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著作権判例セレクション

【写真著作物】投稿記事(ダイエットに関する文書及び写真)の著作物性を認定した事例

令和31125日東京地方裁判所[令和3()12091]▶令和5425日知的財産高等裁判所[令和3()10103]
1 争点1(権利侵害が明らかであるか)について
(1) 著作物性
前記前提事実のとおり,本件各投稿は,全て本件アカウントを利用してなされたものであり,事案に照らし,本件各投稿による各著作権侵害のいずれかが認められれば,他の要件を充足する限り,本件発信者情報の開示が認められる関係にあるところ,原告もこれらを選択的に主張していると解される。そこで,事案に鑑み,まず本件投稿7について判断する。
証拠によれば,原告投稿記事2を構成する文章は,原告が,ダイエットによる原告の具体的な体重の変化,それに関する友人との会話,友人に対する感謝の気持ち等について,独自の文章構成や表現を用いて作成したものであると認められる。また,同証拠によれば,原告投稿記事2を構成する本件各写真は,原告が,デジタルカメラのセルフタイマー機能を用いて,上半身の衣服を脱いだ自分自身の腰から上の部分を自身の右側から撮影したものであり,撮影対象や構図等について独自の工夫がされたものであると認められる。そのため,原告投稿記事2を構成する文章及び本件各写真は,原告の思想又は感情を創作的に表現した著作物に当たるというべきである。
したがって,本件投稿7によって,原告投稿記事2を構成する文章及び本件各写真についての原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたと認められる。
(2) 引用(著作権法32条1項)該当性
著作権法32条1項によって公表された著作物を引用して利用することが許されるのは,その引用が,公正な慣行に合致し,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われる場合である。
【前記前提事実及び証拠によれば、本件投稿1ないし6は、「C」のユーザー名を登録する本件投稿者が、Yが大阪府の新型コロナ感染症の対策に批判する内容をツイッター上に投稿した原告投稿記事1のスクリーンショットの画像を表示させた上で、本件アカウントを利用して、Yによる原告投稿記事1を批判する一連のツイートであるところ、これに対して、本件投稿7は、本件投稿者が、ダイエットによる体重の変化等に関する文章と写真の構成からなる原告投稿記事2のスクリーンショットの画像を表示させた上で、「すまん(顔文字と絵文字)これを見てしまったからやわ〰(顔文字)、目が...目が〰(顔文字)」と投稿するものであると認められる(原判決別紙本件投稿記事7参照)。そうすると、本件投稿7は、原告投稿記事1に対する批評とは関係がなく、原告投稿記事2全体を引用しながら、同記事の写真に映し出されているYの体型をただ嘲笑するものであると認められ、こうした原告投稿記事2の引用は、引用の目的において正当性を見いだせないし、また、質的、量的にみても、正当な範囲を超えるものである。】
したがって,本件投稿7は適法な引用(著作権法32条1項)には当たらない。
(3) 小括
以上によれば,本件投稿7によって,原告投稿記事2を構成する文章及び本件各写真についての原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかであると認められる。

[控訴審同旨]
1 当裁判所も被控訴人の請求は理由があるものと判断する。
その理由は、以下のとおり補正し、後記2のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決に記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、5頁21行目の「原告」を除き、「原告」とあるのは全て「Y」と読み替える。)。(以下略)
2 当審における控訴人の補充主張について
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(2) 権利侵害の明白性について
控訴人は、前記のとおり、本件投稿7で引用されている原告投稿記事2の著作物性を争うが、原告投稿記事2は、Yが、ダイエットによる同人の体重の変化、それに関する友人との会話等についての文章と、デジタルカメラのセルフタイマー機能を用いて上半身の衣服を脱いだ自分の腰から上の部分を自身の右側から撮影したものから構成されるものであって、撮影対象や構図等について独自の工夫がされていることからすると、原告投稿記事2を構成する文章及び本件各写真は、Yの思想及び感情を創作的に表現した著作物に当たると認めるのが相当であることは、引用に係る原判決に記載のとおりである。
また、控訴人は、前記のとおり、原告投稿記事2を引用する本件投稿7は著作権法32条1項に規定する「引用」に当たるものであるから、著作権(公衆送信権)侵害に当たらない旨主張するが、本件投稿7が適法な引用に当たらないことは、引用に係る原判決(補正後のもの)に記載のとおりである。
以上によれば、本件投稿7によって原告投稿記事2を構成する文章及び本件各写真についての著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかであるといえる。