認められる。すなわち,被告漫画1の記述又は描写が原告記事1と相違するのは,①被告漫画1がツアーの開催日を申込みから「1週間後」と明記しているのに対し,原告記事1では,申込みから開催日まで日があることは記述から把握することができるが,どれくらい後の開催であるのかを明記していない点,②被告漫画1が現地までの交通手段として「愛車」を利用しているのに対し,原告記事1では,「電車とバス」を利用している点,③被告漫画1が,宿の玄関の看板を見た主人公の感情を「気分が盛り上がってきた」としているのに対し,原告記事1では,料金の前払いをしていたので,当日まで実際に開催されるのか心配していたことから安心したとしている点,④被告漫画1が,相部屋の男は主人公よりも先に到着しており,主人公と挨拶を交わす場面を描写しているのに対し,原告記事1では,相部屋の男は後に到着した者とされており,主人公と挨拶を交わすなどの記述はされてない点,⑤被告漫画1が,主人公において,露天風呂における「乱交」時に女性の性器に「指マン」をしたと描写しているのに対し,原告記事1では,第三者の別の男性がしたと記述している点など,被告漫画1と原告記事1の全体の対比の中では,ごく一部分に止まる。
以上検討したところによれば,被告漫画1は,原告記事1に依拠し,その記述のうちの一部を省略し,かつ,その表現形式を漫画に変更したものにすぎず,全体として,原告記事1の表現上の本質的特徴を直接感得することができるから,原告記事1の翻案物に当たるというべきである。
(2) 争点1-2(被告漫画2は原告記事2の翻案物に当たるか否か)について
ア 1審原告は,被告漫画2は全体として原告記事2の翻案物に当たる旨主張するので,以下検討する。
イ 原告記事2の記述内容等
証拠によれば,原告記事2について,以下のとおり認められる。
() 題号は「生脱ぎパンティオークション乱交」であり,本文の総行数63行の記事である。
原告記事2は,記事の著者が「乱交」に潜入参加し,そこで体験した風俗サービスの内容を,自身の体験談として読者に向けて報告するという形式で記述したものである。
() 原告記事2には,おおむね,以下の内容が付した番号(①~⑧等)の順に記述されている。
()
ウ 被告漫画2の記述内容等
証拠によれば,被告漫画2について,以下のとおり認められる。
() 欄外に「シリーズ連載」と添え書きされている様に,本件雑誌にシリーズとして連載されている漫画であり,被告漫画2(平成23年6月号掲載分)の題号は「裏風俗(珍)紀行 裏 マスコミ初潜入!!オークションで興奮体験」である。
被告漫画2の掲載総頁数は6頁(本件雑誌の平成23年6月号の81頁~86頁)であり,総コマ数は,題号及び作画者名(「マンガ/B」)が記載された表題部を含め37コマである。
() 被告漫画2には,おおむね,以下の内容が付した番号(①~⑥)の順に記述されている。
()
エ 原告記事2と被告漫画2との対比
原告記事2(前記イ)と被告漫画2(前記ウ)の記述内容等を対比すると,原告記事2と被告漫画2とは,まず,「オークション乱交」に参加した者が,そこで体験した風俗サービスの内容を自身の体験談として記述又は描写するという点において共通する。
また,原告記事2と被告漫画2とは,その場面展開,すなわち,ⅰ)著者又は主人公が,新聞で風俗サービスに関する広告を見て,問合せをし,参加を申し込む場面,ⅱ)著者又は主人公が,開催日に会場となるホテルに到着し,受付で参加費を支払って部屋に入るまでの場面,ⅲ)室内で1回目のオークションが開かれる場面,ⅳ)室内で,2回目ないし最後のオークションが開かれ,主人公がパンティを落札する場面,ⅴ)落札した著者又は主人公が,出品者の女性に案内されてベッド上で女性と性交渉をする場面,ⅵ)著者又は主人公に加え,他の男性客2人も加わり乱交する場面へと展開していく点において共通する。
