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著作権判例セレクション

【映画著作物の著作権の帰属】婚礼ビデオの「映画製作者」が問題となった事例

平成31325日大阪地方裁判所[平成30()2082]▶令和元年117日大阪高等裁判所[令和1()1187]
() 本件は,原告(映像制作等を業として営む者)が,自己が著作権及び著作者人格権を有する別紙被告らビデオコンテンツ目録記載の著作物について,被告らが複製,頒布するおそれがあると主張して,被告らに対し,著作権(複製権,頒布権)及び著作者人格権(同一性保持権,氏名表示権,公表権)に基づき,同目録記載の著作物の複製,頒布の差止めを求める(著作権法112条1項)とともに,同目録記載の著作物の廃棄を求めた(同条2項)事案である。
(前提事実)
被告株式会社Bは,映像企画制作及び映像演出並びにブライダル等プロデュース等を業とする会社であり,平成20年12月8日,福岡市でホテル「グランドハイアット福岡」(「本件ホテル」)を経営する株式会社Fホテルズから,本件ホテルで開催される婚礼等のビデオ撮影等について業務委託を受け,遅くとも平成26年11月29日以降,本件ホテルで開催される挙式及び披露宴のビデオ撮影を原告に委託してきた。
原告は,平成26年11月29日に本件ホテルで開催された被告P2及び被告P3の挙式及び披露宴,並びに平成27年4月18日に本件ホテルで開催された被告P4及び被告P5の挙式及び披露宴(以下,これらの被告4名を「被告P2ら」という。)について,被告Bの委託に基づきビデオ撮影し,撮影した映像のデータ(「原告撮影ビデオ」)を被告Bに納品した。被告Bは,原告から納品された映像のデータ(原告撮影ビデオ)を編集する等して,別紙被告らビデオコンテンツ目録記載の「記録ビデオ」(以下「本件記録ビデオ」といい,原告撮影ビデオと併せて「本件ビデオ」という。)として完成させて,Fホテルズの委託の下,被告P2らに対してそれぞれの記録ビデオの複製物を納品した。

1 認定事実
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2 本件で,原告は,被告らに対し,著作権及び著作者人格権に基づき,別紙被告らビデオコンテンツ目録記載の著作物の複製及び頒布の差止めとその廃棄を請求している。
しかし,1で認定した事実によれば,同目録記載1及び2のうち,「フォトームービー」(「フォトムービー」の誤記と解される。)及び「エンドロール」は,被告Bが原告の関与なく製作するものであり,それらが著作物であるとしても,原告は著作者ではなく,著作権及び著作者人格権を有するものではないから,それらについて原告が複製,頒布の差止め等を請求することはできない。
また,同目録記載3のうち,「収録された管理著作物」というのは,披露宴等で使用された楽曲をいうものと解されるが,原告がその著作権及び著作者人格権を有するものではないから,それらについて原告が複製,頒布の差止め等を請求することはできない。
さらに,同目録記載3のうち,「原告が被告ビーに寄託した被告P2及び被告P4に関する撮影著作物」とは原告撮影ビデオをいうものと解されるが,被告Bについては編集前のビデオである原告撮影ビデオを今後新たに編集等するとは考え難く,被告P2らについては編集前のビデオである原告撮影ビデオをそもそも有したことがないと考えられるから,被告らがそれを複製,頒布するおそれがあるとは認められない。
したがって,本件請求のうち上記で検討したものについては,その余の点について検討するまでもなく理由がないから,以下では,同目録記載1及び2のうちの「記録ビデオ」,すなわち本件記録ビデオに係る請求について検討する。
3 著作権に基づく請求について-争点2(被告Bは著作権法29条1項により本件ビデオの著作権を取得したか)について-
