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著作権判例セレクション
【編集著作権の侵害性】運勢を記述した書籍の編集著作権の侵害性が争点となった事例
▶平成17年09月28日東京地方裁判所[平成16(ワ)4697]
(注) 本件は,原告が,被告らに対し,本件各書籍についての著作権及び編集著作権を原告が有するものであるところ,被告Bを著者,被告T易断総本家株式会社(「被告会社」)を発行所とする被告書籍の発行が,本件各書籍についての原告の著作権又は編集著作権を侵害するものであると主張して,著作権又は編集著作権(複製権・翻案権)に基づき,被告書籍の販売等の差止めを求め,不法行為に基づき,損害の賠償を求めた事案である。
1 争点(1)(本件各書籍の作成者)について
(略)
3 争点(4)(本件各書籍の著作物性ないし編集著作物該当性)について
(略)
4 争点(5)(被告らによる原告の著作権侵害行為の有無)について
(1) 上記1(3)ないし(7)及び2で検討したとおり,本件各書籍中の被告Bが作成したと認められる部分については,著作権法15条によって原告又はフォーチューンが著作者となるとは認められない。そして,本件各書籍中の被告Bが作成したと認められない部分については,本件各書籍の奥書に著者として表示されている原告が著作者であると認められ,これを覆すに足りる証拠はない。
また,本件各書籍中の被告Bが作成した各部分について,編集著作権が成立する余地があるとしても,当該各部分に対応する前記の原稿には,レイアウト等に関する指示も記載されているものがあり,これらの指示に関する記載も,筆跡などから被告Bによるものであると認められること,原告も本件各書籍の編集デザインの折衝を行ったのは被告Bであると認めていることからすれば,当該各部分について素材の選択及び配列を行ったのは,被告Bであると認められるから,被告Bが作成した各部分について,原告に編集著作権が帰属することはない。
さらに,本件各書籍中の各記事は,前記1(1)において認定したとおり,それぞれ分離して個別的に利用することも可能であるから,共同著作物には当たらず,いわゆる結合著作物に当たる。
さらに,前記3で検討したとおり,原告が作成した部分のうち,著作物性あるいは編集著作物性が認められない部分もある。
そうすると,本件各書籍のうち,原告が,原告の有する著作権又は編集著作権が侵害されたと主張する部分のうち,原告が著作権又は編集著作権を有すると認められる部分は,次のとおりである。
ア 本件書籍(1)
(ア) 毎日ごよみ(24ないし47頁)
(イ) 「一白水星」ないし「九紫火星」(55ないし153頁)
(ウ) 人相の見かた(154頁)
(エ) 手相の見かた(161ないし164頁)
イ 本件書籍(2)
(ア) 四神相応の図(15頁)
(イ) ラッキーカラー(27頁)
ウ 本件書籍(3)
2000年間の日本と日本人(211ないし219頁)
エ 本件書籍(4)
(ア) 「氣」とは何だろう?(2頁)
(イ) 運命の吉凶転機の盤(8頁)
(ウ) 「星座(せいざ)」及び「星座の呼び名」(27,28頁)
(エ) 星座一覧表(29頁)
オ 本件書籍(5)
(ア) 「気」とは何だろう?(2頁)
(イ) 運命の吉凶転機の図(7頁)
(ウ) ラッキーカラー(12頁)
(エ) 「星座(せいざ)」及び「星座の呼び名」(25,26頁)
(オ) 星座一覧表(27頁)
(カ) 毎日ごよみ(28ないし51頁)
(キ) 「一白水星」ないし「九紫火星」(64ないし225頁)
(ク) 人相の見かた(226頁)
(ケ) 手相の見かた(234,235頁)
(コ) 四神相応の図(236頁)
(2) 本件書籍(1)について
ア 毎日ごよみ(24ないし47頁)
原告は,本件書籍(1)の「毎日ごよみ」(24ないし47頁)においては,1か月を見開き2ページに収め,上段から「日」,「曜日」,「十干・十二支」,「九星」,「六輝」,「行事」,「旧暦」及び「十二直」を掲げて一覧形式としており,被告書籍の「日ごよみ・行事・お祭」(42ないし65頁)の素材の選択及び配列は本件書籍(1)と同一であって,赤ピンク色と黒色の2色を使用している点でも被告書籍は本件書籍(1)の模倣であるから,被告書籍は,本件書籍(1)についての編集著作権を侵害すると主張するので,以下判断する。
本件書籍(1)の「毎日ごよみ」(24ないし47頁)においては,平成11年1月から同年12月までの各日について,1か月を見開き2ページとして,上段から「日」,「曜日」,「十干・十二支」,「九星」,「六輝」,「行事」,「旧暦」及び「十二直」を掲げた一覧表が記載され,右側には「暦のミニ知識」と題するその月に関連した用語の解説並びに「夢占い」と題する夢の具体的な内容及びその分析が記載され,表の下側にはその月に関連する冠婚葬祭について記載され,右側のページの右端及び左側のページの左端には,各地の郷土芸能について記載されている。