さらに,原告記事2の記述には,被告漫画2には記述又は描写されていない部分が存するものの,上記各場面における被告漫画2の記述又は描写の内容はわずかな部分を除き,ほぼ原告記事2の記述に含まれ,しかも,その具体的な記述(描写)及び記述(描写)順序においても,おおむね原告記事2におけるそれと共通すると認められる。すなわち,被告漫画2の記述又は描写が原告記事2と相違するのは,①被告漫画2では,夕刊紙の広告の記載が「オークション乱交」とされているのに対し,原告記事2では,「セリ乱交」とされている点,②被告漫画2では,広告を見た主人公が「ハハ!!こりゃ怪しそうなパーティーだな」という感想を抱いているのに対し,原告記事2では,「これなら面白そうだ。」という感想を抱いている点,③被告漫画2では,主人公がホテルの受付で参加費を支払っているのに対し,原告記事2では,部屋に入った後に参加費を支払っている点,④被告漫画2では,オークションが行われる部屋がパーティールームであり,出品者の女性が上がるのはステージ,落札者の男性(主人公)が当該女性に案内されるのはパーティールームの隣の部屋であるのに対し,原告記事2では,オークションが行われる部屋はホテルの一室であり,出品者の女性が上がるのはベッド,落札者の男性(著者)が当該女性に案内されるのも当該ベッドである点,⑤被告漫画2では,主人公が1回目のオークションが始まる前に,先に会場にいた男女の談笑している様子を「横目で見ながらもじもじしている」場面が描かれているが,原告記事2には,このような記述はない点,⑥被告漫画2では,主人公が好みの女性を見て「この女性を必ずゲットしてやる」と気合いを入れてオークションに臨んでいるのに対し,原告記事2では,「この際だから自分も購入したい」という程度に止まる点など,被告漫画2と原告記事2の全体の対比の中では,ごく一部分に止まる。
以上検討したところによれば,被告漫画2は,原告記事2に依拠し,その記述のうちの一部を省略し,かつ,その表現形式を漫画に変更したものにすぎず,全体として,原告記事2の表現上の本質的特徴を直接感得することができるから,原告記事2の翻案物に当たるというべきである。
()
(3) 争点1-3(1審被告らの故意又は過失の有無)について
ア 被告漫画1は全体として原告記事1の,被告漫画2は全体として原告記事2の,それぞれ翻案物に当たる。
したがって,1審被告らが,1審原告に無断で,原告記事1の翻案物である被告漫画1を掲載した本件雑誌(平成23年1月号)及び原告記事2の翻案物である被告漫画2を掲載した本件雑誌(平成23年6月号)を発行し,販売する行為は,1審原告の原告記事1及び2に係る著作権(著作権法28条に基づく複製権及び譲渡権)を侵害するものであると認められる。
イ そして,被告漫画1及び2は,Bが1審被告Jから依頼を受けて作画したものであること,1審被告Jは,1審被告Gから請け負い,原告記事1を翻案した被告漫画1を掲載した本件雑誌(平成23年1月号)及び原告記事2を翻案した被告漫画2を掲載した本件雑誌(平成23年6月号)を編集したこと,1審被告Gが,上記各本件雑誌を発行したことは,前記記載のとおりである。
() 1審被告Jの過失について
1審被告Jは,その業務として,Bに作画を依頼したのであるから,被告漫画1及び2が,第三者の著作権を侵害するものでないか否かを確認すべき注意義務を負うというべきである。
しかるに,1審被告Jは,Bから被告漫画1及び2の原稿を受領した際,Bに対してその作画の経緯について確認せず,又は亡Cから原稿の提供を受けて,これをBに提供して作画を依頼するに当たり,亡Cに対してその執筆の経緯について確認せず,さらに,自ら,被告漫画1及び2から窺われるワードや風俗記事や漫画と一般的に関連するワード等を用いて,インターネット検索を行うなどすることもなかったのであるから,上記注意義務を怠ったものといわざるを得ない。
したがって,1審被告Jには,1審原告の原告記事1及び2に係る著作権侵害につき,過失が認められる。
() 1審被告Gの過失について
1審被告Gは,その業務として,本件雑誌を発行したのであるから,1審被告Jの編集した本件雑誌が第三者の著作権を侵害するものでないか否かを確認すべき注意義務を負うというべきである。
しかるに,1審被告Gは,1審被告Jの編集に係る被告漫画1及び2の掲載された各本件雑誌を発行する際,1審被告Jに対して編集の経緯について確認せず,また,自ら,被告漫画1及び2から窺われるワードや風俗記事や漫画と一般的に関連するワード等を用いて,インターネット検索を行うなどすることもなかったのであるから,上記注意義務を怠ったものといわざるを得ない。
したがって,1審被告Gには,1審原告の原告記事1及び2に係る著作権侵害につき,過失が認められる。
() 1審被告らの主張について
