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著作権判例セレクション
【損害額の算定例】法114条1項適用事例(同人誌の漫画をウェブサイトに無断掲載した事例)/役員等の第三者に対する損害賠償責任(会社法429条1項)を認めた事例
▶令和2年2月14日東京地方裁判所[平成30(ワ)39343]
(注) 本件は,原告が,被告会社は,自らが運営するウェブサイト(「本件各ウェブサイト」)に,原告が著作権を有する漫画(「本件各漫画」)を無断で掲載し,原告の著作権(公衆送信権)を侵害したと主張して,被告会社に対し,民法709条及び著作権法114条1項に基づき,損害賠償金等の支払を求めるとともに,被告会社の現在の代表取締役である被告Y1及び平成30年8月25日まで代表取締役であったZ(同日死亡。以下「亡Z」)が,被告会社の法令順守体制を整備する義務に違反して,被告会社が上記著作権侵害行為を行う本件各ウェブサイトを運営することを許容したとして,被告Y1及び亡Zを相続した同人の配偶者である被告Y2に対し,会社法429条1項に基づき,被告会社と連帯して,同額の損害賠償金等の支払を求めた事案である。
1 争点1(本件各漫画の著作物性)について
被告らは,本件各漫画が著作物に当たることについて立証がされていないと主張するが,証拠によれば,本件各漫画は絵と文字を組み合わせたものであり,作成者の思想及び感情を創作的に表現したもので,著作権法2条1項1号が定める美術の著作物に当たると認められる。
2 争点2(原告が本件各漫画の著作権者であるか)について
後掲証拠によれば,①本件各漫画は全て原告が書店への委託販売を行う際に使用するサークル名である「D」の記載のあるチラシに掲載されていること,②本件漫画1,2,4~13の表紙にも「D」及び「C」の記載(いずれも平仮名表記又はアルファベット表記のものもある。)があること,③同人誌の通信販売サイトにおいて,複数の作品に付された「B」又は「C」の筆名は,いずれも「D」の名称とともに表示されていること,④原告は,「B」の筆名で出版社と著作権に関する契約を締結したこと,⑤原告は,別件の著作権侵害被告事件の判決及び記録中において,被害者の「B」こと原告と表記され,当該刑事記録の写しを保有していること,⑥原告は,本件漫画2,3,5,9及び12について印刷所に印刷の発注をし,納品を受けていること,⑦原告は,印刷会社のウェブサイトのマイページから,本件漫画4,6及び12の印刷に係る注文履歴のウェブページにアクセスすることが可能であること,⑧本件各漫画を委託販売している書店から原告宛てに販売結果の報告書が送付されていることが認められ,これらの事実からすれば,原告は「B」又は「C」の筆名を用い,サークル名として「D」を用いて漫画を制作・販売しており,本件各漫画の著作権者であると認められる。
3 争点3(被告会社が本件各漫画を本件各ウェブサイトに掲載したか)について
本件各ウェブサイトの運営者に関し,後掲証拠によれば,①本件各ウェブサイトのドメインを取得したのは被告会社であること,②本件各ウェブサイトに掲載された広告に関して,被告会社が広告代理店であるMラボと契約を締結したこと,③(証拠)の各記事が掲載された後,本件ウェブサイト2には,被告会社と住所が同一であるFの商品に係る広告のみがウェブサイトに直接埋め込まれる形で掲載されていたことの各事実が認められ,これらの事実に照らすと,被告会社は,本件各ウェブサイトの運営者と推認するのが相当である。
そして,本件各ウェブサイトは,本件各漫画を含む同人誌等を多数掲載し,これらを無料で閲覧することを可能にしつつ,広告を掲載して広告掲載料を得ることを業としていたと認められるところ,前記判示のとおり,被告会社は広告代理店と自ら契約していることや,被告会社以外の第三者が本件各ウェブサイトに同人誌等を掲載していることをうかがわせる証拠はないことに照らすと,被告会社自身が本件各漫画を本件各ウェブサイトに掲載し,公衆送信させていたと認めるのが相当である。
