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著作権判例セレクション
【著作者】著作権の原始的な帰属主体は誰か
▶平成15年11月28日東京地方裁判所[平成14(ワ)23214]▶平成16年03月31日東京高等裁判所[平成16(ネ)39]
著作権の原始的な帰属主体は著作者であり(著作権法17条),著作者とは,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属する著作物を創作した者をいう(同法2条1項1号,2号)。原告らは,いずれも本件各書籍の創作には関与していないことを自認している。したがって,原告らが,本件各書籍の著作者であるということはできず,原始的に原告らが本件各書籍の著作権を取得することはあり得ない。
なお,原告らは,本件各書籍に当初シリーズ及び新シリーズについて原告らが案出した有形無形のノウハウが用いられている旨主張するが,仮にそうであったとしても,上記ノウハウは,同法2条1項1号にいう「思想又は感情を創作的に表現したもの」ということはできず,著作権法において保護されるものではない。
(略)
なお,著作権は,著作者が著作物を創作した時点で直ちに著作者に生じる権利であるから,いまだ著作物が創作されておらず,著作物の内容が具体化される前に,あらかじめ合意によって,著作権の原始的帰属を決定することはできないものというべきである。
[控訴審同旨]
著作権の原始的な帰属主体は著作者である(著作権法17条)ところ,著作者とは,著作物を創作する者をいい(同法2条1項2号),著作物とは,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう(同項1号)。しかるに,控訴人らは,いずれも本件各書籍の制作自体に関与していないことを自認しているから,控訴人らが,本件各書籍の著作者であるということはできず,控訴人らが本件各書籍の著作権を原始的に取得することはあり得ないというべきである。
これに対し,控訴人らは,「本件各書籍には,控訴人らが当初シリーズ及び新シリーズについて案出した,原判決〔控訴人らの主張〕のノウハウが用いられているから,控訴人らも本件各書籍の共同著作者として共有著作権を有する。」旨主張する。しかしながら,控訴人ら主張のノウハウは,著作権法2条1項1号にいう「思想又は感情を創作的に表現したもの」ということはできず,著作権法において保護されるものではない。
(略)
また,著作権の原始的な帰属主体は,上記のとおり,著作者である(著作権法17条)から,客観的に著作者としての要件を満たさない者について,著作権が原始的に帰属することはあり得ず,仮に,当事者間において,著作者でない者につき著作権が原始的に帰属する旨の合意が成立したとしても,そのような合意の効力を認めることはできないと解さざるを得ない。