(1) 本件記録ビデオは,被告P2らの挙式等の様子を撮影・編集したビデオであり,そのサムネイル画像も参酌すると,挙式等が進行する状況に応じた撮影対象の選択や構図等に創作的工夫が施されていると認められるから,著作権法2条3項に規定する「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され,かつ,物に固定されている著作物」であり,同法10条1項7号所定の「映画の著作物」に当たると解される。
そして,前記1で認定した事実によれば,挙式等の撮影については基本的には原告の裁量に委ねられており,原告は様々な工夫をして撮影をしたと【認められる。】
(2) そこで,被告らが主張する著作権法29条1項の適用の有無について検討する。
著作権法29条1項にいう「映画製作者」とは,「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」をいい(同法2条1項10号),映画の著作物を製作する意思を有し,同著作物の製作に関する法律上の権利義務が帰属する主体であって,同著作物の製作に関する経済的な収入・支出の主体となる者のことをいうと解される。
前記1で認定した事実のとおり,本件では,被告Bは,社内の人間だけでは撮影業務をこなせないことから複数の外部業者に撮影業務を委託するようになり,原告はその外部業者の一人であったことからすると,被告Bは,各婚礼のビデオ撮影業務の担当を各外部業者に割り振って委託することにより,全体としての婚礼ビデオの製作業務を統括して行っていたといえる。
また,Fホテルズから委託を受けて,新郎新婦から婚礼ビデオ製作の申込みを受け,その意向を聴取して打合せをするのは被告Bであり,婚礼ビデオを完成させて納品するのも被告Bである。また,被告Bは,原告による撮影に不備があった場合の新郎新婦に対する責任も負担している。そうすると,婚礼ビデオを適切に製作し,納品する【法律上の】義務は,Fホテルズからの委託の下,被告Bが負っていたといえる。
加えて,現場での撮影業務自体は基本的には原告の裁量と工夫に委ねられていたが,被告Bも,新郎新婦に特段の意向がある場合には原告にそれを伝えて撮影の指示を行っており,原告の裁量等も被告Bからの指示という制約を受けるものであったほか,被告Bは,婚礼ビデオを完成させるに当たり編集作業を行い,その中では,被告Bが独自に製作した「プロフィールビデオ」等の上映シーンを加工し,そのBGMを音源から採取して差し込むなど,独自の演出的な【編集を行う場合もあったのであるから】,製作するビデオの内容を最終的に決定していたのは被告Bであるといえる。
そして,被告Bは,原告に対して撮影料と交通費を支払っているほか,それ以外の製作費用も負担しているから,本件記録ビデオの製作に関する経済的な収入・支出の主体となっているのは原告ではなく被告Bである。なお,被告Bは,本件記録ビデオに収録された楽曲についての著作権使用料等の【支払をしておらず,むしろ控訴人が合計96万9092円を支払っているが】,原告は,本件記録ビデオに収録された楽曲の著作権使用料は被告Bが負担することとなっていたと主張しており,この主張は,上記のとおり本件記録ビデオの製作に関する経済的な収入・支出の主体が被告Bであることと符合する(この点については,被告Bも,別件の福岡地方裁判所小倉支部に提起された事件で原告の上記主張を争うに当たり,結婚式の様子を撮影したビデオ等に結婚式の映像とともに式場で流された音楽が収録された場合に,その音楽について日本音楽著作権協会等に対して著作権使用料を支払うべき義務があるかは法律上確定されているものではなく,支払義務があるとしても,それを原告が支払った場合には求償権の問題が発生すると主張するにとどまり,日本音楽著作権協会等に対する支払義務がある場合にそれを被告Bが負担すべきことを特段争っていた わけではないと認められる。)。
以上からすると,本件記録ビデオの製作に発意と責任を有する者は,被告Bであり,被告Bは「映画製作者」に当たると認めるのが相当である。
そして,原告は,被告Bから委託を受けて原告撮影ビデオの撮影をしたのであるから,被告Bに対して本件記録ビデオの製作に参加することを約束したものといえる。
したがって,著作権法29条1項により,本件記録ビデオの著作権は被告Bに帰属するから,原告は著作権を有しない。
