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著作権判例セレクション
【写真著作物】眼鏡の写真データの著作物性を否定した事例
▶平成28年6月23日知的財産高等裁判所[平成28(ネ)10025]
(注) 本件は,別紙記載の各写真データである本件写真データにつき控訴人が著作権を有するにもかかわらず,被控訴人が本件写真データを使用して作成したチラシをメガネサロンTのホームページである本件ホームページに掲載した行為は控訴人の著作権(複製権)を侵害する旨主張して,控訴人が,被控訴人に対し,著作権侵害の不法行為による損害賠償等の支払を求めた事案である。原判決は,本件写真データは思想又は感情を創作的に表現したものとは認められず,著作物性があるとはいえない旨判示して,控訴人の請求を棄却した。控訴人はこれを不服として控訴した。
1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。
(略)
2 当審における主張に対する判断
(1) 控訴人は,被写体及びその組合せ並びに撮影時における眼鏡のつるの開き具合,配置,撮影方向及び背景色につき,自らの意思に基づき判断し選択したものであり,その判断には創作性がある旨主張し,より具体的には,眼鏡のつるを開く角度,カメラと眼鏡との位置関係,つるを開いた眼鏡の撮影に当たりレンズを手前に,つるを奥に配置したことについて被控訴人やオフィスJからの具体的指示はなかったなどと指摘する。
しかし,控訴人は新聞折り込みチラシに使用する切り抜き用に本件写真データを作成したにとどまり,チラシそのものの作成ないしそのレイアウトの決定に関与する立場になかったことからすれば,上記の配置等について創作性を発揮する余地はほとんどなかったものと認められることや,実際にも,こうした配置等につき,本件写真データを使用して作成されたチラシに掲載されている,控訴人以外の者の撮影によるものと見られる眼鏡の写真と本件写真データとで格別相違がないことなどにかんがみれば,控訴人の指摘にかかる配置等は,注文者から特に具体的指示等がなくとも一般に採用されるものにすぎないことがうかがわれる。そうすると,控訴人の指摘に係る点を考慮しても,本件写真データにつき控訴人の思想又は感情を創作的に表現したものと見る余地はやはりないというべきである。
(2) また,控訴人は,原判決につきその説示する理由中に矛盾があり恣意的な判断である旨も主張する。
しかし,原判決は,その判文全体に照らしてみれば,つるを閉じた眼鏡を白い紙様の物で作られた筒の上に載せて撮影したことや本件写真データの一部につき眼鏡の左側のつるの外側に配置された黒ケント紙の上に白色の紙を配置して撮影したことをも含め,控訴人が本件眼鏡を撮影するに当たり独自の工夫を凝らしたとは認め難く,本件写真データに創作性が存在するということはできない旨判断したものであることが明らかである。すなわち,原判決の判断には控訴人の主張するような矛盾はなく,その他恣意的と評するべき部分も見当たらない。
以上より,これらの点に関する控訴人の主張はいずれも採用し得ない。
(3) 本件と控訴人指摘に係る裁判例とは事案を異にすることなどにかんがみると,原判決が憲法14条1項,21条及び裁判所法4条に違反するとする余地もない。
(4) 控訴人は,本件写真データの一部が著作権登録されたことの証拠として甲94ないし96を提出するが,著作権登録がされたとしても,それによって,その対象となったものに著作物性があることが確定されるわけではないのであるから,上記事実は,以上の認定判断を左右するものではない。
3 よって,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。