4 争点4(被告会社の故意・過失の有無)について
前記判示のとおり,被告会社は,本件各ウェブサイトの運営者として,本件各漫画を含む同人誌等を多数掲載し,無料で閲覧可能にしつつ,広告を掲載して広告掲載料を得ることを業としていたことに照らすと,本件各漫画を無断で掲載したことによる公衆送信権の侵害について認識していたことが明らかであり,故意があると認められる。
したがって,被告会社は,原告が本件各漫画に対して有する公衆送信権を侵害したと認められる。
5 争点5(信義則違反又は権利濫用の成否)について
被告らは,本件各漫画が違法な二次的著作物であるから,原告の本件損害賠償請求は信義則違反又は権利の濫用に当たると主張するが,本件各漫画が違法な二次的著作物であると認めるに足りる証拠は存在しない。
したがって,原告が,本件各漫画を無断で本件各ウェブサイトに掲載し,公衆送信した被告会社及び後記7のとおり会社法429条1項の責任を負う被告Y1及び被告Y2に対して権利行使することが信義則違反又は権利濫用であるということはできない。
6 争点6(損害額)について
(1)
本件各ウェブサイトにおいて本件各漫画が公衆送信された数量
ア PV数の表記があるもの
(ア) PV(ページビュー)とは,ウェブサイト内の特定のページが開かれた回数を表し,ブラウザにHTML文書(ウェブページ)が1ページ表示されることにより1PVとカウントされるところ,ウェブサイト内にPV数の表記がある本件ウェブサイト3,4及び7のうち,本件ウェブサイト3及び4については,ウェブページに表示された作品の全ての頁の閲覧ができると認められるから,各作品のPV数は以下のとおりと認められる。
(略)
(イ) 本件ウェブサイト7は,ウェブサイト内にPV数が表示されるものの,閲覧方法として「1枚ずつ閲覧」,「見開きで閲覧」,「PDFで閲覧」の3種類を選択することができると認められる。本件ウェブサイト7が上記各方法のそれぞれについてどのようにPV数をカウントしているか明らかではないものの,「1枚ずつ閲覧」を選択した場合にも,ウェブページを1頁表示するのみで作品の全頁を閲覧できることを認めるに足りる証拠はなく,同サイトに掲載された本件各漫画のある頁を異なる頁に切り替えるたびに異なるHTML文書を表示し,PV数がカウントされている可能性がある。
これに対し,原告は,被告会社が運営していた可能性のある別のウェブサイトにおいて,1頁ずつ閲覧する形式においても,頁の切り替えの際にPVがカウントされない方式が採用されていたから,本件ウェブサイト7についても,「1枚ずつ閲覧」を選択した場合でも,同様に1PVで作品の全頁が閲覧できたというべきである旨主張するが,同ウェブサイトについて原告が主張するようなPV数のカウントが行われていたことを認めるに足りる証拠はないから,原告の主張は採用できない。
そうすると,本件ウェブサイト7については,表示されたPV数を作品の頁数で除した数(小数点以下切り捨て)をもって,作品全体の公衆送信を行った数量と認めるべきであり,具体的には下表のとおりとなる。
(略)
イ PV数の表記がないもの
(ア) 原告は,ウェブサイト内にPV数の表記がない本件ウェブサイト1,20 2,5及び6について,シミラーウェブによる推定は正確性が担保されているとして,その推定結果に基づいたPV数によるべきであると主張する。
しかし,シミラーウェブはウェブサイトへのアクセス数を統計的に推測するサービスを提供するウェブサイトであるところ,同ウェブサイトの分析結果については,同ウェブサイトが分析結果を公表した企業から事実に反するとの抗議を受けていると報じられ,グーグルが提供するGoogleAnalytics といった他のサービスによる分析結果と比較して,同一のウェブサイトであってもPV数に大きな誤差があるなど,その正確性,信頼性に疑問を呈する見解が複数みられるところである。
また,シミラーウェブのウェブサイトには1000を超える多様な情報源によってデータの質を比較・評価することにより,データに基づく正確な判断を可能にした旨の抽象的な記載があるにとどまり,PV数等の推計の具体的な仕組みは明らかではなく,その正確性が客観的に担保されているとは認め難い。
これに対し,原告は,一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)による「静止画(書籍)ダウンロードの被害実像」と題する資料において,アクセス数の推定にシミラーウェブが用いられていると指摘するが,同資料はアクセス数の概数を推定するためにシミラーウェブを参照しているにすぎず,その推計値の正確性について何ら検証するものではない。
そうすると,同資料においてシミラーウェブが参照されているからといって,本件各ウェブサイトのPV数をシミラーウェブの推計結果に基づいて認定することはできない。
(イ) 前記のとおり,本件ウェブサイト1,2,5及び6に本件各漫画が掲載されていたことは認められるが,同各ウェブサイトに掲載された漫画ごとに個別にPV数を正確に推認する方法は見い出し難いところ,本件ウェブサイト3及び4に掲載された各漫画(なお,本件ウェブサイト7はこれらのウェブサイトと明らかに閲覧方法が異なるため,考慮しない。)と同ウェブサイト1,2,5及び6に掲載された各漫画のPV数の平均に大きな差があるとは認め難いことに照らすと,本件ウェブサイト1,2,5及び6に掲載された各漫画のPV数は,本件ウェブサイト3及び4に掲載された各漫画の平均のPV数である4383(以下の計算式。小数点以下切り捨て。)であったと推定するのが合理的である。
(略)
そして,本件ウェブサイト1,5及び6には,同人誌を閲覧する際,作品の全頁が一度に表示されるのではなく,複数回ウェブページを切り替える操作(具体的には,ウェブページの2頁目を意味する「2」などをクリックする。)を要すると認められ,切替え操作のたびにPV数が加算されることから,それらについては,上記の4383PVを作品の全頁を閲覧するのに要する上記の操作回数を除した数をもって,作品
全体を閲覧したPV数と認めることが相当である。
(略)
したがって,本件ウェブサイト1,2,5及び6に掲載された本件各漫画については,そのPV数は上記表の「1冊分PV」欄記載のとおりとなる。
(2)
原告の単位数量当たりの利益額
ア 頒布価格
本件各漫画の即売会における頒布価格は,別紙4の「即売会単価」欄記載のとおりである。
イ 印刷費
(ア) 甲15の納品書(有限会社N堂に対する発注分)及び甲16の注文履歴(株式会社Eに対する発注分)に記載されている本件漫画2~6,9及び12の印刷費及び印刷部数は,別紙4の「印刷費」及び「印刷部数」欄記載のとおりと認められ,印刷費を印刷部数で除した「1冊当たりの印刷費」欄記載の額(小数点以下切り捨て。以下同じ。)を「即売会単価」記載の金額から控除した額が,同別紙の「1冊当たりの利益」欄記載の金額と認められる。
本件漫画2については,原告は,印刷部数が2400であると主張するが,(証拠)によれば,印刷部数は1900であると認められる。そのため,本件漫画2の1冊当たりの利益は,315円となる。
(略)
(イ) 本件漫画1,7,8,10,13及び14については,印刷費については証拠があり,別紙4の「印刷費」欄記載のとおりと認められるが,印刷部数の証拠がなく,本件漫画11については,印刷費及び印刷部数の証拠がない(なお,本件漫画1に関し,甲44は簡易自動見積の結果にとどまり,実際の印刷部数を示す証拠はない上,同一の印刷所であるにもかかわらず,甲15の1は500部で甲44に表示された価格とほぼ同額であることなどに照らすと,その印刷部数が300部であると認めることはできない。)。
