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著作権判例セレクション

【コンテンツ契約紛争事例】「音源持ち出しの禁止」条項がある退職合意書の解釈が争点となった事例
▶令和5726日東京地方裁判所[令和3()17298]▶令和6130日知的財産高等裁判所[令和5()10089]
() 本件は、原告が、原告の元従業員で音響効果の業務を担当していた被告との間で、被告の退職の際に原告が保有していた音源を持ち出さない旨を合意したにもかかわらず、被告がこれを持ち出して退職後にこれを音響効果の仕事で使用したことが債務不履行に当たり、また、持ち出した音源の中には、原告がレコード製作者の権利を有しているものがあり、被告が音響効果業務に当たり複製して使用したことが複製権(著作権法96条)を侵害するとして、債務不履行又は不法行為に基づき所定の金員を請求した事案である。

1 本件合意により持ち出し等が禁止されたものの内容(争点1-1)について
【⑴ 本件合意書の9条1項には、『甲が著作権を有する音源又は著作権使用許諾を受けた音源を使用し、持ち出しては』ならないとし、同条4項には、これに違反して『甲が著作権を保有しまたは著作権使用許諾を受けた音源を使用した場合』について、『使用した1音源あたり金50万円』を損害賠償として支払う旨が定められているところ、本件合意書には、著作権等の文言に関連して、前記のとおり、3条、7条1項②、8条5項にも定めがある。このうち8条5項は、著作権法27条及び28条を挙げて、委託業務の対価に含まれる著作権譲渡の範囲を規定し、その有償譲渡に伴う著作者人格権不行使についても規定しており、著作権法の条文を明確にして、譲渡に伴う著作権処理についての定めがされている。そうすると、本件合意書における著作権等の意味については、これら条項を通じ、文字どおり著作権法にいう著作権等をいうものと解するのが自然である。
そして、本件合意に当たり、B’と一審被告とは、平成29年9月11日及び同年10月30日に、それぞれ1時間半ほどの面談を2度にわたり行い、本件合意書は、当初の面談時の合意書案とは異なるものとして2度目の面談で提示され、そこにおいて各条項を読み上げた上で、一審原告と一審被告との間で合意に至った内容について、記載されたものである。
そうすると、本件合意書の9条1項に係る合意は、その文言のとおり、一審原告が著作権を有する音源又は著作権使用許諾を受けた音源についてされたと解されるものであり、これを、著作権の有無にかかわらず、一審原告が保有する音源の全てを指すものと解すべき明確な根拠は存しないというべきである。
しかも、『音源』とされるものには、例えばビンタの音など極めて短時間でオリジナリティーに乏しいものも含まれるとするところ、このことも勘案すると、本件合意書の9条4項に定められた同条1項の違反についての損害賠償額の予定である、期間の定めもなく侵害の態様や回数を問わずに、使用した1音源当たり50万円とすることについては、相当に広範かつ高額の定めであるということができる。さらに、同項ただし書には、当該違反行為により一審原告にさらに損害が生じた場合には、その損害についても賠償する旨の定めも置かれているところであるから、契約書等における明確な根拠もなく、損害賠償額の予定等が定められた債務の内容につき、契約の文言とは異なる解釈をすることはできないというべきである。
そして、一審原告の音響効果業務で使用される環境音や効果音等の音源データは、一審原告の社員が独自に制作・収集したり、音源を制作した会社等から買い取ったり期限を定めて使用許諾を受けたりといった方法により収集されたものであることを踏まえると、本件合意書9条1項にいう『著作権を有する音源又は著作権使用許諾を受けた音源』とは、①一審原告社内の録音ブースで音を制作したり、屋外や屋内で収音マイクを使用して音を集めたりするなどして制作され、一審原告が著作権を有するもの、②音源について著作権を有する会社又は個人から使用許諾を受け、半永久的あるいは一定期間の使用許諾を一審原告が得たものをいうと解される。
⑵ これに対し、一審原告は、本件合意書9条1項にいう『著作権を有する音源又は著作権使用許諾を受けた音源』については、著作権の有無にかかわらず、一審原告が保有する全ての音源を指すものであると主張する。
しかし、一審被告はこれを否定しているところであり、B’も、本件合意書締結に向けての2度の面談において、一審原告の上記立場を説明したとはするものの、これについて一審被告が明確に同意した旨を証言等するものではない。また、一審被告が退職に当たり一審原告のもとにおいて使用した音源データの全てを返却したとすることについて、仮に B’と一審被告との間で、一審原告が著作権を保有し、又は著作権使用許諾を受けた音源に限らず、一審原告在職中に一審被告が取得した音源のデータの全てを返却する旨の合意ができた事実に基づくものとしても、これは本件合意書3条に基づく平成29年12月末日と8条の業務終了日のいずれか早い方までの音源のデータの返却についてのものであり、これにより直ちに、本件合意書9条4項の、その使用につき損害賠償義務の発生する音源の対象についても、上記同旨の合意ができたものとすることはできない。
さらに、一審原告の主張するように、本件合意書9条についても、その著作権との文言にかかわらず、一審原告の保有する全ての音源を指すものとして当事者間に合意が成立したのであれば、その旨を本件合意書に加筆するか訂正をすればよく、この点、一審原告においても、音源について著作権法上の著作権が成立するか分からないものが含まれていることを明確に認識していたのであるから、なおさら、そのようにするのが自然であるということができる。現に、本件合意書の作成日付けについては、手書きで訂正がされ、その上に各当事者の押印がされているところである。このような加筆訂正等がされていないことは、そのような合意が存しないことをうかがわせるものである。
そもそも一審原告においても、本件訴え提起の段階においては、本件合意9条4項の、一審原告が『著作権を保有しまたは著作権使用許諾を受けた音源』とは、①一審原告がレコード製作者の権利を有するもの、②一審原告が著作権を有するもの、③一審原告が音の使用につき権利を有する者から使用の許諾を受けたもの(当該音が著作物であればその著作権を有する者及びレコード製作者の権利を有する者から、効果音等著作物性が明確でないものについてはレコード製作者の権利を有する者から許諾を受けるなどして使用が可能となったもの)、の『①から③を指していることは容易に理解できる』(訴状2ないし4頁)と主張していたところであり、一審原告が保有する全ての音源を指すなどとは主張していなかったものである。
したがって、一審原告の上記主張は採用することができない。】
2 被告が原告の音源を持ち出して使用したか(争点1-2)について
(1)「朝の雀6mmテープ」について
被告が、原告が保有していた「朝の雀6mmテープ」について、自身の保有する記録媒体にこれを複製し、その後、別紙主張整理表作品1記載4の場面の音響に使用するために複製したことについては当事者間に争いがない。
原告が被告のこの行為について本件合意に違反する旨主張するのに対し、被告は、「朝の雀6mmテープ」については、被告と原告の間で、被告が原告在籍時から音響を担当していたアニメ「サザエさん」に使用することを目的として、被告が原告の音源を被告が保有する記録媒体に複製し、これを音響効果に利用することが許諾されていて、「朝の雀6mmテープ」を被告が保有する媒体に複製することは本件合意で禁止される「持ち出し」には当たらないと主張する。
しかし、仮に被告が主張するとおり、原告が被告に対し、アニメ「サザエさん」に使用するために「朝の雀6mmテープ」を使用することを許諾したとしても、その許諾は、原告からの退職後に被告がアニメ「サザエさん」を引き続き担当することについて、当初はこれに難色を示した原告も同作品のクライアントが同作品に関する作業を被告に委託すると決定したために最終的にこれを了承したという状況の下で、アニメ「サザエさん」に使用する限度で「朝の雀6mmテープ」を使用することを許諾したと解するのが合理的である。その許諾が、同音源を、アニメ「サザエさん」に限らず、自由に使用して良いという趣旨であるとするのは、上記状況に照らしても不合理である。被告が主張する許諾は、仮にあったとしても、本件合意所定の「持ち出し」や「音源」の意義を一般的に修正する合意などではなく、上記のとおり、「朝の雀6mmテープ」をアニメ「サザエさん」に使用する場合には被告が本件合意で定められた債務不履行責任を問わないという限度で本件合意の内容を修正する趣旨のものと解される。
被告は、「朝の雀6mmテープ」をアニメ「サザエさん」とは異なる作品である別紙主張整理表作品1記載4の場面の音響に使用した。これは、本件合意書9条1項で禁止された「持ち出し」であり、同4項所定の「音源」の「使用」に当たると認められ、本件合意に違反する。
(2)「朝の雀6mmテープ」以外の音源について