被告書籍の「日ごよみ・行事・お祭」(42ないし65頁)においては,平成16年1月から同年12月までの各日について,1か月を見開き2ページとして,上段から「日」,「曜日」,「十干・十二支」,「九星」,「催事」,「陰暦」,「六輝」,「廿八宿」及び「十二直」を掲げた一覧表が記載され,右側にはその月の大半が属する期間の二十八宿及び暗剣殺の方位並びに東京におけるその月の1日,11日及び21日の日の出及び日の入りの時刻が記載されている。
両書籍を対比すると,本件書籍(1)の「毎日ごよみ」(24ないし47頁)は,平成11年1月から同年12月までの各日についての記載であるのに対し,被告書籍の「日ごよみ・行事・お祭」(42ないし65頁)は,平成16年1月から同年12月までの各日についての記載であって,素材の選択に同一性又は類似性は全く認められない。また,一覧表に「日」,「曜日」,「十干・十二支」,「九星」,「六輝」,「行事」(被告書籍においては,「催事」),「旧暦」(被告書籍においては,「陰暦」)及び「十二直」を掲げることとした点及び2色刷りとした点に類似性は認められるものの,これらは,本件書籍(1)における表現それ自体ではないアイディアに係る部分又は表現上の創作性が認められない部分であるし,本件書籍(1)の「毎日ごよみ」(24ないし47頁)には,「暦のミニ知識」及び「夢占い」と題する記事が記載されているのに対し,被告書籍にはこれらの記載はなく,被告書籍の「日ごよみ・行事・お祭」(42ないし65頁)には,本件書籍(1)にはないその月の大半が属する期間の二十八宿及び暗剣殺の方位並びに東京におけるその月の1日,11日及び21日の日の出及び日の入りの時刻の記載があることからすれば,本件書籍(1)の「毎日ごよみ」(24ないし47頁)と被告書籍の「日ごよみ・行事・お祭」(42ないし65頁)との間には,その具体的配列において同一性又は類似性は認められない。
したがって,本件書籍(1)の「毎日ごよみ」(24ないし47頁)と被告書籍の「日ごよみ・行事・お祭」(42ないし65頁)との間に同一性又は類似性はなく,被告書籍の「日ごよみ・行事・お祭」(42ないし65頁)は,本件書籍(1)の「毎日ごよみ」(24ないし47頁)を複製ないし翻案したものということはできない。
イ 「一白水星」ないし「九紫火星」(55ないし153頁)
原告は,本件書籍(1)の「一白水星」ないし「九紫火星」(55ないし153頁)においては,九星ごとに,1年間の運勢の変化を一覧にして表に掲げ,1年間を通して,運勢がどのように変化するかを読者にわかりやすく図示しており(55,66,77,88,99,110,121,132,143頁),また,九星ごとの各見出しを,白抜きの文字に赤ピンクの囲いをしたものとし,本文中にも,赤文字や赤ピンク文字を使用することによって,読者が一目見てわかりやすい配列としており,被告書籍はこれらの本件書籍(1)の特色をそのまま模倣したものであるから,被告書籍は,本件書籍(1)についての著作権又は編集著作権を侵害すると主張するので,以下判断する。
本件書籍(1)の「一白水星」(55ないし65頁)においては,55頁の上段に「一白水星」との表題が付され,その横に「一白水星年盤図」及び平成11年の基本的な運勢が記載され,55頁の下段には,年間の運勢をグラフ化したものが記載され,平成11年の運勢が仕事運,家庭運,異性運,財運及び健康運に分けて簡潔に記載されている。56頁上段には,上段に「一白水星吉凶の図」及び平成11年の方位の吉凶についての解説が記載され,56頁下段には,適職が記載されている。57頁には,平成11年の運勢が仕事運,恋愛運,健康運及び建築・移転運に分けて記載されている。58頁には,生まれ年ごとに平成11年の運勢及び運勢に基づく助言が記載されている。59ないし64頁には,各月ごとの運勢が記載されている。65頁には,各日ごとの運勢が表形式で記載されている。
被告書籍の「一白水星」(74ないし88頁)においては,74頁の上段に「一白水星」との表題が付され,「運命吉凶図」及びその解説並びに「運勢波動の流れ」の図が記載され,74頁の下段には,生まれ年ごとに平成16年の運勢及び運勢に基づく助言が記載されている。75頁の上段には,「一白水星」の基本的な運勢が記載され,75頁の下段には,「午の一白」,「酉の一白」,「子の一白」及び「卯の一白」と題する記述及び適職が記載されている。76頁の上段には,血液型別の分析が記載され,76頁の下段には,平成16年の基本的な運勢が記載されている。77ないし88頁には,各日ごとの運勢が記載されている。
両書籍を対比すると,本件書籍(1)の「一白水星」(55ないし65頁)には,平成11年の「一白水星」の運勢が記載されており,同年の「一白水星」の運勢は静観期とされているのに対し,被告書籍の「一白水星」(74ないし88頁)には,平成16年の「一白水星」の運勢が記載されており,同年の一白水星の運勢は困難期とされている。そして,これを前提とした本件書籍(1)の「一白水星」(55ないし65頁)の個別の運勢の記述と被告書籍の「一白水星」(74ないし88頁)の個別の運勢の記述とは,全く異なっている。