本件各漫画は,いずれも同人誌であり,ページ数は証拠により幅があるものの概ね20~30ページ程度であって,印刷費の平均に大きな差があるとは認めがたいことからすると,本件漫画1,7,8,10,11,13及び14の印刷費用は,上記(ア)で認定した本件漫画2~6,9及び12の印刷費の平均額である133円(以下の計算式。小数点以下切り捨て。)をもって印刷費と認めるのが相当であり,別紙4の「即売会単価」欄記載の金額からこれを控除した額が,同別紙の「1冊当たりの利益」欄記載の金額となる。
(略)
ウ 書店に対する委託販売について
被告らは,原告は書店に対する委託販売をしているから,委託手数料を控除すべきと主張する。
原告は,本件各漫画を印刷の上,書店への委託販売の方法によっても販売しており,委託先は株式会社K,株式会社K及び株式会社Cであるところ,上記各会社は,店頭販売価格から委託手数料等を差し引いた卸値に販売数を乗じた金額を原告に支払っていたことが認められる。もっとも,即売会単価と卸値を比較すると,本件漫画1について,即売会単価が500円であるのに対し,卸値は委託先により異なるものの,480円又は497円であり,証拠上委託販売による卸値が分かる本件漫画2~6,9及び12についても概ね同様であって,販売方法によって原告の利益額に大きな差があるとは認められない。
エ 即売会の参加費,参加に要する交通費及び宿泊費について
被告らは,即売会の参加費,参加に要する交通費及び宿泊費を本件各漫画の原価として控除すべきであると主張する。
しかし,これらの費用は本件各漫画の制作や販売が1冊増加するのに伴って増加する変動費ではないから,原告の単位数量当たりの利益額を算定するに当たり控除すべき費用に当たるとはいうことはできないから,被告の主張は採用できない。
オ まとめ
以上のとおり,本件各漫画の単位数量当たりの利益額は,別紙4の「1冊あたりの利益」欄記載の価格と認められる。
(3)
原告の販売等能力の有無
被告らは,原告は,その主張する程に本件各漫画を販売等する能力を有しない旨主張する。
被告らの主張の趣旨は,原告が本件各漫画を即売会や書店への委託販売といった紙媒体でのみ販売しており,本件各ウェブサイトにおける公衆送信のような,いわゆる電子書籍の形で販売していないから,本件各ウェブサイトにおけるPV数程に本件各漫画を販売等できたということはできないというものと解される。
しかし,原告は,同人誌を即売会において自ら販売するのみならず,前記のとおり,出版社に委託して販売することもしており,委託先の出版社の中にはインターネット上の販売サイトにおいて原告作品を販売しているものもあることに加え,漫画をインターネット上で頒布すること自体は,パソコン等を利用することにより,個人であってもさほど困難ではないと考えられることなどに照らすと,原告には上記(1)で認定したPV数に相当する作品を販売する能力がなかったということはできない。
したがって,被告らの上記主張は採用できない。
(4)
販売することができないとする事情
被告会社の運営する本件各ウェブサイトは,本件各漫画のような同人誌に限らず,アニメ,ゲーム,小説など多様なジャンルの作品を掲載し,(証拠)に「1万冊以上全部無料で読めちゃう」と記載されているように,多量の作品を無料で閲覧し得ることを特徴とするサイトであると認められる。このため,本件各漫画のような同人誌の愛好者にとどまらず,多数の者が同サイトを訪問し,その際に,購入する意図なく掲載作品を閲覧することも少なくないものと推測される。
他方,本件各漫画は,その内容等にも照らし,その需要者の範囲は限定されている上,その販売形態は即売会による販売と同人誌の通信販売を手がける出版社による委託販売によるものであり,即売会による販売が全体の約3分の1を占める。また,その販売数は,作品の発売後数か月間の販売数が多く,その後の月間販売数は急激に減少するという傾向が看取され,一定数の販売が継続するものではない。
そして,本件各漫画のPV数と同各漫画の販売実績を比較すると,本件各漫画のPV数の合計が11万7318(上記認定に係る1冊分のPV数の合計は7万6738)であるのに対し,本件各漫画の販売総数は8513冊であり,1冊分のPV数をとってみても,その販売総数はPV数の約9分の1程度であると認められる。
