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著作権判例セレクション
【映画著作物】スポーツ競技を収録したビデオテープ(フィルム), その生放送のための影像の「映画の著作物」該当性(生中継の影像でも「同時固定」であれば固定性の要件を満たすとした事例)/放映権料の著作権使用料該当性
▶平成6年3月30日東京地方裁判所[昭和62(行ウ)111]※源泉徴収所得税等決定取消請求事件▶平成9年09月25日東京高等裁判所[平成6(行コ)69]
4 スポーツ競技を収録したビデオテープ・フィルム又はテレビの生放送のための影像の「映画の著作物」該当性
(一) 著作権法2条3項は、映画の著作物について、「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むもの」としており、いわゆる劇場用映画以外のもので、映画の著作物に当たるというためには、第一に、内容的に著作物の通有性である知的創作性を備えていることを要し、第二に、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されていることを要し、第三に、物に固定されていることを要するというべきである。
そして、ビデオテープ・フィルムはもちろん、生放送のための影像も、それが影像という手法による表現であることは明らかであり、第二の要件を満たしているということができるから、以下、第一及び第三の要件を満たしているか否かについて検討する。
(二) まず、本件におけるスポーツ競技の影像が知的創作性を備えているか否かについて検討する。
一般に、カメラワーク等を全く用いることなく、事実経過のみを撮影したような影像、例えば、防犯ビデオや河川の増水量を記録するためのいわゆるインダストリアル・テレビのようにカメラを備えつけて、何の工夫もなく、淡々と事実のみが記録されたようなものは、単なる録画物にすぎず、その影像が知的創作性を備えているとはいえないところである。しかしながら、本件におけるようなテレビ放映用のスポーツイベントの競技内容の影像は、競技そのものを漫然と事実経過として撮影したものではなく、スポーツ競技の影像を効果的に表現するために、カメラワークの工夫、モンタージュあるいはカット等の手法、フィルム編集等の何らかの知的な活動が行われ、創作性がそこに加味されているということができるから、本件におけるスポーツ競技の影像は第一の要件を満たしているということができる。
(三) 次に、固定性の要件についてみるに、ビデオテープ・フィルムについては、固定性の要件を満たすことは明らかであり、また、テレビの生放送についても、その影像が生中継と同時に録画されているような場合には、固定性の要件を満たし、著作物性を有するというべきである。すなわち、一般に著作物とは思想又は感情を創作的に表現した無体物をいうものである(著作権法2条1項1号)ところ、生中継の影像が録画されているような場合には、録画された物自体ではなく、創作的な表現である影像それ自体が固定されることによって著作物となると解するのが著作権法全体の趣旨や同法2条3項の文言にも合致するというべきであり、この理は、生中継の影像が生中継と同時に録画されるいわゆる同時固定による場合であっても同様であると解すべきである(なお、固定性の要件については、米国においても同様に解されており、創作行為と同時に収録される場合には、この要件は充足され、創作と同時に著作権法による保護が与えられるものとされている。米国連邦著作権法101条等参照。)。
そして、本件については、前記認定のとおり、衛星生中継による影像の提供とビデオテープ・フィルムの提供とが選択的な方法とされている場合が多く、また、(証拠)によれば、いわゆるホスト・ブロードキャスターが国際通信衛星を利用して生の影像信号の送信をする場合においては、万一の衛星放送回線の事故等に備えて、ホスト・ブロードキャスターとしては送信と同時にビデオテープ等に収録しているのが常態であると認められるから、本件における生放送のための影像も固定性の要件が満たされているというべきである。
(四) 以上のとおりであるから、本件におけるスポーツ競技を収録したビデオテープ・フィルム又は生放送のための影像は、いずれも「映画の著作物」に該当するということができる。
5 いわゆる放映権料の著作権使用料該当性
そこで、原告が放映権料として支払った金員が、右映画の著作物の使用の対価として支払われたものであるか否かについて検討する。
