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著作権判例セレクション
【侵害とみなす行為】法113条5項の意義と解釈(プログラムを使用する行為は著作権の侵害となるか)
▶平成12年05月16日東京地方裁判所[平成10(ワ)17018]
すなわち、プログラムをコンピュータ上で使用するに当たっては、これをいったんコンピュータ内のRAMに蓄積すること(ローディング)が不可欠であるから、プログラムの使用行為とそのRAMへの蓄積行為とは、不可分一体の関係にあるといえるところ、著作権法は、プログラム著作物に関して、著作者がこれを使用する権利を専有する旨の規定を置いていない。しかも、同法113条2項[注:現5項。以下同じ]は、「プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によって作成された複製物を業務上電子計算機において使用する行為は、これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知っていた場合に限り、当該著作権を侵害する行為とみなす。」と規定しているところ、同条項は、プログラムを使用する行為のうち、一定の要件を満たすものに限って、プログラムに係る著作権を侵害する行為とみなすというものであるから、プログラムを使用する行為一般が著作権法上本来的には著作権侵害にならないことを当然の前提としているということになる。してみると、著作権法は、プログラムの使用行為及びこれと不可分一体の関係にあるプログラムのRAMへの蓄積行為については、同法113条2項の場合を除いて、違法でないとの前提に立っているものと解されるところ、その理由は、RAMへの蓄積行為が前記のような一時的・過渡的な性質であるため、著作権法上の「複製」に当たらないことにあると解するのが相当である。
原告らは、著作権法113条2項の規定について、RAMへの蓄積行為が本来的に「複製」に該当するとの前提に立った上で、あえてプログラムのユーザー保護のために、プログラムの使用及びそれに伴うプログラムのRAMへの蓄積が違法となる場合を限定する趣旨の規定と解すべき旨を主張するが、同条項の規定形式、すなわち、本来異なるものを同一のものとして扱う場合に用いるところの「みなす」という法令用語を使用していることからしても、同条項は、本来著作権に触れる行為とはいえないものを、特に著作権侵害行為と認める趣旨の規定であって、原告らが主張するように、本来著作権に触れる行為であるものについて、それが違法となる場合を限定する趣旨の規定でないことは明らかというべきである。したがって、原告らの右主張は失当である。