また,本件書籍(1)の「一白水星」(55ないし65頁)のうち,55頁の上段には,「一白水星」の基本的な運勢が記載され,55頁の下段には,「一白水星」の運勢が仕事運,家庭運,異性運,財運及び健康運に分けて簡潔に記載され,56頁の下段には,適職が記載されており,これらは,平成11年の運勢に限らない一般的な記述である。被告書籍の「一白水星」(74ないし88頁)のうち,75頁の上段には,「一白水星」の基本的な運勢が記載され,75頁の下段には,適職が記載され,これも,平成16年の運勢に限らない一般的な記述である。両記述を対比しても,本件書籍(5)と被告書籍との間に同一性又は類似性は認められない。
このように,本件書籍(1)の「一白水星」(55ないし65頁)と被告書籍の「一白水星」(74ないし88頁)を対比しても,その個々の文章又は図に同一性又は類似性は認められず,本件書籍(1)の「二黒土星」ないし「九紫火星」(66ないし153頁)と被告書籍の「二黒土星」ないし「九紫火星」(89ないし208頁)を対比しても,同様である。
そして,本件書籍(1)の「一白水星」(55ないし65頁)と被告書籍の「一白水星」(74ないし88頁)とは,その個々の文章又は図に同一性又は類似性が認められないから,素材の選択において同一性又は類似性が認められないというべきである。また,上記のような本件書籍(1)の「一白水星」(55ないし65頁)と被告書籍の「一白水星」(74ないし88頁)の具体的配列を対比しても,同一性又は類似性があるということはできない。本件書籍(1)の「二黒土星」ないし「九紫火星」(66ないし153頁)と被告書籍の「二黒土星」ないし「九紫火星」(89ないし208頁)を対比しても,同様である。
したがって,本件書籍(1)の「一白水星」ないし「九紫火星」(55ないし153頁)と被告書籍の「一白水星」ないし「九紫火星」(74ないし208頁)との間に同一性又は類似性はなく,被告書籍の「一白水星」ないし「九紫火星」(74ないし208頁)は,本件書籍(1)の「一白水星」ないし「九紫火星」(55ないし153頁)を複製ないし翻案したものということはできない。
原告は,九星ごとに,1年間の運勢の変化を一覧にして表に掲げ,九星ごとの各見出しを,白抜きの文字に赤ピンクの囲いをしたものとし,本文中にも,赤文字や赤ピンク文字を使用した点において,被告書籍と本件書籍(1)とは類似すると主張する。
しかし,本件書籍(1)の「一白水星」の年間の運勢のグラフ(55頁下段)は,1年間の各月の運勢を一般的な手法に基づき表現したのみのグラフにすぎないから,同図は,表現上の創作性が認められない部分であるといわざるを得ない。「二黒土星」ないし「九紫火星」の図(66,77,88,99,110,121,132,143頁各下段)についても,同様である。また,九星ごとの各見出しを,白抜きの文字に赤ピンクの囲いをしたものとしたことや,本文中に赤文字や赤ピンク文字を使用したことは,作成者の個性が発揮された創作的なものとはいうことはできない。したがって,原告の上記主張は,理由がない。
ウ 人相の見かた(154頁)
原告は,本件書籍(1)の「人相の見かた」(154ないし156頁)においては,「人相の見かた」と白抜き文字で題して,人間の顔を20部位に分類し,その分類を人間の顔の真下に掲記し,各部位と性格及び人相の解説を行っており,被告書籍の「人相の見かた」(209頁)においても同様であるから,被告書籍は,原告が有する編集著作権を侵害するものであると主張するので,以下判断する。
本件書籍(1)の「人相の見かた」(154ないし156頁)においては,154頁の冒頭に「人相の見かた」との見出しが付され,154頁から155頁の上段にかけて人相について一般的な解説が記載され,155頁の上段から下段にかけて顔の形についての分析が記載され,155頁の下段に額の形についての分析が記載され,155頁の下段から156頁の上段にかけて眉の形及び眉の間隔についての分析が記載され,156頁の上段から下段にかけて目の形及び目の間隔に関する分析が記載され,156頁の下段に口の形についての分析が記載され,154頁の上段に顔の図が記載されるとともに,顔を20の部位に分類した分類項目が注記され,154頁の下段に顔の形の図が3種類記載され,155頁の下段に額の形の図が5種類記載され,156頁の下段に口の形の図が6種類記載されている。
被告書籍の「人相の見かた」(209頁)においては,冒頭に「人相の見かた」との見出しが付され,上段から下段にかけて人相についての一般的な解説が記載され,上段に顔の図が記載されるとともに,顔を20の部位に分類した分類項目が注記され,下段にその分類項目に関する解説が記載されている。
両書籍を対比すると,本件書籍(1)の人相についての一般的な解説と被告書籍の人相についての一般的な解説とは,全く異なっており,本件書籍(1)には,顔の形の分析がなされているが,被告書籍においては,顔の形の分析はされていない。そして,「人相の見かた」との見出しを白抜き文字で表現したことは,作成者の個性が発揮された創作的なものとはいえないし,顔を20の部位に分類したことは,アイディアにすぎず,表現それ自体ではない部分である。また,顔の分類を顔の図の真下に記載したことは,作成者の個性が発揮された創作的なものとはいえない。さらに,本件書籍(1)には,分類された20の部位についての解説が記載されていないのに対し,被告書籍にはその解説が記載されている。
