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著作権判例セレクション

【言語著作物】ゲームソフトで使用される高等学校名の著作物性を否定した事例

▶平成111118日大阪地方裁判所[平成10()1743]
() ゲームソフト「甲子園2」なる名称の家庭用ゲーム機用コンピュータソフトウェアには、全国高等学校野球選手権大会の地区予選に出場した4000校余りの高等学校名について、その通称の漢字表記の第一文字目と第二文字目を入れ替えるなどして構成された、「本件第一学校」名が使用されている。

1 争点二2(著作物性)について
() 証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件第一学校名は、そのほぼすべてが、日本に実在する高等学校の通称名ないし略称名の第一文字目と第二文字目の順番を入れ替えて作成されたものであることが認められる。
著作物として保護されるためには、思想又は感情の創作的表現であることが必要であるところ(著作権法211号)、本件第一学校名は、右のとおり、実在する高等学校の名称(通称)を加工したものにすぎず、それらの高等学校名の選択や配列に特段の工夫は見られないばかりか、その加工方法も、名称(通称)の第一文字目と第二文字目の順番を入れ替えたのみであって、極めて簡易かつありふれた手法にすぎず、表現としての創作性を有すると認めることはできないから、本件第一学校名を著作物ということはできない。
原告は、本件第一学校名は、実在の学校名を容易に想起できる点に独自性・創作性があると主張するが、右の点が独自性・創作性を有するか否かはひとまず措くとしても、原告が独自性・創作性があると主張するところはいわゆるアイデアにすぎないものであって、本件第一学校名は、右のようなアイデアを実現するための表現手法としては、第一文字目と第二文字目の順番を入れ替えた極めて簡易かつありふれた手法を採用しているのであるから、原告の主張は失当である。
() そうすると、本件第一学校名は著作物たる要件である表現としての創作性を欠くものであって、著作物と認めることはできないから、原告の著作権侵害に基づく請求は、その余の点を判断するまでもなく失当である。