1審被告らは,本件ブログの存在は,風俗関係の書籍を出版する業界において無名であり,被告漫画1及び2から想定し得る漫画のタイトルや内容等の検索ワードを用いてインターネット検索をしても,本件ブログは検索上位にランクされないから,1審被告らにおいて,原告記事1及び2の存在を調査することは不可能である旨主張する。
しかしながら,1審被告Jにおいて,B又は亡Cに対し,被告漫画1及び2に関し,作画又は執筆の経緯を確認することで,原告記事1及び2の存在を調査することが不可能であったとはいえず,また,証拠によれば,平成24年2月1日の時点における「三行広告」というワードによるインターネット検索の結果では,本件ブログが検索上位に挙がっていたものと認められるところ,かかる検索ワードは,被告漫画2の冒頭(2コマ)に登場するだけでなく,1審被告Gの発行する雑誌において,頻繁に登場していることに照らせば,風俗記事や漫画と一般的に関連するワードであるともいえるから,1審被告らにおいて,「三行広告」というワードによるインターネット検索を行うことにより本件ブログの存在を知り得たものというべきである。
したがって,1審被告らの上記主張は理由がない。
ウ 以上のとおり,1審被告らには,1審原告の原告記事1及び2に係る著作権の侵害について,過失が認められる。
(4) 小括
以上の検討によれば,1審被告らは,被告漫画1及び2を掲載した各本件雑誌(平成23年1月号及び6月号)の発行,販売による1審原告の原告記事1及び2に係る著作権の侵害につき,共同不法行為責任を負うと認めるのが相当である。
2 争点2(著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)侵害の有無)について
(1) 争点2-1(原告記事1に係る同一性保持権及び氏名表示権侵害の有無)について
被告漫画1は,前記1(1)記載のとおり,原告記事1の翻案物であると認められるが,1審原告に無断で原告記事1に改変を加える行為は,1審原告が有する原告記事1に係る同一性保持権(著作権法20条1項)を侵害する行為である。
そして,被告漫画1は,Bが1審被告Jから依頼を受けて作画したものであること,1審被告Jは,1審被告Gから請け負い,原告記事1を翻案した被告漫画1を掲載した本件雑誌(平成23年1月号)を編集したこと,1審被告Gが,上記本件雑誌を発行したことに照らせば,1審被告らは,原告記事1の改変による同一性保持権侵害につき,Bと共同して,不法行為責任を負うというべきである。
また,1審被告らは,被告漫画1を掲載した本件雑誌(平成23年1月号)を編集,発行するに当たり,1審原告の実名又は変名を表示しなかったのであるから,1審被告らの上記行為は,1審原告の有する原告記事1に係る氏名表示権(著作権法19条1項)を侵害する行為であると認められる。
(2) 争点2-2(原告記事2に係る同一性保持権及び氏名表示権侵害の有無)について
被告漫画2は,前記1(2)記載のとおり,原告記事2の翻案物であると認められるが,1審原告に無断で原告記事2に改変を加える行為は,1審原告が有する原告記事2に係る同一性保持権(著作権法20条1項)を侵害する行為である。
そして,被告漫画2は,Bが1審被告Jから依頼を受けて作画したものであること,1審被告Jは,1審被告Gから請け負い,原告記事2を翻案した被告漫画2を掲載した本件雑誌(平成23年6月号)を編集したこと,1審被告Gが,上記本件雑誌を発行したことに照らせば,1審被告らは,原告記事2の改変による同一性保持権侵害につき,Bと共同して,不法行為責任を負うというべきである。
また,1審被告らは,被告漫画2を掲載した本件雑誌(平成23年6月号)を編集,発行するに当たり,1審原告の実名又は変名を表示しなかったのであるから,1審被告らの上記行為は,1審原告の有する原告記事2に係る氏名表示権(著作権法19条1項)を侵害する行為であると認められる。
(3) 争点2-3(1審被告らの故意又は過失の有無)について
1審被告らには,前記1(3)記載のとおり,著作権(著作権法28条に基づく複製権及び譲渡権)の侵害について過失が認められるから,前記(1)及び(2)の著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)侵害についても同様の理由で,過失が認められる。
(4) 小括
以上の検討によれば,1審被告らは,1審原告の原告記事1及び2に係る著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)の侵害につき,共同不法行為責任を負うと認めるのが相当である。