以上の対比によれば,本件書籍(1)の「人相の見かた」(154ないし156頁)と被告書籍の「人相の見かた」(209頁)との間には,その素材の選択及び配列のいずれについても,同一性又は類似性があるということはできない。
したがって,本件書籍(1)の「人相の見かた」(154頁)と被告書籍の「人相の見かた」(209頁)との間に同一性又は類似性はなく,被告書籍の「人相の見かた」(209頁)は,本件書籍(1)の「人相の見かた」(154頁)を複製ないし翻案したものということはできない。
エ 手相の見かた(161ないし164頁)
原告は,本件書籍(1)の「手相の見かた」(161ないし164頁)の記述と被告書籍の「手相で自分を知る」(212ないし214頁)の記述で異なるのは「見出し」と,最後の項目が「結婚線」であるか「人気線」であるかであって,その他は素材の選択及び配列のいずれも酷似しており,被告書籍の記述内容は本件書籍(1)の記述内容と酷似しているから,被告書籍は,本件書籍(1)についての著作権及び編集著作権を侵害するものであると主張するので,以下判断する。
本件書籍(1)の「手相の見かた」(161ないし164頁)には,161頁の冒頭に「手相の見かた」との見出しが付され,161頁上段から下段にかけて手相についての一般的な解説が記載され,161頁下段には「掌線の名称と位置」と題する図及び「掌の丘(きゅう)の名称と位置」と題する図が記載され,161頁下段から164頁にかけて順に「生命線」,「頭脳線」,「感情線」,「運命線」,「太陽線」,「結婚線」,「健康線」,「手の大小」,「爪の相」及び「指の特性」についての解説が記載されている。
被告書籍の「手相で自分を知る」(212ないし214頁)には,212頁の冒頭に「手相で自分を知る」との見出しが付され,212頁上段に手相についての一般的な解説が記載されるとともに,手相の概略を示した図が記載され,212頁下段から214頁下段にかけて順に「生命線」,「頭脳線」,「感情線」,「運命線」,「太陽線」,「人気線」,「希望線」,「億万長者線」及び「結婚線」についての解説が記載されるとともに,手の中の各線の位置を示す図が記載され,214頁下段には,「掌に現れる紋様」についての解説が各紋様の図とともに記載されている。
両書籍を対比すると,本件書籍(1)の手相についての一般的な解説と被告書籍の手相についての一般的な解説との間には,同一性又は類似性は認められないし,本件書籍(1)と被告書籍の共通する項目である「生命線」,「頭脳線」,「感情線」,「運命線」,「太陽線」及び「結婚線」についての各解説を対比しても,同一性又は類似性は全く認められない。
このように,本件書籍(1)の「手相の見かた」(161ないし164頁)と被告書籍の「手相で自分を知る」(212ないし214頁)とを対比しても,その個々の文章又は図に同一性又は類似性は認められない。
そして,本件書籍(1)の「手相の見かた」(161ないし164頁)と被告書籍の「手相で自分を知る」(212ないし214頁)とは,その個々の文章又は図に同一性又は類似性が認められないから,素材の選択において同一性又は類似性が認められないというべきである。また,上記のような本件書籍(1)の「手相の見かた」(161ないし164頁)と被告書籍の「手相で自分を知る」(212ないし214頁)との具体的配列を対比しても,図の有無及び配置は異なり,本件書籍(1)にある「健康線」,「手の大小」,「爪の相」及び「指の特性」についての解説が被告書籍には記載されておらず,被告書籍には本件書籍(1)にはない「人気線」,「希望線」,「億万長者線」及び「掌に現れる紋様」についての解説が記載されていることからすれば,同一性又は類似性があるということはできない。
したがって,本件書籍(1)の「手相の見かた」(161ないし164頁)と被告書籍の「手相で自分を知る」(212ないし214頁)との間に同一性又は類似性はなく,被告書籍の「手相で自分を知る」(212ないし214頁)は,本件書籍(1)の「手相の見かた」(161ないし164頁)を複製ないし翻案したものということはできない。
(3) 本件書籍(2)について
ア 四神相応の図(15頁)
原告は,被告書籍の「家相・地相」(223頁)の末尾の「四神相応の図」と題する図が本件書籍(2)の「四神相応の図」(15頁)と酷似していると主張するので,以下判断する。
本件書籍(2)の「四神相応の図」(15頁)は,中央に家を描き,家の上側には「北」,「黒」及び「玄武」と記載するとともに,玄武を山とともに描いて説明を付し,家の下側には「南」,「赤」及び「朱雀」と記載するとともに,朱雀を描いて説明を付し,家の右側には「東」,「青」及び「青龍」と記載するとともに,青龍を林と川とともに描いて説明を付し,家の左側には「西」,「白」及び「白虎」と記載するとともに,白虎を建物と道とともに描いて説明を付している。
