Kaneda Legal Service {top}
著作権判例セレクション
【言語著作物】手紙の著作物性を認めた事例
▶平成11年10月18日東京地方裁判所[平成10(ワ)8761]▶平成12年05月23日東京高等裁判所[平成11(ネ)5631]
2 著作権法上保護の対象となる著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであることを要し、これをもって足りる。
本件各手紙は、いずれも、被告Eとの往復書簡であり、特定の者に宛てられ、特定の者を読み手として書かれたものであって、不特定多数の読者を想定した文芸作品とは性格を異にする。しかし、本件各手紙には、単に時候の挨拶、返事、謝礼、依頼、指示などの事務的な内容のみが記載されているのではなく、Gの自己の作品に対する感慨、抱負、被告Eの作品に対する感想、意見、折々の心情、人生観、世界観等が、文芸作品とは異なり、飾らない言葉を用いて述べられている。本件各手紙は、いずれも、Gの思想又は感情を、個性的に表現したものであることは明らかである。以上のとおり、本件各手紙には著作物性がある。
[控訴審同旨]
1 著作権法は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義し、特に「手紙」を除外していないから、右の定義に該当する限り、手紙であっても、著作物であることは明らかである。この点について、手紙の著作物性は誰にも知られていなかったとか、国民の依拠すべき法が事実上存在しなかったとか、ということはできない。