3 争点3(1審原告の損害の発生及びその額)について
(1) 1審被告らは,原告記事1及び2に係る著作権及び著作者人格権侵害により,1審原告が被った損害を連帯して賠償すべき責任を負う。
(2) 著作権侵害について
証拠及び弁論の全趣旨によれば,1審原告は,フリーランスで活動する風俗関係の記事のライターであること,1審原告は,株式会社コアマガジンから平成19年中に33万1000円の,平成20年中に101万3000円の,平成23年中に56万8500円の原稿料の各支払を受けたこと,1審原告は株式会社双葉社から平成19年中に56万円の原稿料(支払回数12回の合計),平成20年中に33万円の原稿料(支払回数11回の合計)の各支払を受けたこと,本訴提起前に1審被告Jが1審原告訴訟代理人弁護士に対して送信した電子メール中には,1審被告Jの規定する原稿料が1頁当たり5000円である旨の記述があったこと,被告漫画1の総頁数が6頁であり,被告漫画2の総頁数が6頁であること,本件雑誌の販売部数は10万部程度であることが認められる。
上記事実に加え,1審原告が原告記事1及び2を自身が開設する本件ブログにおいて公開していること,原告記事1及び2の内容,侵害行為の態様,その他本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すれば,著作権侵害についての原告記事1の使用料相当額,原告記事2の使用料相当額は各5万円(合計10万円)と認めるのが相当である。
(3) 著作者人格権侵害について
1審原告は,被告漫画1により原告記事1についての同一性保持権及び氏名表示権を,被告漫画2により原告記事2についての同一性保持権及び氏名表示権を,それぞれ侵害されたものであり,証拠によれば,1審原告は,上記著作者人格権の侵害により,精神的苦痛を被ったものと認められる。
そして,1審原告が原告記事1及び2を自身が開設する本件ブログにおいて公開していること,原告記事1及び2の内容,侵害行為の態様(改変箇所の多寡,改変内容,本件雑誌の性質やその発行部数等),その他本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すれば,著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)の侵害により1審原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料は,原告記事1及び2につき各20万円(合計40万円)と認めるのが相当である。
(4) 弁護士費用について
本訴の事案の内容,認容額,訴訟の経過等を総合すると,1審被告らの著作権侵害行為及び著作者人格権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用の額は5万円と認めるのが相当である。
(5) 合計 55万円
4 争点4(1審原告の名誉又は社会的声望の回復措置請求の可否)について
1審原告は,原告記事1及び2に係る著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)が侵害されたとして,1審被告Gに対し,著作権法115条に基づき,本件雑誌(「実話大報」)の誌面上における謝罪広告の掲載を求める。
著作者は,故意又は過失によりその著作者人格権を侵害した者に対し,著作者の名誉若しくは声望を回復するために,適当な措置を請求することができ(著作権法115条),「適当な措置」には謝罪広告の掲載も含まれるが,同条にいう「名誉若しくは声望」とは,著作者がその品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価,すなわち社会的名誉・声望を指すものであって,人が自分自身の人格的価値について有する主観的な評価,すなわち名誉感情を含むものではないと解される。
そして,本件全証拠によるも,1審被告らの上記著作者人格権侵害によって,具体的に1審原告の社会的名誉・声望が害されたことについて主張立証はないから,1審原告の謝罪広告の掲載を求める請求は理由がない。
5 争点5(本件記事1ないし6及び本件投票プログラムは,1審被告らの名誉又は信用を毀損するものか否か)について
()