(一) まず、原告との契約の相手方である本件外国法人が、その著作物の使用に関して許諾を与え得る権利を有しているか否かについて検討する。
前記認定のとおり、支払順号4の支払については、契約の相手方であるANIが基礎作品であるビデオテープ・フィルムの著作権を有しており、ANIが原告に対し、この基礎作品を使用して二次著作物であるテレビ・プログラムを製作する翻案権の許諾をするものであることは、契約書において明記されており、その対価として支払われた金員が著作権の使用料であることは明らかである。
また、前記認定のとおり、支払順号42ないし45及び48の支払については、その根拠となる契約(標準約款を含む。)において、ABC株式会社の著作権を表示する旨の規定があり、契約の相手方であるABCスポーツ社が著作物の使用に関して許諾を与え得る権限を有していることは明らかである。
その余の契約においては、契約書上著作権について明記した文言はないところ、ホスト・ブロードキャスター等の放送事業者が、その製作したビデオテープ・フィルム及び生放送用の影像(国際影像)についての第一次的な著作権の帰属者であることは明らかであるから、本件外国法人が、その著作物の使用に関して許諾を与え得る権利を有しているかどうかが問題となる。
ところで、著作権は、当然にその全部又は一部を譲渡することができるのであり、ビデオテープ・フィルム及び国際影像の著作権は、第一次的にはその原製作者であるホスト・ブロードキャスター等の放送事業者に帰属するとしても、これが、各種スポーツイベントの主催団体等である本件外国法人に事前又は事後に譲渡されていることが考えられる。
主催団体とホスト・ブロードキャスター間の右の点に関する契約関係は必ずしも明らかではないが、前記認定のとおり、スポーツイベントの主催団体は、当該競技を誰に放映させるか、その放映の態様、条件等について絶対的な許諾の権限を有しており、ホスト・ブロードキャスターを指名して、国際影像を製作させるのが通常であり、その国際影像の配信を受けて放映することの許諾に関しては、専ら主催団体及びその代理店等と交渉されていること、原告と本件外国法人との契約においては、前記認定のとおり、主催団体等である本件外国法人がビデオテープ・フィルムを送付する義務、あるいは、生中継のための影像信号の受信に関し最大限の協力を行う等何らかの義務を負っており、前記2(一)のUSGAとの各契約においては、USGAが影像信号又はビデオテープを原告に供給できないときは、契約金全額を原告に返還する義務を負うことが明文で規定されていること、LPGAのトーナメント・スポンサーズ・マニュアルのブロードキャスティングコントラクツの項においては、テレビ、ラジオ放送に関するすべての権利はLPGAに帰属するものとされており、さらに、スポンサーは、LPGA主催の競技が放送された場合には、当該放送を収録したテープのコピーをLPGAに提出することに同意することとされており、マツダ・ジャパンクラシックに関するLPGAと株式会社スポニチセンターとの契約においては、「テレビ、ラジオ放送並びに映画作成、展示のすべての権利及びトーナメントのすべてのその他の付随的権利はLPGAの所有物であり、LPGAが留保する。株式会社スポニチセンターは、LPGAが米国内又は日本以外の他の場所でトーナメントを放送するのに使用するため、日本における各トーナメント放送のビデオテープを無償でLPGAに提供することに同意する。」旨の規定が設けられていること、放送関係者においては、主催団体は、国際影像の製作をホスト・ブロードキャスターに委託し、ホスト・ブロードキャスターが製作した国際影像に関する権利一切は、主催団体に帰属するものと認識されており、原告白身も、そのように認識していること(原告代表者本人尋問の結果)等に照らせば、第一次的には、ホスト・ブロードキャスター等の放送事業者に帰属するビデオテープ・フィルム及び国際影像の著作権の全部又は一部、少なくとも、その著作物を用いて、その内容である影像を国外において放映することを許諾できる権利が、主催団体に移転しているものと推認することができ、また、原告の本件各金員の支払もそのような権利が主催団体に帰属するとの認識の下になされていることが認められる。
(二) 原告は、放映権とは、各種スポーツイベントの競技会場に自ら立ち入って当該競技を撮影してテレビ放映できる権利であり、競技の影像の使用を本来の目的とするものではないから、放映権料を著作権の使用の対価とみることはできない旨主張する。
なるほど、放映権料には、競技の撮影の態様によっては、原告の主張するような競技会場へ立ち入りの対価としての部分を含む場合もあり得るものと考えられる。