これに対し,原告は,ビデオ撮影に当たっての自己の負担や工夫をるる主張するが,それらは,原告が著作者であることを基礎付けるものであっても,被告Bが映画製作者であることを否定するに足りるものではない。
(3) したがって,原告は本件記録ビデオの著作権を有しないから,その著作権に基づく請求は理由がない。
4 争点5(著作者人格権侵害のおそれの有無)について
(1) 同一性保持権についてみると,本件記録ビデオは原告撮影ビデオを編集したものであるが,前記1で認定した事実からすると,原告は,被告Bが原告撮影ビデオを適宜編集することを承諾していたと認められるから,本件記録ビデオは原告の同一性保持権を侵害して製作されたものではない。
したがって,仮に被告らが本件記録ビデオを複製,頒布するとしても,意に反する改変を行うことにはならないから,同一性保持権の侵害は生じない。
(2) 氏名表示権についてみると,氏名表示権は,著作物の「原作品」に,又は「その著作物の公衆への提供若しくは提示に際し」,又は「その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際して」,著作者名を表示し又は表示しないこととする権利である(著作権法19条)ところ,原告は,本件記録ビデオが原告の氏名を表示しないままで複製され,頒布されることが氏名表示権の侵害に当たると主張しているものと解される。
しかし,まず,被告らがそもそも「原作品」たる原告撮影ビデオを複製するおそれが認められないことは先に述べたとおりである。また,著作物又は二次的著作物の「公衆への提供又は提示」とは,特定多数の者に提供又は提示することも含む(著作権法2条5項)が,本件記録ビデオが被告P2らの挙式及び披露宴の様子を収録したものであることからすると,仮に被告らが本件記録ビデオを複製するおそれがあるとしても,被告Bが複製物を提供する相手として現実的に想定し得るのは被告P2らに限られ,3年以上前に挙式等を行った被告P2らが複製物を提供する相手として現実的に想定し得るのも肉親くらいであり,被告P2らが今後SNSサービスに投稿するおそれがあるとも認められないから,被告らが特定多数の者に対してであっても本件記録ビデオを複製し,頒布するおそれがあるとは認められない。
したがって,被告らが原告の氏名表示権を侵害するおそれがあるとは認められない。
(3) 公表権についてみると,上記(2)で指摘した点に照らせば,被告らが,本件記録ビデオを公表(著作権法4条,3条)するおそれがあるとは認められない。したがって,被告らが原告の公表権を侵害するおそれがあるとは認められない。
(4) したがって,被告らが原告の著作者人格権を侵害するおそれがあるとは認められない。
5 原告のその他の主張について
原告は,本件において,本件ビデオに収録された楽曲の著作権使用料を被告Bが負担することとなっていたにもかかわらず,被告Bがそれを支払っていない結果,本件ビデオは楽曲を違法に使用されたものであると主張する。しかし,仮に原告の主張がそのとおりであるとしても,そのことは,原告の著作権の有無や被告らの侵害行為のおそれの有無に影響を及ぼすものではないから,上記の判断を左右するものではない。
なお,原告による被告P2らの本人尋問申請については,本件ビデオの収録楽曲の著作権等使用料を被告Bが支払っていない点や原告の損害額を主たる尋問事項とするものであり,また,原告による文書提出命令申立ても,原告の損害額を立証趣旨とするものであって,いずれも上記の認定判断に影響を及ぼすものではないから,当裁判所は必要性を欠くものとしてこれらを却下した次第である。
6 まとめ
以上によれば,原告の請求は,いずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。

[控訴審同旨]
2 被控訴人ビデオコンテンツ目録記載の著作物のうち,本件ビデオ(原告撮影ビデオ及び本件記録ビデオ)を除くものの著作権の帰属について
(1) 被控訴人ビデオコンテンツ目録記載1及び2の著作物について
