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著作権判例セレクション
【侵害主体論】CD等の楽曲を携帯電話で聴くことのできるサービスにおける侵害主体性が争点となった事例
▶平成19年05月25日東京地方裁判所[平成18(ワ)10166]
(注) 本件は,原告が被告に対し,原告の本件サービスの提供について,管理著作物の著作権に基づく差止請求権が存在しないことの確認を求める事案である。これに対し,被告は,本件サービスについて原告が管理著作物の複製権及び公衆送信権(送信可能化権及び自動公衆送信権)を侵害するとして,上記各権利に基づき,差止請求権がある旨を主張している。原告は,本件サービスにおいて管理著作物が複製されることは認めた上で,その行為主体はユーザであり,また公衆送信に当たらないなどと主張する。
(前提事実)
原告は,パソコンと携帯電話のインターネット接続環境を有するユーザを対象として,「MYUTA」の名称により,CD等の楽曲を自己の携帯電話で聴くことのできる別紙目録記載のサービス(「本件サービス」)を提供しようとしている。本件サービスは,要旨,次のとおりである。
ア 基本構成
本件サービスは,原告が作成して提供する「MYUTA専用
MUSIC UPLOADER」(「本件ユーザソフト」)を用いて,ユーザが楽曲の音源データを自己のパソコンで携帯電話用ファイルに圧縮し,インターネットを経由して原告の運営する「MYUTAサーバ」(「本件サーバ」)のストレージ(外部保存媒体。具体的にはストレージサーバ内の大容量のハードディスク)にアップロードして蔵置し,これを任意の時期に自己の携帯電話にダウンロードできるようにするものであり,これにより,ユーザにおいて,携帯電話で楽曲を自由に再生することができる。
イ 楽曲の音源データの流れ
本件サービスにおいて,楽曲の音源データは,別紙「本件サービスにおける音楽著作物の利用」(以下「説明図」という。)記載のとおり,データファイルとして,形式が変換され,蔵置され,インターネットで送信されて利用される。
(ア) 説明図①
ユーザのパソコンにおいて,ミュージックプレイヤー用に予め作成済みのMP3ファイル又はWMAファイルを準備するか,一般のソフトウエアなどを利用してCDからこれらのファイルを作成する。
(イ) 説明図②
ユーザのパソコンにおいて,本件ユーザソフトを用いて,MP3ファイル又はWMAファイルがAVIファイルに変換され,蔵置されて複製される。
(ウ) 説明図③及び④
ユーザのパソコンにおいて,本件ユーザソフトを用いて,AVIファイルが3G2ファイルに変換され,蔵置されて複製された後,インターネット回線で本件サーバにアップロードされ,その完了時に3G2ファイルがユーザのパソコンから消去される。
(エ) 説明図④
本件サーバにおいて,ユーザからインターネット回線でアップロードされた3G2ファイルが蔵置されて複製される。
(オ) 説明図④及び⑤
ユーザの携帯電話において,本件サーバからインターネット回線でダウンロードされた3G2ファイルが蔵置されて複製される。
1 証拠によって認められる事実
前記の前提となる事実に,証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。
(1)
本件サービスの概要及び目的
ア 本件サービスの概要は,別紙目録記載のとおりである。
すなわち,原告との間で会員登録を済ませたユーザは,原告の提供する本件ユーザソフトをパソコンにインストールし,これを用いて楽曲の音源データを携帯電話で利用できるファイル形式に変換して本件サーバにアップロードし,これを携帯電話にダウンロードする。
このように,本件サービスは,楽曲の音源データを本件サーバから携帯電話にインターネット回線を経由してダウンロードし,ユーザが携帯電話でいつでもどこでも音楽を楽しめることを目的としている。
イ 楽曲の音源データとして,音楽CDなどから,3G2ファイルを作成すること自体は,フリーソフト等を使うことによっても可能であるが,これをユーザが個人レベルでそのような機能を一般的に持たない携帯電話に個別に取り込んで再生することは,技術的に相当程度困難である。