しかしながら、ホスト・ブロードキャスターが、代表して競技会場において国際影像の撮影を行う本件のような場合においては、放映権料のうちのそのような競技会場への立ち入りの対価として性質は、ホスト・ブロードキャスターの製作した影像の取得の対価へとその本質的な内容が変容しているものというべきである。すなわち、少なくとも、国際影像等が収録されたビデオテープ等の提供を受けてこれを日本国内でテレビ放映するような場合においては、原告あるいは原告から放映権の譲渡を受けた日本国内の放送事業者が協議会場内へ立ち入ることは通常考え難く、放映権料が専ら競技会場への立ち入りの対価として支払われているとは考えられないというべきである。
また、影像信号の送受信による影像の取得をする場合においても、影像信号の送受信という方法は、ビデオテープ等の提供を受けるのと同様、影像の取得手段の一つにすぎず(ビデオテープ等の提供と国際通信衛星を利用した影像信号の送受信を選択できる契約があり、それらの契約においては、ビデオテーブの提供によると影像信号の送受信とによるとで特にその対価が異なるようなことがないことは、前記認定のとおりである。)、その本賢とするところは、国際影像の取得という点にあるとみることができる。そして、そのような場合においては、日本国内におけるテレビ放映は、専らホスト・ブロードキャスターの製作した影像を取得し、これを使用してテレビ放映することを中心として行われているのであって、放映権料は、右影像を取得して放映する対価、すなわち、単なるカメラワーク等による創作性に対する対価のみならず、放映の許諾の対価を実質的に含んで製作されている映画の著作物の使用許諾の対価として支払われているとみることができるというべきである。
もとより、日本国内におけるテレビ放映においては、国際影像がそのまま放映されるわけではなく、日本語のアナウンスや日本向けの独自の影像が追加されることが多く、そのために、競技会場内に日本国内の放送事業者等が立ち入ることもあるが、そうした立ち入りが行われない場合もあることは前記認定のとおりであり、また、独自の影像等の製作費自体は、別途ホスト・ブロードキャスター等に支払われ、あるいは、日本国内の放送事業者が負担するなどするものであり、放映権料には含まれていないことに照らしても、ホスト・ブロードキャスターが代表して国際影像を製作する本件のような場合においては、そうした立ち入りのための権限の取得自体は、放映権の取得にとってもはや本質的な部分ではないというべきである。
なお、原告は、放映権料には、影像の使用料のほかに、日本国内向けの番組にするための独自の影像を製作し、国際影像を自由に編集することや、日本語のアナウンスを付けることの許諾料も含まれているところ、右許諾料は著作権等の使用の対価ではない旨主張するが、そうした許諾は、ホスト・ブロードキャスター製作の影像の使用によるテレビ放映の許諾という契約目的に付随するものであり、その対価の支払も一体のものとしてなされているから、放映権料全体が著作権の使用許諾の対価であるということができる。
(三) また、原告は、放映権料を著作権等の使用料と解する根拠は曖昧であり、そのような曖昧な根拠のもとに課税処分を行うことは、租税法律主義に反する旨主張する。確かに、租税法律主義の趣旨に照らせば、課税根拠を定める法令が、その文言上一義的明確に定められていることが望ましく、この点で、所得税法が、本件事案のような場合を具体的に想定して規定していないため、やや明確性を欠くきらいがないではない。しかしながら、およそ法律というものは、現実に生起するあらゆる事案について二義を許さない程度に明確に定めることが不可能な場合もあり、租税法の分野においても、解釈により適用の不明確な部分を補充する必要が生じる事態は避けがたいというべきであるところ、本件事案に関する所得税法の適用に当たっては、前示のような解釈をとることが最も合理的であり、これをもって拡張解釈ともいえない以上、原告の右主張は採用できないといわざるを得ない。
(四) 以上のとおり、原告が本件外国法人に放映権料として支払った金員は、いずれも、映画の著作権の使用料として支払われたものということができる。
6 結語
以上のとおりであるから、原告が本件外国法人に支払った各金員は、所得税法161条7号ロの著作権の使用料ということができ、これを国内源泉所得に当たるとしてなされた被告の本件各処分は適法である。
[控訴審同旨]
三 著作物性について
1 映画の著作物であることについて