上記著作物のうち本件記録ビデオを除いた「オープニングムービー」,「プロフィールビデオ」,「フォトムービー」及び「エンドロール」は,前記で引用した原判決「事実及び理由」に記載のとおり,新郎新婦の依頼があった場合に,控訴人が撮影するビデオとは別に,被控訴人が製作し,披露宴で上映されるのであり,控訴人は,その作業に関与していない。
したがって,原審被告P2及び同P3の挙式及び披露宴に際して「フォトムービー」及び「エンドロール」が製作されことが認められるものの,控訴人はその著作者ではなく,著作権及び著作者人格権を有するものではない。
同様に,原審被告P4及び同P5の挙式及び披露宴に際して「オープニングムービー」,「プロフィールムービー」,「エンドロール」が製作されたとしても,控訴人は著作者ではなく,著作権及び著作者人格権を有するものではない(なお,原審被告P4及び同P5に係る「映像お申込み書」においては,「映像商品」欄は「当日エンディングムービー」の部分だけ○が記入され,それ以外は空欄となっていることからすると,「オープニングムービー」及び「プロフィールムービー」は製作されていないことがうかがわれる。)。
(2) 被控訴人ビデオコンテンツ目録記載3の著作物について
上記著作物は,原告撮影ビデオをいうものであり,それ以外のものは含まれない。原告撮影ビデオについての著作権の帰属については,本件記録ビデオについての著作権の帰属とともに,後記3において,改めて検討する。
3 争点2(被控訴人は著作権法29条1項により本件ビデオの著作権を取得したか)について
(1) 本件記録ビデオについて
当裁判所も,本件記録ビデオは,映画の著作物であるところ,その製作に発意と責任を有する者は被控訴人であって,被控訴人が「映画製作者」に当たるところ,控訴人は被控訴人に対して本件記録ビデオの製作に参加することを約束したということができるので,著作権法29条1項により本件記録ビデオの著作権は被控訴人に帰属し,控訴人は著作権を有しないと判断する。
その理由は,次のとおり補正するほか,原判決「事実及び理由」に記載のとおりであるから,これを引用する。
()
(2) 原告撮影ビデオについて
前記認定のとおり,控訴人は,被控訴人から委託を受けて原審被告P2らの各挙式及び披露宴のビデオ撮影を行い,控訴人はそれを記録した媒体を被控訴人に納品した。控訴人が行った上記ビデオ撮影は,被控訴人からの委託に基づき,本件記録ビデオ制作のためだけに行ったもので,それ以外の用途は予定されておらず,控訴人は,被控訴人による本件記録ビデオの製作に参加することを約束して上記撮影を行ったとみることができる。
その後,被控訴人は,原告撮影ビデオを編集して本件記録ビデオを完成させ,DVDに記録したものを新郎新婦に納品するに至っている。
そうすると,本件記録ビデオのみならず,原告撮影ビデオの著作権も,著作権法29条1項により被控訴人に帰属し,控訴人は著作権を有しないものと解するのが相当である。
(3) 当審における控訴人の主張(1)について
ア 前記(1)のとおり,本件では,婚礼ビデオを適切に製作し,納品する法律上の義務は被控訴人が負っていたこと,製作するビデオの内容を最終的に決定していたのは被控訴人であったこと,被控訴人は撮影料と交通費を控訴人に支払い,それ以外の製作費用も負担し,経済的な収入・支出の主体となっていることからすると,被控訴人が「映画製作者」に当たるというべきである。
イ これに対し,控訴人は,ビデオ撮影に当たっては裁量を有しており,これに先立ち脚本も書いていた旨主張する。
しかし,控訴人がビデオ撮影に当たって裁量を有し,また,これに先立ち自ら脚本を書き,これに沿った進行がなされたとしても,被控訴人が映画の著作物を製作する意思を有していたことが直ちに否定されるわけではない。控訴人の上記主張は,控訴人が原告撮影ビデオの著作者であることを基礎付けるものにとどまるというべきであり,前記判断を左右するものではない。
ウ また,控訴人は,Fホテルズと被控訴人との委託契約は「映画製作者」の認定において重要でないと主張する。
