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著作権判例セレクション

【写真著作物の侵害性】商品カタログ用写真の侵害性が問題となった事例

▶令和2127日大阪地方裁判所[平成29()12572]令和3121日大阪高等裁判所[令和2()597]
3 原告制作物4に係る請求について(翻案の有無)
(1) 翻案(著作権法27条)とは,他人の著作物に新たな創作性を付与して別個の著作物を作成する行為であり,既存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案には当たらないと解される。
(2) 原告は,原告制作物4につき,被写体の配置,構図,カメラアングルの設定,被写体と光線の関係,陰影の付け方,色彩の配合,背景等に工夫を凝らしたことをもって,その創作性の表れと主張するものと思われる。
しかし,写真に創作性が付与されるのは,被写体の独自性によってではなく,撮影や現像等における独自の工夫によって創作的な表現が生じ得ることによるものであり,被写体の選択や配置上の工夫は,写真の創作性を基礎付けるに足りる本質的特徴部分ではない。したがって,原告が指摘する被写体の配置,構図,背景については,写真の著作物の創作性を基礎付けるに足りる本質的特徴部分とはいえないから,これらの点が共通しても翻案とはならない。
また,原告制作物4と被告制作物4が類似するか否かは,原告制作物4の創作性を基礎付けるに足りる本質的特徴部分である,カメラアングルの設定,被写体と光線の関係,陰影の付け方,色彩の配合が共通するか否かを考慮して判断する必要があるところ,証拠によれば,原告制作物4及び被告制作物4は,別紙対照表4のとおりの内容を含むものであると認められる。これによれば,原告制作物4と被告制作物4とは,【カメラアングルのほか,中央上部の光源により左右に影を生じているという被写体と光線の関係は共通するといい得るとしても,これらの点は,一般的な商品の宣伝広告・販促用写真として顕著な特徴を有するともいい難く,表現上の創作性がある部分に当たるとは俄かにいい難い上,陰影の付け方及び色彩の配合は相違しており,被告制作物4を原告制作物4と比較して見たとき,表現上の本質的特徴の同一性を維持し,原告制作物4の表現上の本質的特徴を直接感得することができるとは評価し難い(本判決注・原告制作物4についての当審における控訴人の補足的主張に対する判断を含む。)。】そうすると,被告制作物4は,原告制作物4を翻案したものであるとは認められないから,その余の点を検討するまでもなく,原告制作物4に係る原告の著作権を侵害するものとはいえない。この点に関する原告の主張は採用できない。
よって,原告制作物4に係る請求については,いずれも理由がない。
[控訴審同旨]