被告書籍の「家相・地相」(223頁)の末尾の「四神相応の図」と題する図は,中央に家を描き,家の上側には「北」及び「玄武」と記載するとともに,玄武を山とともに描き,家の下側には「南」及び「朱雀」と記載するとともに,朱雀を描き,家の右側には「東」及び「青龍」と記載するとともに,青龍を川とともに描き,家の左側には「西」及び「白虎」と記載するとともに,白虎を道とともに描いている。
両書籍を対比すると,本件書籍(2)の「四神相応の図」(15頁)と被告書籍の「家相・地相」(223頁)の末尾の「四神相応の図」と題する図とは,中央に家を描いたこと,家の上側には「北」及び「玄武」と記載するとともに,玄武を山とともに描いたこと,家の下側には「南」及び「朱雀」と記載するとともに,朱雀を描いたこと,家の右側には「東」及び「青龍」と記載するとともに,青龍を川とともに描いたこと,家の左側には「西」及び「白虎」と記載するとともに,白虎を道とともに描いたことにおいて共通しているものの,これらは本件書籍(2)の表現それ自体でない部分であるし,本件書籍(2)の中央の家は2階建てであるのに対し,被告書籍の中央の家は平家建てであること,本件書籍(2)の玄武,朱雀,青龍及び白虎の絵と被告書籍の玄武,朱雀,青龍及び白虎の絵との間には類似性は認められないこと,本件書籍(2)には玄武,朱雀,青龍及び白虎についての説明が付されているのに対し,被告書籍には説明が付されていないことからすれば,本件書籍(2)の「四神相応の図」(15頁)と被告書籍の「家相・地相」(223頁)の末尾の「四神相応の図」と題する図との間には,その具体的表現において同一性又は類似性は認められない。
したがって,本件書籍(2)の「四神相応の図」(15頁)と被告書籍の「家相・地相」(223頁)の末尾の「四神相応の図」と題する図との間に同一性又は類似性はなく,被告書籍の「家相・地相」(223頁)の末尾の「四神相応の図」と題する図は,本件書籍(2)の「四神相応の図」(15頁)を複製ないし翻案したものということはできない。
イ ラッキーカラー(27頁)
原告は,本件書籍(2)においては,「ラッキーカラー」(27頁)と題して九星ごとにラッキーカラーを記述するとともに,「本命星の基本カラー」と題して各本命星と相性のよいカラーを図示しており,このラッキーカラーの記述及び図にまとめることは原告の思想の創作的表現であるところ,被告書籍では,「幸せを呼ぶカラー」(14頁)と題して本命星とカラーとの相性に関する説明を付しており,このうち,本命星の基本カラーと題する図は本件書籍(2)の図と全く同一である旨主張するので,以下,判断する。
本件書籍(2)の「ラッキーカラー」(27頁)には,上段において,色が運命に与える影響,生年月日によりその人特有の基本色があることの解説が記載され,「本命星の基本カラー」と題して九星ごとの基本色が八角形の図で示されている。そして,下段において,「運命を開く色」と題して,「好きな色」,「健康に役立つ色」,「仕事に役立つ色」及び「恋愛を成功させる色」について記載されている。
被告書籍の「幸せを呼ぶカラー」(14頁)には,上段において,色が運命に与える影響についての説明が記載され,「本命星の基本カラー」と題して九星ごとの基本色が八角形の図で示されている。そして,下段において,「好きな色」,「健康に役立つ色」,「仕事に役立つ色」及び「恋愛を成功させる色」について記載されている。
両書籍を対比すると,本件書籍(2)の「ラッキーカラー」(27頁)の上段と被告書籍の「幸せを呼ぶカラー」(14頁)の上段の各記載についてみれば,「本命星の基本カラー」と題する八角形の図はほぼ同一であるものの,色が運命に与える影響について記載された説明部分の表現は,全く異なっている。本件書籍(2)の「本命星の基本カラー」(27頁)の図は,相似形である3個の八角形からなり,内側の八角形の各頂点と外側の八角形の各頂点とは放射状の線で結ばれ,各線が中間にある八角形の各頂点を通っており,内側の八角形の内側に「五黄土星(中)黄・黒」と記載され,内側の八角形と中間にある八角形との間に九星ごとの基本色が記載され,中間にある八角形と外側にある八角形との間に九星が記載されているが,生年月日により特有の基本色がある旨の説明部分の記載に沿うように,九星と基本色との対応関係を一般的な方法で表現したものにすぎず,原告の個性が示されるような表現上の創作性を認めることはできない。本件書籍(2)の「ラッキーカラー」(27頁)の下段と被告書籍の「幸せを呼ぶカラー」(14頁)の下段の各記載についてみると,色の効用などを4つの分類にしていることとその名称,各分類内の色の説明について,似通った記載が認められるが,これらの記載は,いずれも,ごく短い表現であって,用いられている形容詞等も極めて一般的なものであるから,前記同様,原告の個性が示されるような表現上の創作性を認めることはできない。
そうすると,被告書籍の「幸せを呼ぶカラー」(14頁)の記載は,本件書籍(2)の「ラッキーカラー」(27頁)を複製ないし翻案したものということはできない。