しかし,被控訴人は,Fホテルズとの委託契約のもとで新郎新婦からビデオ製作の申込みを受け,最終的に新郎新婦に本件記録ビデオのDVDを納品しているのであり,他方で,控訴人は,Fホテルズとも新郎新婦とも直接の契約関係に立たないのであるから,被控訴人が著作物の製作に関する法律上の権利義務が帰属する主体であることは明らかである。控訴人の上記主張は失当というべきである。
エ さらに,控訴人は,必要な設備投資を行うなどしているので,経済的な収入・支出の主体は控訴人であると主張する。
なるほど,控訴人は,映像製作等を業として営む者であって,個々の撮影に先立ち,相応の設備投資を行っていると考えられる。しかし,上記設備投資は,本件記録ビデオの制作のためだけの支出とはいえず,また,被控訴人から受け取るのは,撮影料(1件3万円)と交通費に過ぎない。これに対し,被控訴人は上記撮影料と交通費を含む経費を負担する一方,新郎新婦から本件記録ビデオの代金を受け取っているのであるから,本件記録ビデオについて,収入・支出の主体は被控訴人というべきであり,控訴人の上記主張は採用することができない。
オ なお,控訴人は,被控訴人は音楽著作権料の支払を怠っているので,「映画製作者」には当たらないとも主張する。
しかし,音楽著作権料については,別途,権利者である日本音楽著作権協会等との間で解決されるべき事柄である(なお,日本音楽著作権協会等が被控訴人に対して金員の支払を請求し,訴訟を提起したことを認めるに足りる証拠はない。)。控訴人の上記主張は,前記判断を左右するものではない。
4 争点5(著作者人格権侵害のおそれの有無)について
(1) 同一性保持権について
原告撮影ビデオについては,認定事実からすると,控訴人は,被控訴人がこれを適宜編集することを承諾していたと認められるから,本件記録ビデオは控訴人の同一性保持権を侵害して製作されたものではない(なお,控訴人は,上記承諾は,被控訴人が音楽著作権料の不払をしないことが前提であった旨主張するが,音楽著作権料の問題は,別途,日本音楽著作権協会等との間で解決されるべき事柄であって,上記判断を左右するものではない。)。また,本件記録ビデオについても,それが完成した後に,控訴人の意に反する改変がされたことを認めるに足りる証拠はなく,今後そのようなおそれがあることを認めるに足りる証拠もない。
したがって,仮に被控訴人が本件記録ビデオを複製,頒布するとしても,意に反する改変を行うことにはならないから,同一性保持権の侵害は生じない。
(2) 氏名表示権について
氏名表示権は,著作物の「原作品」に,又は「その著作物の公衆への提供若しくは提示に際し」,又は「その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際して」,著作者名を表示し又は表示しないこととする権利である(著作権法19条)ところ,控訴人は,本件記録ビデオが控訴人の氏名を表示しないままで複製され,頒布されることが氏名表示権の侵害に当たると主張しているものと解される。
しかし,被控訴人が,本件記録ビデオの製作を依頼した新郎新婦以外のために,本件記録ビデオを新たに複製し,頒布した事実を認める証拠はなく,将来,そのようなことをするとは考え難い。
また,著作物又は二次的著作物の「公衆への提供又は提示」とは,特定多数の者に提供又は提示することも含む(著作権法2条5項)が,上述のとおり,本件記録ビデオが顧客である新郎新婦の挙式及び披露宴の様子を収録したものであることからすると,被控訴人が特定多数の者に対して本件記録ビデオを複製し,頒布するおそれがあるとは認められない。
したがって,被控訴人が控訴人の氏名表示権を侵害するおそれがあるとは認められない。
(3) 公表権について
上記(2)で指摘した点に照らせば,被控訴人が,本件記録ビデオを公表(著作権法4条,3条)した事実を認める証拠はなく,将来,そのようなことをするとは考えがたい。したがって,被控訴人が控訴人の公表権を侵害するおそれがあるとは認められない。
(4) まとめ
以上のとおりで,被控訴人が控訴人の著作者人格権を侵害するおそれがあるとは認められない。