(一) 著作権法2条3項は、「『映画の著作物』には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含む」と規定しているが、この要件に当たるためには、(1)映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されているか、(2)物に固定されているか、(3)内容的に著作物といえるか(著作権法2条1項1号参照)が問題となる。
(二) 本件においては、主催団体からビデオテープの提供を受け、これにより日本でテレビ放映する権利の取得に係るものも、主催団体から影像の提供を受け、これにより日本でテレビ放映する権利の取得に係るものも、(1)の要件を満たすことは明らかである。
(三) (1)(2)の固定性の点については、主催団体からビデオテープの提供を受け、これにより日本でテレビ放映する権利の取得に係るものについては、固定性の要件を満たすことは明らかである。
(2) 主催団体から影像の提供を受け、これにより日本でテレビ放映する権利の取得に係るものについても、その影像が送信と同時に録画されている場合には、固定性の要件を満たすと認められる(なお、固定性の要件については、米国においても同様に解されており、創作行為と同時に収録される場合には、この要件は充足されると解されていると認められる(米国著作権法101条参照)。)。同時固定では足りない旨の控訴人の主張は採用できない。
本件においては、前記認定のとおり、衛星生中継による影像の提供とビデオテープ・フィルムの提供とが選択的な方法とされている場合が多く、また、(証拠)によれば、ホスト・ブロードキャスターは影像の送信と同時にビデオテープ等に収録しているのが通常であると認められるから、本件における生放送のための影像も固定性の要件を満たすと認められる。また、当審証人Aの証言によれば、競技場所の中継車等で、ホスト・ブロードキャスターから、ホスト・ブロードキャスターの編集した国際影像とともに、ホスト・ブロードキャスターの各カメラの撮影した影像を受け取り、それを受け取った控訴人側で取捨選択を行って日本に衛星生放送することがあることが認められるが、弁論の全趣旨によれば、右各カメラの撮影した影像についても、スローモーション再生等のためにホスト・ブロードキャスターにおいて同時固定しているものと認められる。この認定に反する(証拠)の記載の一部は、採用できない。
(四) (3)の知的創作性の要件については、本件におけるようなテレビ放映用のスポーツイベントの競技内容の影像は、競技そのものを漫然と撮影したものではなく、スポーツ競技の影像を効果的に表現するために、カメラワークの工夫、モンタージュやカット等の手法、フィルム編集等の何らかの知的な活動が行われ、創作性がそこに加味されているということができるから((証拠)によれば、1983年インディ500においても、右に述べたカメラワークの工夫等が行われていることが認められる。)、本件における国際影像は知的創作性の要件を満たすと認められ、この点は、ホスト・ブロードキャスターの各カメラが撮影した影像を受け取る場合であっても、カメラワーク等の工夫があることに変わりはないから、同様と認められる。
控訴人は、国際影像やホスト・ブロードキャスターの各カメラが撮影した影像は素材にすぎない旨主張するが、控訴人側が取捨選択するとの観点からは素材であっても、右説示のとおり、スポーツ番組を制作するために撮影された国際影像等自体も、スポーツ競技の影像を効果的に表現するためにカメラワークの工夫等が行われ、知的創作性を有するものであり、控訴人のこの点の主張は採用できない。
さらに、控訴人は、衛星生中継により日本で放映された当該スポーツイベント番組の制作・著作者は、日本の放送事業者であり、放映画面にもそのように表示される旨主張するが、右放映画面における制作・著作者の表示と国際影像等が知的創作性を有するか否かとは直接関係しないから、控訴人の右主張から、国際影像等が知的創作性を有しないと解することはできない。
(五) 米国著作権法上も、映画その他視聴覚著作物が保護される著作物の一つとして掲記されており(米国著作権法102条(a)(6))、ビデオテープ・フィルムの提供による場合も、影像の提供による場合も、同条の定める著作権保護のための基準である固定性及び知的創作性の要件を満たすものと認められる。
