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著作権判例セレクション
【複製権の射程範囲】製品図面に基づいて当該製品を製造することは、製品図面の複製に当たるか
▶平成24年12月06日大阪地方裁判所[平成23(ワ)2283]▶平成26年6月26日知的財産高等裁判所[平成25(ネ)10007]
3 争点2-1(原告製品図面等の著作物性)及び争点2-2(複製権又は翻案権侵害の有無)について
(1)原告は,原告製品図面[注:原告製品である攪拌造粒機に係る設計図面のこと]等が著作物であることを前提に,被告が原告製品図面を使用して被告製品又はその構成部品の製造,販売を行っており,原告製品図面に係る原告の複製権又は翻案権を侵害する旨主張するが,次に述べるとおり,いずれも理由がない。
(2)原告製品図面の著作物性
本件で原告製品図面であるとして提出された設計図面は,通常の作図法に従って記載されているところ,原告は,上記設計図面のうちどの部分が著作物性を有するのか,また,その理由について,具体的な主張をしていない(前記に摘示した主張[注:【原告の主張】「原告製品図面,原告製品の仕様書等は,原告がその知識と技術を駆使して独自に製作したもので,著作物であることは明らかである。」/【原告の主張】「被告は,原告製品図面,原告製品の仕様書等を使用して被告製品又はその構成部品の製造,販売を行っており,原告製品図面,原告製品の仕様書等に係る原告の複製権又は翻案権を侵害するものといえる。」]が,著作権侵害に関する原告の主張の全てである。)。
したがって,原告製品図面は,著作権法上の著作物といえない。
(3)原告製品図面の複製,翻案
また,原告は,被告製品又はその構成部品の製造が,原告製品図面の複製又は翻案であると主張しているが,著作物たる「学術的な性質を有する図面」(著作権法10条1項6号)であっても,これに従って製品を製造することは,建築物の場合(著作権法2条1項15号ロ)を除き,複製や翻案には当たらないと解される。
したがって,被告が被告製品又はその構成部品の製造,販売をすることが,図面に係る原告の著作権(複製権,翻案権)を侵害すると見る余地はない。
(4)仕様書等について
原告は,原告製品図面と並んで,原告製品の仕様書等の著作権侵害も主張するが,原告製品に関する仕様書等で著作物性を有するものが存在すると認めるに足りる証拠はない。
(5)小括
したがって,いずれの観点からも,著作権侵害に関する原告の主張が採用できないことは明らかである。
[控訴審同旨]