(4) 本件書籍(3)(2000年間の日本と日本人(211ないし219頁))について
原告は,本件書籍(3)の「2000年間の日本と日本人」(211ないし219頁)においては,西暦2001年から遡って縄文時代,石器時代までの年表を掲げ,日本年号,干支,時代及び主な出来事を掲記し,被告書籍の「二〇〇〇年間の人の歩み」(271ないし279頁)も同様であって,被告書籍の素材の選択及び配列は本件書籍(1)の素材の選択及び配列を模倣しているから,被告書籍は,本件書籍(1)についての編集著作権及び著作権を侵害すると主張するので,以下判断する。
本件書籍(3)の「2000年間の日本と日本人」(211ないし219頁)は,逆綴じとなっており,219頁の冒頭に「2000年間の日本と日本人」との見出しが付され,219頁の上部に,「西暦」,「日本元号」,「九星」,「干支」,「逆年次」,「時代」及び「主なる出来ごと」との見出し項目が記載され,211頁にかけて縄文式文化時代までの日本に関する出来事が年表として記載されている。
被告書籍の「二〇〇〇年間の人の歩み」(271ないし279頁)には,271頁の右部に「西暦」,「元号」,「干支」,「累年」,「時代」,「天皇」,「日本」及び「世界」との見出し項目が記載され,279頁にかけて石器時代までの日本に関する出来事及び世界の出来事が年表として記載されている。
両書籍を対比すると,本件書籍(3)の記述と被告書籍の記述との間には,同一性又は類似性は全く認められない。
そして,本件書籍(3)の「2000年間の日本と日本人」(211ないし219頁)と被告書籍の「二〇〇〇年間の人の歩み」(271ないし279頁)とは,その具体的表現に同一性又は類似性が認められないから,素材の選択において同一性又は類似性が認められないというべきである。また,本件書籍(3)の「2000年間の日本と日本人」(211ないし219頁)と被告書籍の「二〇〇〇年間の人の歩み」(271ないし279頁)の具体的配列を対比しても,本件書籍(3)の年表が上から下に向かうに従って年号がさかのぼっていく形式であるのに対し,被告書籍の年表は,右から左に向かうに従って年号がさかのぼっていく形式であり,本件書籍(3)にある「九星」の見出し項目が被告書籍には記載されておらず,被告書籍には本件書籍(3)にはない「天皇」,「将軍 内閣」及び「世界」の見出し項目があることからすれば,同一性又は類似性があるということはできない。
したがって,本件書籍(3)の「2000年間の日本と日本人」(211ないし219頁)と被告書籍の「二〇〇〇年間の人の歩み」(271ないし279頁)との間に同一性又は類似性はなく,被告書籍の「二〇〇〇年間の人の歩み」(271ないし279頁)は,本件書籍(3)の「2000年間の日本と日本人」(211ないし219頁)を複製ないし翻案したものということはできない。
(5) 本件書籍(4)について
ア 「氣」とは何だろう?(2頁)
原告は,本件書籍(4)の「『氣』とは何だろう?」(2頁)においては,「気」を3種に分類し,表形式で読者に見やすく表現し,天の気を「時」とし,さらに「時間」,「空間」及び「温度」の3種類に分類し,地の気を「利」とし,さらに「物体同士の吸引・反発・接触」,「滋養(生物の生息材料)」及び「食・飲・暖の調節」の3種類に分類し,人の気を「和」とし,さらに「人間社会の調和」,「人間同士の親密・強調・扶助」,「競争・対立・支配」,「性愛」及び「制圧と服従」の5種類に分類し,被告書籍の「『気』は三種ある」及び「『気』の
」(8頁)も同様であるから,被告書籍は,本件書籍(4)についての著作権を侵害すると主張するので,以下判断する。
本件書籍(4)の「『氣』とは何だろう?」(2頁)には,下段に「『氣』とは何だろう?」と題して「氣」についての解説が記載され,上段に「氣」の分類が図で記載されている。
被告書籍の「『気』は三種ある」及び「『気』の 」(8頁)には,下段に「『気』の 」と題して「気」についての解説が記載され,上段に「『気』は三種ある」と題して「気」の分類が図で記載されている。
両書籍を対比すると,本件書籍(4)の「『氣』とは何だろう?」(2頁)の下段の「氣」についての解説と被告書籍の「『気』の
」と題する「気」についての解説との間には,同一性又は類似性は全く認められない。
また,原告は,本件書籍(4)の「『氣』とは何だろう?」(2頁)の上段の「氣」の分類を示した図と被告書籍の「『気』は三種ある」(8頁)と題する「気」の分類を示した図とは,「気」を3種に分類し,表形式で読者に見やすく表現し,天の気を「時」とし,さらに「時間」,「空間」及び「温度」の3種類に分類し,地の気を「利」とし,さらに「物体同士の吸引・反発・接触」,「滋養(生物の生息材料)」及び「食・飲・暖の調節」の3種類に分類し,人の気を「和」とし,さらに「人間社会の調和」,「人間同士の親密・強調・扶助」,「競争・対立・支配」,「性愛」及び「制圧と服従」の5種類に分類した点において類似すると主張する。