(六) 以上によれば、本件におけるスポーツ競技を収録したビデオテープ及び生放送のための影像は、いずれも「映画の著作物」に当たり、放映権料としての支払のうち右影像等を使用して日本でテレビ放送することに対応する部分は、所得税法161条7号ロに規定する著作権等の使用料及び日米租税条約14条(3)(a)に定める著作権等の使用の対価に該当すると解すべきである。
そして、このように解することが租税法律主義に反するとも認められない。
2 改作の許諾
また、日本向けの番組にするために、主催団体の提供する影像やビデオテープに、独自影像や日本語のアナウンス、解説等を加えて日本でテレビ放送することの許諾は、改作利用権の行使である改作利用の許諾(著作権法27条)及びその放送の許諾(同法28条)であると認められ(なお、この点は米国著作権法上も同様であると解される(米国著作権法106条(2))。)、本件におけるスポーツ競技を収録したビデオテープ及び生放送のための影像がいずれも「映画の著作物」に当たることは前記説示のとおりであるから、放映権料としての支払のうち右改作利用の許諾及びその放送の許諾に対応する部分も、所得税法161条7号ロに規定する著作権等の使用料及び日米租税条約14条(3)(a)に定める著作権等の使用の対価に該当すると解すべきである。
3 主催団体の契約権限について
なお、控訴人は、主催団体が競技の映画の著作権者と認定することにおいて、書面による契約によらないことの問題を主張する。
しかしながら、(証拠等)によれば、LPGAのトーナメント・スポンサーズ・マニュアルの「ブロードキャステイングコントラクツ」の項においては、テレビ、ラジオ放送に関するすべての権利はLPGAに帰属するものとされ、更に、スポンサーは、LPGA主催の競技が放送された場合には、当該放送を収録したテープのコピーをLPGAに提出することに同意することとされており、マツダ・ジャパン・クラシックに関するLPGAとスポニチサービスセンター(スポニチサービスセンターは、LPGAからマツダ・ジャパン・クラシックの開催権を取得し、日本でのテレビ放送権を毎日放送に譲渡したものである。)との契約においては、「テレビ及びラジオ放送並びに映画作成、展示のすべての権利、及び、トーナメントのすべてのその他の付随的権利は、LPGAの所有物であり、LPGAが留保する。・・・SSC(スポニチサービスセンター)は、LPGAが米国内又は日本以外の他の場所でトーナメントを放送するのに使用するため、日本に於ける各トーナメント放送の、1インチ又は2インチビデオテープを、無償でLPGAに提供することに同意する。」旨の規定が設けられていることが認められる。右認定の事実によれば、第一次的にホスト・ブロードキャスターに帰属するビデオテープ・フィルム及び国際影像の著作権の全部又は一部、少なくともその著作物を用いてその内容である影像を国外において放映することを許諾することができる権利が、書面による契約により主催団体に移転しているものと認めることができる。
そして、(証拠)によれば、放送関係者の間においては、主催団体は国際影像の製作をホスト・ブロードキャスターに委託するが、ホスト・ブロードキャスターが製作した国際影像に関する権利一切は主催団体に帰属するものと認識されており、本件における契約についても、主催団体が国際影像を使用して各国で放映することを許諾する契約を結ぶことにつき、ホスト・ブロードキャスター側から異議が出された等の事情もうかがわれないことに照らせば、右認定のLPGAとスポニチサービスセンター間の契約の場合と同様に、書面による契約が本件におけるその余の契約においても締結されていると推認すべきである。
控訴人は、乙第三七号証の一ないし五は、原供述者の署名押印もなく、内容も、自ら経験していない事項を契約書など検討しないまま供述するものであり、信用性に欠けるものである旨主張するが、乙第三七号証の一ないし五が原供述者の署名押印がないことだけから信用できないものと認めることはできず、しかも、乙第三七号証の一ないし五に記載された内容は、乙第三一号証の一等により認められる主催団体とホスト・ブロードキャスターと同視すべき者との契約内容によっても裏付けられているから、この点の控訴人の主張は採用できない。
四 著作物の使用料と立入りの対価等が含まれている場合の処理
1 主催団体からビデオテープの提供を受け、これにより日本でテレビ放映する権利の取得に係る類型のものについては、競技場に立ち入るなどして独自影像を撮影した等の事情もうかがわれないから、その許諾料全部が所得税法161条7号ロに規定する著作権等の使用料及び日米租税条約14条(3)(a)に定める著作権等の使用の対価に該当すると解すべきである。
(以下略)