本件サービスは,ユーザにおける音源データや携帯電話等の技術的側面の理解にかかわらず,本件サーバを経由する仕組みを通じて,携帯電話での音楽再生を容易に実現することに意味がある。
ウ 原告は,本件サービスの提供に当たり,横浜市内にある原告のグループ会社の運営するサービスセンターにおいて,WEBサーバ,データベースサーバ及びストレージサーバで構成される本件サーバ等の原告の所有する装置一式を設置し,メンテナンス等も行って,常時作動するように監視し,故障に対応する態勢を整えて,これを管理していた。
(2)
本件サービスのセキュリティ
(略)
(3)
本件サービスのユーザによる初期設定
(略)
(4)
本件サービスにおけるシステム処理の手順
(略)
(5)
本件サービスにおけるシステム処理の実際
(略)
(6)
音源データの流れ
(略)
2 争点(1)ア(複製権その1)について
(1)
本件サービスの説明図④において複製が行われることは争いがないので,以下,前記認定の事実を前提に,その複製行為の主体について判断する。
ア 目的
本件サーバにおける音源データの蔵置に不可欠な本件ユーザソフトの仕様や,ストレージでの保存に必要な条件は,原告によって予めシステム設計で決定されるところ,本件サーバのストレージに複製された3G2ファイルは,ユーザが携帯電話にこれをダウンロードすることを予定して蔵置されたものである。すなわち,本件サーバにおける複製は,音源データのバックアップなどとして,ファイルを単に保存すること自体に意味があるのではなく,原告の提供する本件サービスの手順の一環として,最終的な携帯電話での音源データの利用に向けたものであり,本件サーバのストレージがユーザのパソコンと携帯電話とをいわば中継する役割を果たしている。
また,ユーザが個人レベルで本件サービスと同様にCD等の楽曲の音源データを携帯電話で利用することを試みる場合,前記1(1)認定のとおり,本件ユーザソフトを用いなくても,フリーソフト等を使って3G2ファイル化することまでは可能であるが,これを再生可能な形で携帯電話に取り込むことに関しては,技術的に相当程度困難である。
したがって,携帯電話にダウンロードが可能な形のサイト(本件サーバのストレージ)に音源データをアップロードし,本件サーバでこれを蔵置する複製行為は,本件サービスにおいて,極めて重要なプロセスと位置付けられる。
イ 行為の内容
説明図④において本件サーバに管理著作物が複製されることは,当事者間に争いがない。
本件サーバにおける3G2ファイルの複製行為は,ユーザのパソコンからインターネット回線でアップロードされ,蔵置されて行われるものである。すなわち,前記1(5)認定のとおり,ユーザのパソコンの本件ユーザソフトと本件サーバ(ストレージサーバ)内の本件ストレージソフトとがインターネットを経由して連動し,ストレージサーバのOSの機能によって,音源データのファイル保存が完了する。
なお,このアップロードに際し,前記1(4)認定のとおり,本件ユーザソフトは,本件サーバとインターネット回線を介して連動している状態において,本件サーバの認証を受けなければ作動しないようになっており,ユーザは,利用登録時に発行されたアクセスキーによる認証を経て,本件サーバのシステムに接続され,音源データは,紐付けされた特定のストレージ領域に蔵置される。
ウ 本件サーバの役割
前記1(1)認定のとおり,原告は,WEBサーバ,データベースサーバ及びストレージサーバで構成される本件サーバ等の装置一式を所有するとともに,これを原告のグループ会社のサービスセンターに設置して,常時作動するように監視し,故障に対応する態勢を整えるなど,本件サーバを管理してきた。
本件サーバは,ユーザに対する本件サービスの提供に当たって,システムの中核を構成し,前記1(2)ないし(4)認定のとおり,原告の定めたシステム設計に従って処理され,稼働するものである。原告の作成に係る本件ユーザソフトは,ユーザのパソコン内で起動され,本件サーバ内の本件ストレージソフトとインターネットを介して連動した状態で機能するが,ユーザは,本件サービスの利用に際し,前記1(3)認定のとおり,個別に利用の条件や使用の設定を変えることはできず,すべて,原告の設計したシステムに従って,これを利用するかしないかの選択しかできない。