しかし,「気」の分類(細分類を含む。)は,アイディアにすぎず,表現それ自体ではない部分であるし,それを図にしたことも,「気」の分類を一般的な手法に基づき図形として表現したにすぎないから,同図は,表現上の創作性が認められない部分であるといわざるを得ない。
したがって,本件書籍(4)の「『氣』とは何だろう?」(2頁)と被告書籍の「『気』は三種ある」及び「『気』の
」(8頁)との間に同一性又は類似性はなく,被告書籍の「『気』は三種ある」及び「『気』の 」(8頁)は,本件書籍(4)の「『氣』とは何だろう?」(2頁)を複製ないし翻案したものということはできない。
イ 運命の吉凶転機の盤(8頁)
原告は,本件書籍(4)の「運命の吉凶転機の盤」(8頁)の上段の図と被告書籍の「運命啓発の基盤」(6頁)の上段の図とは,同一で,各部分の占い部分も同一の内容で同一の配列を用い,本件書籍(4)の「運命の吉凶転機の盤」(8頁)の下段の解説文と被告書籍の「運命啓発の基盤」(6頁)の下段の解説文とは,同様あるいは酷似していると主張するので,以下判断する。
本件書籍(4)の「運命の吉凶転機の盤」(8頁)には,上段に「運命の吉凶転機の盤」と題する八角形の図が記載され,下段に「運命の吉凶転機の盤」の解説が記載されている。
被告書籍の「運命啓発の基盤」(6頁)には,上段に「運命啓発の基盤」と題する八角形の図が記載され,下段に「運命啓発の基盤」の解説が記載されている。
両書籍を対比すると,本件書籍(4)の「運命の吉凶転機の盤」(8頁)の上段の八角形の図と被告書籍の「運命啓発の基盤」(6頁)の上段の八角形の図とは,占い部分の記述がほぼ同一であるが,これらの各記述は,ごく短いものであって,筆者の個性が現れているとはいえないし,八角形の図を用いたことは,普通に用いられる表現の一つということができるから,本件書籍(4)の「運命の吉凶転機の盤」(8頁)の上段の八角形の図は,表現上の創作性が認められない部分であるというべきである。そして,本件書籍(4)の「運命の吉凶転機の盤」(8頁)の下段の「運命の吉凶転機の盤」の解説と被告書籍の「運命啓発の基盤」(6頁)の下段の「運命啓発の基盤」の解説とは,「被同会」及び「同会」について解説している点で類似性が認められるものの,「被同会」及び「同会」についての見解は,アイディアにすぎず,表現それ自体ではない部分であって,具体的表現において同一性又は類似性が認められないから,思想又は感情を創作的に表現した部分において同一性又は類似性を有するとはいえない。
したがって,本件書籍(4)の「運命の吉凶転機の盤」(8頁)と被告書籍の「運命啓発の基盤」(6頁)との間に同一性又は類似性はなく,被告書籍の「運命啓発の基盤」(6頁)は,本件書籍(4)の「運命の吉凶転機の盤」(8頁)を複製ないし翻案したものということはできない。
ウ 「星座(せいざ)」及び「星座の呼び名」(27,28頁)
原告は,本件書籍(4)の「星座(せいざ)」及び「星座の呼び名」(27,28頁)においては,「星座(せいざ)」と題して,星座の一覧を図示するとともに,「星座の呼び名」と題して,「満天に輝く星達は肉眼で見えるものが約七千五百個あります。」と記述し,続けて星空の区分の由来,星座の由来及び惑星と恒星の動きに関する記述をし,被告書籍の「星座(せいざ)」及び「星座の呼び名」(34,35頁)も同様であり,被告書籍の記述内容は本件書籍(4)の記述内容と酷似し,被告書籍の記述内容の選択及び記述の配列は本件書籍(4)と同一であるから,被告書籍は,本件書籍(4)についての編集著作権を侵害すると主張するので,以下判断する。
本件書籍(4)の「星座(せいざ)」及び「星座の呼び名」(27,28頁)においては,27頁上段に「星座(せいざ)」と題して黄道十二星座が天球とともに図示され,27頁下段から28頁にかけて,星及び星座についての一般的な解説が記載され,28頁上段には北の星空が図示され,28頁下段には南の星空が図示されている。
被告書籍の「星座(せいざ)」及び「星座の呼び名」(34,35頁)においては,34頁上段に「星座(せいざ)」と題して黄道十二星座が天球とともに図示され,34頁下段から35頁にかけて,星及び星座についての一般的な解説が記載され,35頁上段には北の星空が図示され,35頁下段には南の星空が図示されている。
両書籍を対比すると,本件書籍(4)の27頁上段の「星座(せいざ)」と題する図と被告書籍の34頁上段の「星座(せいざ)」と題する図とは,ほぼ同一である。しかし,本件書籍(4)の27頁上段の「星座(せいざ)」と題する図は,太陽を中心として天球を表示し,そこに黄道十二星座を図示したものであり,公知の事実を普通に用いられる方法で表現したものにすぎず,表現上の格別の工夫があるとはいえない。