ア 被告が別紙主張整理表記載の場面のうち、別紙主張整理表作品1記載4以外の場面(以下「本件係争場面」という。)で使用された音源について、被告が原告から持ち出した音源を使用したことを直接裏付ける証拠はない。被告は、原告を退職することが決まった後に、独自に音源を収集し、本件係争場面にはそのように収集した音源を利用したと主張しており、被告は、被告本人尋問でもこれに沿う供述をする。
() 別紙主張整理表作品1記載1、2の場面で使用された音について、被告は、原告が指摘する「拳銃コミック【6mm】テープ」の音と同一であることについては積極的に争わないものの、同場面では、被告が別途入手した「サウン道 アニメ・SF・恐竜編 37 トラック」の音を使用したと主張している。
同一の音について、異なる音源において複製されて流通しているとしても矛盾はないところ、別紙主張整理表作品1記載1、2の場面の音と、被告が提出した「サウン道 アニメ・SF・恐竜編 37 トラック」の音は、「サウン道 アニメ・SF・恐竜編 37 トラック」の音が上記場面に使用されたとしても矛盾がない程度に似ていると認められる。
そして「サウン道 アニメ・SF・恐竜編 37 トラック」の音が上記場面で使われていないことに関する証拠もない。
【加えて、『拳銃コミック6mmテープ』について、一審原告がレコード製作者の権利を有する旨の主張については後記5のとおりであるところ、その他にも、一審原告は、関連する著作権の譲渡を受けた旨を主張し、証人A’は使用許諾を受けたものである旨を証言するところ、これらいずれについてもその裏付けとなる証拠は提出されておらず、一審原告において、その音源についての著作権ないし使用許諾を受けたものとして本件合意書9条1項に該当する旨についての立証もないというべきである。】
() 別紙主張整理表作品1記載7、同作品2記載10、13の場面で使用した音について、被告は、原告が指摘する「Humax Pictures HP-001」の音と同一であることについては積極的に争わないものの、同場面では、被告が別途入手した「HAC SOUND LIBRARY」の音を使用したと主張している。
別紙主張整理表作品1記載7、同作品2記載10、13の場面の音と、被告が提出した「HAC SOUND LIBRARY」の音は、「HAC SOUND LIBRARY」の音が上記場面に使用されたとしても矛盾がない程度に似ていると認められる。「HAC SOUND LIBRARY」の音が上記場面で使われていないことに関する証拠もない。なお、原告が使用されたと主張する「Humax Pictures HP-001」は、音響効果の業者を対象に販売されているもので、原告もCDを購入して音源を取得、保有していたものであって、少なくとも音響効果の業界では一般に出回っていた音源であることが【うかがえるほか、『HAC SOUND LIBRARY』自体も相当に出回っている音源であることが認められ】、原告が同音源を独占的に管理していたという事情はない。
() 別紙主張整理表作品3記載15、16の場面の音について、被告は、原告が指摘する「VIDEO HELPER NOISE&DRONES」の音と同一であることは積極的に争わないものの、被告は、同場面では、被告が別途入手した「noise generator DISC2 98 トラック」の音を使用したと主張している。
別紙主張整理表作品3記載15、16の場面の音と、被告が提出した「noise generator DISC2 98 トラック」の音は、「noise generator DISC298 トラック」の音が上記場面に使用されたとしても矛盾がない程度に似ていると認められる。同音源が同場面で使われていないことに関する証拠もない。
【加えて、『noise generator DISC2』自体、容易に入手可能であることも認められる上に、仮に一審原告の主張するように、一審原告保有に係る『VIDEO HELPER NOISEDRONES』又は『noise generator DISC2』の音源が使用されたとしても、前記1⑴のとおりの本件合意9条4項の対象となる音源についての理解からすれば、同合意の対象となる音源であるものと直ちにはいえないから、本件合意に反する音源の使用についての立証がされたものとはいえないというべきである。】
() 別紙主張整理表作品1記載3、5、同作品2記載11、12、同作品3記載21の場面の音について、原告は、「FirstCom PE-501」の音が使用されたと主張する。もっとも、「FirstCom PE-501」は、音響効果の業者を対象に販売された音源であり、原告もCDを購入して音源を取得、保有していたものであって(弁論の全趣旨)、同音源は、少なくとも音響効果の業界では一般に出回っていた音源であることがうかがえる(なお、同音源は、令和4年6月の時点においてダウンロードサイトに違法にアップロードされていたことが認められる。