そして,本件サーバのストレージでは,ユーザの携帯電話にダウンロードするために音源データを蔵置することが必要不可欠であるところ,本件サービスの目的はユーザの携帯電話における音楽の楽曲の再生であり,原告によるシステム設計として,サーバ内で音源データが複製されることを当然の前提にしている。
本件サーバは,本件サービスにおけるこのような目的を実現するため,原告が所有し,管理して,維持運営する専用サーバであって,それ以外の役割を担うものではない。
エ ユーザの役割
他方,本件サービスにおいて,本件サーバと一体となったシステムの利用上,前記1(4)及び(6)認定のとおり,ユーザが本件サーバにどの楽曲を複製するか等の操作の端緒となる関与を行うことが予定されている。
しかしながら,前記1(2)ないし(4)認定のとおり,本件サーバにおける音源データの蔵置に不可欠な本件ユーザソフトの仕様や,ストレージでの保存に必要な条件は,原告によって予めシステム設計で決定されたものである。そして,本件サーバにおける3G2ファイルの蔵置は,こうした本件ユーザソフトがユーザのパソコン内で起動され,本件サーバ内の本件ストレージソフトとインターネットを介して連動した状態で機能するように仕組まれている。
そうすると,個々の3G2ファイルの蔵置について,その操作の端緒として,インターネットを経由したユーザの行為が観念できるとしても,ここでの蔵置による複製行為は,専ら,原告の管理下にある本件サーバにおいて,行われるものである。
オ 有償性
原告の提供する本件サービスは,前記1(1)認定のとおり,ベータ版での試用では,月額料金が当面無料とされているが,当初から,有料化と機能の拡張が予定されていた。
カ 小括
以上の諸事情,すなわち,①原告の提供しようとする本件サービスは,パソコンと携帯電話のインターネット接続環境を有するユーザを対象として,CD等の楽曲を自己の携帯電話で聴くことができるようにするものであり,本件サービスの説明図④の過程において,複製行為が不可避的であって,本件サーバに3G2ファイルを蔵置する複製行為は,本件サービスにおいて極めて重要なプロセスと位置付けられること,②本件サービスにおいて,3G2ファイルの蔵置及び携帯電話への送信等中心的役割を果たす本件サーバは,原告がこれを所有し,その支配下に設置して管理してきたこと,③原告は,本件サービスを利用するに必要不可欠な本件ユーザソフトを作成して提供し,本件ユーザソフトは,本件サーバとインターネット回線を介して連動している状態において,本件サーバの認証を受けなければ作動しないようになっていること,④本件サーバにおける3G2ファイルの複製は,上記のような本件ユーザソフトがユーザのパソコン内で起動され,本件サーバ内の本件ストレージソフトとインターネット回線を介して連動した状態で機能するように,原告によってシステム設計されたものであること,⑤ユーザが個人レベルでCD等の楽曲の音源データを携帯電話で利用することは,技術的に相当程度困難であり,本件サービスにおける本件サーバのストレージのような携帯電話にダウンロードが可能な形のサイトに音源データを蔵置する複製行為により,初めて可能になること,⑥ユーザは,本件サーバにどの楽曲を複製するか等の操作の端緒となる関与を行うものではあるが,本件サーバにおける音源データの蔵置に不可欠な本件ユーザソフトの仕様や,ストレージでの保存に必要な条件は,原告によって予めシステム設計で決定され,その複製行為は,専ら,原告の管理下にある本件サーバにおいて行われるものであることに照らせば,本件サーバにおける3G2ファイルの複製行為の主体は,原告というべきであり,ユーザということはできない。
(2)
原告の主張について
ア 原告は,ユーザとの間で,1対1の対応関係を確保するための環境設定を行い,ユーザのパソコン,本件サーバのストレージの専用領域,ユーザの携帯電話を紐付けているから,いわばユーザのパソコンの外付けハードディスクと同じことであり,本件サーバでの蔵置は,あくまでもユーザが行うものであって,この関係は,あたかも銀行の貸金庫業務に例えられる旨を主張する。
なるほど,本件サービスのいわば入口と出口だけを捉えれば,ユーザのパソコンとユーザの携帯電話という1対1の対応関係といえなくはないが,説明図④すなわち本件サーバにおいて音源ファイルが複製されていることに変わりはなく,しかも,本件サーバへの3G2ファイルの蔵置による複製は,本件サービスにおいて極めて重要なプロセスと位置付けられる。そして,前記(1)エのとおり,本件サーバにおける3G2ファイルの複製行為は,複製に係る蔵置のための操作の端緒となる関与をユーザが行い,原告が任意に随時行うものではないが,この蔵置による複製行為そのものは,専ら,原告の管理下において行われている。すなわち,本件サーバにおける3G2ファイルの複製行為は,ユーザがどの楽曲データをアップロードするかを決定して操作するものではあるが,複製の過程はすべて原告が所有し管理する本件サーバにおいて,原告が設計管理するシステムの上で,かつ,原告がユーザに要求する認証手続を経た上でされるものであって,原告の全面的な関与の下にされるものである。そうすると,この過程において,ユーザは複製のための操作の端緒となる関与をしたに留まるものというべきであり,上記の複製行為は,前記(1)カのとおり,それ自体,原告の行為としてとらえるのが相当である。
イ また,原告は,原告がユーザに対し,蔵置するファイルを作りやすい状況を作出したり,ファイルを作るように働きかけたり,特定の曲を選択したりするようなことをしておらず,ユーザによるファイルの作成という複製行為を管理支配しているとはいえない旨主張する。
しかしながら,前記(1)ウ及びエのとおり,本件サービスの提供そのものがまさにユーザの蔵置に向けた操作の誘因となり,その結果,原告の支配管理下にある本件サーバのシステムが複製のためのファイル処理を行うものである。
ウ なお,原告は,本件サービスにおける複製は,一時的にユーザのパソコンや本件サーバにされるものであって,コンピュータのメモリ内に一時的に複製されるソフトウエアと同じ道理であり,物理的にも規範的にも,すべてユーザが行っているといえる旨主張する。
しかしながら,そもそも原告の主張する一時的の意味が不明であり,一時的であれば複製権が制限される根拠を主張していない。そして,本件サーバにおける複製行為が本件サービスの中核をなしていることからすれば,上記主張は失当である。
(3)
まとめ
以上のとおり,説明図④に関し,本件サーバにおける3G2ファイルの複製行為について,その行為主体は原告というべきであるから,原告は,本件サービスの提供により,管理著作物の複製権を侵害するおそれがある。
3 争点(2)ア(自動公衆送信権)について
(1)
次に,本件事案の性質に鑑み,前記2の判断に加え,説明図④から⑤の過程における自動公衆送信権侵害の有無について判断する。
説明図④から⑤の過程に関し,本件サーバからユーザの携帯電話に向けた3G2ファイルの送信(ダウンロード)について,送信行為の主体が誰かにつき検討すると,前記2と同様に,①原告の提供しようとする本件サービスは,パソコンと携帯電話のインターネット接続環境を有するユーザを対象として,CD等の楽曲を自己の携帯電話で聴くことができるようにするものであり,本件サービスの説明図④から⑤の過程において,音源データの送信行為が不可避的であって,本件サーバから3G2ファイルを送信する行為は,本件サービスにおいて不可欠の最終的なプロセスと位置付けられること,②本件サービスにおいて,3G2ファイルの蔵置及び携帯電話への送信等中心的役割を果たす本件サーバは,原告がこれを所有し,その支配下に設置して管理してきたこと,③本件サーバによる3G2ファイルの送信は,インターネット回線を介して,ユーザの携帯電話と本件サーバ内の本件ストレージソフトが連動して機能するように,原告によってシステム設計されたものであること,④本件サーバからの送信行為は,本件サーバでの複製行為を前提とするものであり,ユーザが個人レベルでCD等の楽曲の音源データを携帯電話で利用することは,技術的に相当程度困難であること,⑤ユーザは,本件サーバにどの楽曲をダウンロードするか等の操作の端緒となる関与を行うものではあるが,本件サーバによる音源データの送信に係る仕様や条件は,原告によって予めシステム設計で決定され,その送信行為は,専ら,原告の管理下にある本件サーバにおいて行われるものであることに照らせば,本件サーバによる3G2ファイルの送信行為の主体は,原告というべきであり,ユーザということはできない。