また,本件書籍(4)の27頁下段から28頁にかけての「星座の呼び名」と題する文章と被告書籍の34頁下段から35頁にかけての「星座の呼び名」と題する文章とは,星及び星座についての一般的な解説として,肉眼で見える星が約7500個あること,恒星はあまりにも遠方にあるために動かないように見えること,天空が広いので,いくつかの星と星をつなぎ合わせて星座とし,ギリシャ神話の神々や鳥獣の名がつけられていること,西暦2世紀に天文学者プトレマイオスが星空を48の星座に分けたこと,星座の分類は,現在は国際天文学会で88の星座に統一されていること,88の星座のうち12の星座は黄道星座と呼ばれること,星には惑星と恒星があること,惑星は太陽の周りを回っている9個の星で,9個の惑星のほかに火星と木星との間に小惑星があること,惑星は平均して毎秒約25kmの速度で動いていること,アルクトールという恒星は毎秒125kmの速度で動いているが,それでも動いていないように見えるのは,地球と太陽との距離の250万倍も遠方にあるからであり,地球から見ると,月の直径ほどの距離を移動するのに約1600年もかかること,近年,誕生日を生年月日でなく星座名で表現する人が多くなっていることを記載した点において共通するが,この共通点は,星又は星座に関する一般的な知見を普通に使用されるありふれた言葉で表現したものにすぎず,その文言,配列及び構成にも表現上の格別の工夫があるとはいえないから,本件書籍(4)の27頁下段から28頁にかけての「星座の呼び名」と題する文章と被告書籍の34頁下段から35頁にかけての「星座の呼び名」と題する文章とは,その具体的表現に同一性又は類似性があるとは認められない。さらに,本件書籍(4)の28頁の北の星空及び南の星空の図と,被告書籍の35頁の北の星空及び南の星空の図とは,全く異なっている。
そうすると,本件書籍(4)の「星座(せいざ)」及び「星座の呼び名」(27,28頁)と被告書籍の「星座(せいざ)」及び「星座の呼び名」(34,35頁)とは,その個々の文章又は図の具体的表現に同一性又は類似性が認められないから,素材の選択において同一性又は類似性は認められないというべきである。そして,本件書籍(4)の「星座(せいざ)」及び「星座の呼び名」(27,28頁)は,上記のとおり,黄道十二星座を天球とともに図示したもの,星及び星座についての一般的な解説並びに北の星空及び南の星空の図を一般的な手法に基づき配列したものにすぎず,その具体的配列に筆者の個性が現れているとはいえないから,表現上の創作性は認められない。
したがって,本件書籍(4)の「星座(せいざ)」及び「星座の呼び名」(27,28頁)と被告書籍の「星座(せいざ)」及び「星座の呼び名」(34,35頁)との間に同一性又は類似性はなく,被告書籍の「星座(せいざ)」及び「星座の呼び名」(34,35頁)は,本件書籍(4)の「星座(せいざ)」及び「星座の呼び名」(27,28頁)を複製ないし翻案したものということはできない。
エ 星座一覧表(29頁)
原告は,本件書籍(4)の「星座一覧表」(29頁)においては,88個の星座を一覧とし,そのうち,誕生月星座を赤ピンク色で囲い,さらに,東京において見えるころの月日を記載し,被告書籍の「星座一覧表」(41頁)も同様であり,被告書籍の記述内容は本件書籍(4)の記述内容と同一であるから,被告書籍は,本件書籍(4)についての編集著作権を侵害すると主張するので,以下判断する。
本件書籍(4)の「星座一覧表」(29頁)においては,88の星座を50音順に並べ,各星座について東京で見える時期が記載され,黄道12星座に印が付されている。
被告書籍の「星座一覧表」(41頁)においても,88の星座を50音順に並べ,各星座について東京で見える時期が記載され,黄道12星座に印が付され,天の南極付近にあって日本からは見えない星座については,★印が付されている。
両書籍を対比すると,本件書籍(4)の「星座一覧表」(29頁)と被告書籍の「星座一覧表」(41頁)とは,88の星座を50音順に並べ,各星座について東京で見える時期を記載し,黄道12星座に印を付した点において共通するが,この共通点は,星座及び星座に関する一般的な知見を一般的な手法に基づき列記したものにすぎず,その配列及び構成にも表現上の格別の工夫があるとはいえない。また,被告書籍の「星座一覧表」(41頁)には,天の南極付近にあって日本からは見えない星座について,★印が付されているのに対し,本件書籍(4)の「星座一覧表」(29頁)には,その点について何の言及もなく,本件書籍(4)の「星座一覧表」(29頁)と被告書籍の「星座一覧表」(41頁)との素材の選択及び配列には異なる部分も存在する以上,両者の間に同一性又は類似性があるとは認められない。
したがって,本件書籍(4)の「星座一覧表」(29頁)と被告書籍の「星座一覧表」(41頁)との間に同一性又は類似性はなく,被告書籍の「星座一覧表」(41頁)は,本件書籍(4)の「星座一覧表」(29頁)を複製ないし翻案したものということはできない。
(6) 本件書籍(5)について
(以下略)
(7) したがって,上記(1)アないしオの各部分について,原告の有する著作権又は編集著作権が侵害されたとの原告の主張は,理由がなく,本件各書籍について原告が有する著作権又は編集著作権の侵害を理由とする複製等の差止めの請求及び損害賠償請求は,いずれも理由がない。
第4 結論
以上によれば,原告の本訴請求は,その余の点を判断するまでもなく,いずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。