以上のとおり,本件各ウェブサイトによる閲覧と原告による本件各漫画の販売とでは,その需要者の範囲,閲覧又は販売する作品の数及び種類等が大きく異なるほか,本件各漫画は販売直後に多くが販売される傾向にあることや,本件各ウェブサイトは無料で閲覧を可能にするものであり,作品を購入する意図なくその内容を閲覧する需要者は少なくないものと考えられ,実際のところ,同一の漫画についてPV数と販売実績には大きな差があることなどに照らすと,本件各漫画のPV数のうち,原告が販売し得たと認め得る数量は,その1割であると認めるのが相当である。
したがって,本件において,被告会社の侵害行為がなければ原告が販売し得たと認められる数量は,別紙3の「9割覆滅後のPV数」欄記載のとおりとなる。
(5)
まとめ
以上のとおり,上記(1)で認められる本件各ウェブサイトにおいて本件各漫画が公衆送信された数量に,上記(2)で認められる原告の単位数量当たりの利益額を乗じた上で,原告が販売することができないとする事情を考慮して,それに相当する数量(9割)を控除した額は,別紙3の「損害欄」記載のとおりであり,その合計額である219万2215円が,著作権法114条1項に基づき,原告の損害額と推定される。
(6)
その他の被告らの主張について
ア 被告らは,本件各漫画が違法な二次的著作物に当たるから,損害額は相当制限されるべきであると主張するが,上記5で判示したとおり,採用できない。
イ 被告らは,原告の正確な損害額は,本件各ウェブサイトの存在により本件各漫画の販売量が減少した分であるとし,本件各ウェブサイトによって本件各漫画の販売量が減少したということはできないと主張するが,原告は著作権法114条1項に基づく損害額の推定を主張しているので,被告らの主張は失当である。
7 争点7(被告Y1及び被告Y2に対する会社法429条1項に基づく責任の成否)について
本件各漫画の掲載期間について,原告の主張に基づき,①本件各漫画の掲載日付がウェブページ内に記載されているものについては,当該日付(別紙1の「掲載開始日」欄記載のとおり)から平成30年7月6日まで,②本件各漫画の掲載日付がウェブページ内に記載されていないものについては,インターネット・アーカイブにおいて遡ることができる最古の日付(別紙1の「最古アーカイブ」欄記載のとおり。最も古い日付は平成27年7月28日)から平成30年7月6日まで,③インターネット・アーカイブにも登録されていないものについては,同日までの30日間であると認められるところ,前記記載のとおり,上記各期間中,亡Zは被告会社の代表取締役であり,被告Y1は同社の取締役であったと認められる。
前記判示のとおり,被告会社は本件各ウェブサイトに本件各漫画を含む同人誌等を,更新を繰り返しながら多数掲載し,無料で閲覧することを可能にしつつ,広告を掲載して広告掲載料を得ることを業としていたものと認められるが,被告会社の従業員数が約30名程度であること,役員は亡Z,被告Y1,被告Y2ほか1名であり,その役員構成は平成21年以前から亡Zの死亡時まで不変であることなどに照らすと,本件各漫画等の違法な掲載について代表取締役である亡Z及び被告Y1は認識し,仮に認識していなかったとしても容易に把握し得る状況にあったと考えられる。
取締役は,会社に対し,善管注意義務を負い(会社法330条,民法644条),会社の事業において第三者の著作権等の権利を違法に侵害しないよう注意する義務を負うところ,亡Z及び被告Y1が,被告会社による本件各漫画に係る公衆送信権侵害行為を防止する措置を何ら講じなかったことは任務懈怠に当たり,悪意又は少なくとも重過失が認められる。
したがって,被告Y1及び亡Zの権利義務を承継した被告Y2は,会社法429条1項に基づき,損害賠償責任を負い,当該責任は,被告会社の不法行為に基づく上記損害賠償責任と不真正連帯債務の関係に立つ。