(2)
自動公衆送信行為の該当性について
本件サービスを担う本件サーバは,前記1(2)ないし(6)認定のとおり,ユーザの携帯電話からの求めに応じて,自動的に音源データの3G2ファイルを送信する機能を有している。
そして,本件サービスは,前記1(1)認定のとおり,インターネット接続環境を有するパソコンと携帯電話(ただし,当面は
au WIN端末のみ)を有するユーザが所定の会員登録を済ませれば,誰でも利用することができるものであり,原告がインターネットで会員登録をするユーザを予め選別したり,選択したりすることはない。「公衆」とは,不特定の者又は特定多数の者をいうものであるところ(著作権法2条5項参照),ユーザは,その意味において,本件サーバを設置する原告にとって不特定の者というべきである。
よって,本件サーバからユーザの携帯電話に向けての音源データの3G2ファイルの送信は,公衆たるユーザからの求めに応じ,ユーザによって直接受信されることを目的として自動的に行われるものであり,自動公衆送信(同法2条1項9号の4)ということができる。
このように,本件サーバは,自動公衆送信のための装置に該当し,説明図④から⑤の過程における本件サーバからユーザの携帯電話に向けた3G2ファイルの送信(ダウンロード)について,自動公衆送信行為がされたということができる。
(3)
原告の主張について
ア 原告は,ユーザが本件サーバに蔵置した音源データのファイルには,当該ユーザしかアクセスできず,1対1の対応関係であって,しかも常に同一人に帰するから,ユーザが専ら自分自身に向けて行っている自己宛の純粋に私的な情報伝達であり,公衆送信権侵害に当たらない旨主張する。
しかしながら,本件サーバから音源データを送信しているのは,前記(1)のとおり,本件サーバを所有し管理している原告である。そして,公衆送信とは,公衆によって直接受信されることを目的とする(著作権法2条1項7号の2)から,送信を行う者にとって,当該送信行為の相手方(直接受信者)が不特定又は特定多数の者であれば,公衆に対する送信に当たることになる。そして,送信を行う原告にとって,本件サービスを利用するユーザが公衆に当たることは,前記(2)のとおりである。なお,本件サーバに蔵置した音源データのファイルには当該ユーザしかアクセスできないとしても,それ自体,メールアドレス,パスワード等や,アクセスキー,サブスクライバーID(加入者ID)による識別の結果,ユーザのパソコン,本件サーバのストレージ領域,ユーザの携帯電話が紐付けされ,他の機器からの接続が許可されないように原告が作成した本件サービスのシステム設計の結果であって,送信の主体が原告であり,受信するのが不特定の者であることに変わりはない。
イ 原告は,このほか,本件サーバにユーザが蔵置した音源データのファイルには当該ユーザしかアクセスしないとか,ユーザしか利用できない領域を設定するための仕組みを提供して銀行の貸金庫業務類似の行為しかしていないなどとも主張するが,原告の管理下において,そのシステム設計に従って稼働する本件サーバの役割に鑑みれば,いずれも本件サービスを原告の立場から一面的に理解したものにすぎず,失当である。
(4)
まとめ
以上のとおり,説明図④から⑤にかけての,本件サーバからユーザの携帯電話に向けた3G2ファイルの送信(ダウンロード)について,自動公衆送信行為がされ,その行為主体は原告というべきであるから,原告は,本件サービスの提供により,管理著作物の自動公衆送信権を侵害するおそれがあるといわざるを得ない。
4 結論
以上によれば,本件サービスの説明図④における音楽著作物の複製は,原告が行い,同④から⑤にかけての自動公衆送信も,原告が行っているから,それらの行為は,被告の許諾を受けない限り,管理著作物の著作権を侵害するものである。そうすると,同④における音楽著作物の蔵置及びユーザの携帯電話に向けた送信につき,被告は差止請求権を有するものである。
したがって,原告の請求については,その余の点について判断するまでもなく,理由がないことになる。