() 別紙主張整理表作品1記載6、8、同作品2記載9、14、同作品3記20 載17、19の場面の音について、原告は、「NASH STUDIO MN-634」の音が使用されたと主張し、同作品3記載18、20の場面の音について、原告は、「NASH STUDIO NSE-603」の音が使用されたと主張する。もっとも、「NASH STUDIO MN-634」及び「NASH STUDIO NSE-603」は【一般に販売されている効果音の音源であり】、誰でもこれらをダウンロードして購入することができ、いずれの音源についても原告が独占的に保有、管理していた音源であるといった事情はなく、音源を原告以外から何らかの方法で入手することが困難であると認めるに足りる証拠はない。
原告は、上記場面において使われた音と原告が主張する音源の音が同一であることなどが記載された有限会社日本音響研究所が作成した鑑定書を提出する。しかし、仮にこの記載が信用できるとしても、上記に述べた音源についての事情によれば、上記鑑定書の記載によって、被告が原告以外の者から同一の音の複製物を入手した可能性を否定できるものではない。
ウ 上記イによれば、被告が各作品に使用した音は、原告から持ち出す以外の入手方法があった。被告は、問題となる音の具体的な入手元の氏名、名称等を明らかにせず、また、原告からの退職後、原告が使用していたのと同じ音を複数使用していたなどの事情はある。しかし、被告は、原告に長年在籍して音源に関する情報等を多く有し、多くの関係者を知っていたとも推認でき、被告が各作品に使用した音について、上記のような知識、人脈等に基づき原告から持ち出さずとも入手することができたといえる状況があったと認められる。他方、被告が原告からこれらを持ち出したことをうかがわせる客観的な証拠はない。これらによれば、「朝の雀6mmテープ」以外の音については、【一審被告が本件合意書9条3項に違反して、一審原告が著作権を保有しまたは著作権使用許諾を受けた音源を使用した】と認めるには足りない。
3 本件合意が公序良俗違反(暴利行為)により無効であるか(争点1-3)について
前記1、2のとおり、本件では、被告が別紙主張整理表作品1記載4の場面で「朝の雀6mmテープ」を使用したことは、本件合意の違反となるが、その他の音の使用について、被告が本件合意に反したことを認めるに足りない。
ここで、本件合意書では、被告が本件合意に反した場合の1音源当たりの支払うべき金額が50万円であると定められている。これは本件合意に反して音源を持ち出すという違反行為があった場合の定めであるところ、本件合意書で、同一音源を複数回使用した場合において同額が加算されていくなど、被告の負担が過度に大きくなることが定められているものでは【なく、前記のとおり、その使用が債務不履行に当たるものとして損害賠償額の予定がされた音源についても、一審原告において著作権を有するか使用許諾を受けている音源とされている】。なお、「朝の雀6mmテープ」については、原告がレコード製作者の権利を有していることに当事者間で争いはなく、被告が原告の許諾を受けることなくこれを使用する場合には、少なくとも原告にライセンス料相当額の損害が生じるものであった。
これらによれば、「朝の雀6mmテープ」の持ち出し、使用に対して本件合意書9条4項を適用することについて、暴利であり、無効とすべき事情があると認めるに足りない。
4 よって、本件合意の債務不履行に係る原告の請求は、50万円を請求する限度で理由がある。
5 原告が「拳銃コミック6mmテープ」についてレコード製作者の権利を有しているか(争点2-1)について
原告代表取締役C(以下「C」という。)作成の陳述書には、「拳銃コミック6mmテープ」について、同音源はCの父が経営していた会社が昭和40年代後半ころに作成した旨の記載がある。しかし、同社が同音源を作成したことについても、また、同社が取得したという権利が原告に移転したことについても、これを裏付けたり推測させたりする客観的な証拠はない。原告が現在「拳銃コミック6mmテープ」についてのレコード製作者の権利を有していると認めるに足りない。
6 損害(争点2-2)について
