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著作権判例セレクション

【美術著作物】ノルウェー出身の工芸デザイナーが創作した「子供用のいす」の(美術)著作物性を否定した事例

▶平成221118東京地方裁判所[平成21()1193]
原告らは本件デザインが著作物であり,著作権法による保護の対象となると主張する。
著作権法2条1項1号は,著作物を, 「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定し,同条2項において,「この法律にいう「美術の著作物」には,美術工芸品を含むものとする。」と規定する。これらの規定は,意匠法等の産業財産権制度との関係から,著作権法により美術の著作物として保護されるのは,純粋美術の領域に属するものや美術工芸品であり,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予定されているもの(いわゆる応用美術)は,それが純粋美術や美術工芸品と同視することができるような美術性を備えている場合に限り,著作権法による保護の対象になるという趣旨であると解するのが相当である。
本件デザインは,いすのデザインであって,実用品のデザインであることは明らかであり,その外観において純粋美術や美術工芸品と同視し得るような美術性を備えていると認めることはできないから,著作権法による保護の対象とはならないというべきである(なお,原告らは,ベルヌ条約加盟国では応用美術が保護されるから,本件デザインは我が国においても著作権法による保護の対象となる旨主張する。しかしながら,同条約は,応用美術の著作物に関する法令の適用範囲及び保護の条件について各国の法令の定めるところによるとしており(同条約2条7項) ,我が国の著作権法における応用美術の保護の範囲の解釈は上記のとおりであるから,我が国以外のベルヌ条約加盟国中に応用美術を保護の対象とする国があったとしても,本件デザインは我が国の著作権法による保護の対象とはならないというべきである。)。