原告が「朝の雀6mmテープ」についてレコード製作者の権利を有していることは当事者間に争いがない。被告が別紙主張整理表作品1記載4の場面で音響効果のために「朝の雀6mmテープ」を複製して使用したことは、原告が有するレコード製作者の権利(複製権。著作権法96条)を侵害する不法行為であると認められる。もっとも、これによって原告に生じた損害は、前記4で認められる額を上回ることを認めるに足りる証拠はない。
第4 結論
よって、原告の請求は、50万円及びこれに対する遅延損害金を請求する限度で理由があり、その余の請求には理由がないから、主文のとおり判決する。

[控訴審]
1 当裁判所も、一審原告の請求は、原判決主文第1項掲記の限度で認容すべきであり、その余は棄却すべきものと判断する。その理由は、当審における当事者の主張も踏まえ、次のとおり補正し、後記2、3のとおり当審における当事者の主張に対する判断を付加するほかは、原判決のとおりであるから、これを引用する。
()
2 当審における一審原告の主張に対する判断
⑴ 一審原告は、前記〔一審原告の主張〕⑴のとおり、一審被告による一審原告の音源の持出しがあり、これらにつき本件係争場面における一審被告の使用を認定すべきである旨を主張する。
しかし、本件係争場面における使用が問題となった音源は、証拠保全の検証の現場において、いずれも一審被告のもとから発見されず、証拠保全において検証の対象とされた「●●●●●●●●●●●●●」のセッションデータも、一審原告の主張するとおり、放送回数ごとに整理された状態で置かれたもので、音源の種類ごとに編集されたものではなく、補正の上で引用した原判決第2の2⑺のとおり、「●●●●●●●●●●●●●」の第3作その他の作品の音源として使用された事実も認められない。一審原告の主張するとおり、「●●●●●●●●●」、「●●●●●●●●●●●」及び「●●●●●●●●●」のセッションデータが一審被告から一審原告代理人等に提出等されていれば、これらに使用された音源の出所はより明らかになったとは解されるものの、これらで使用されたとする音源が、検証の対象とされた一審被告が作業場所で使用する音ネタ帳等から発見されることもなく、検証の現場で発見された音ネタ帳やセッションデータの音源について、本件合意に反する使用の事実が立証されたものでもない。これらの事実に加え、補正の上で 引用した原判決第3の2⑵によれば、本件合意書9条4項の対象となる音源の使用の事実は認められない。
したがって、一審原告の上記主張は採用することができない。
⑵ 一審原告は、前記〔一審原告の主張〕⑵のとおり、本件係争場面で使用された音源は本件合意書9条1項で使用が禁止された音源である旨を主張する。
しかし、補正の上で引用した原判決第3の2⑵のとおり、一審被告が使用したとする音源は、一審原告の主張に反し、いずれも一般に出回っていたり購入が可能なものであって、これらを使用したとする一審被告の供述を一概に排斥できるものでもないから、本件係争場面における本件合意に反する音源の使用の事実の立証がされたものとは認められないというべきである。
したがって、一審原告の上記主張は採用することができない。
3 当審における一審被告の主張に対する判断
⑴ 一審被告は、前記〔一審被告の主張〕⑴のとおり、本件合意書9条1項の対象となる音源につき、一審原告が著作権を有する音源又は著作権使用許諾を受けた音源である旨を主張する。
この点については、前記1⑴のとおり、本件合意書9条1項の対象となる音源につき、一審原告が著作権を有する音源又は著作権使用許諾を受けた音源であるところ、その具体的内容については、補正の上で引用した原判決第3の1⑴①及び②のとおりであると認められるところであり、本件係争場面における本件合意に反する使用の事実が認められない以上、一審被告の上記主張については、それ以上の判断を要しない。
⑵ 一審被告は、前記〔一審被告の主張〕⑵のとおり、「朝の雀6mmテープ」の使用について、一審原告から黙示の承諾を受けた音源である旨を主張する。
しかし、補正の上で引用した原判決第2の2⑶及び第3の2⑴のとおり、「朝の雀6mmテープ」に関しては、本件合意書9条1項で禁止の対象となる持ち出しに該当し、これについて、補正の上で引用した原判決第3の3,4及び6のとおり、その違反に基づき一審原告に対し50万円の損害賠償を支払うべきこととなる。
したがって、一審被告の上記主張は採用することができない。
4 結論
以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、一審原告の請求は、原判決主文第1項掲記の限度で認容すべきであり、その余は棄却すべきものである。