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著作権判例セレクション

【編集著作物】方位の吉凶を示す方位盤の(編集)著作物性を否定した事例/運勢を記述した文章,図及びグラフの選択及び配列の編集著作物性を認定した事例

▶平成170928日東京地方裁判所[平成16()4697]
3 争点(4)(本件各書籍の著作物性ないし編集著作物該当性)について
本件各書籍の著作物性ないし編集著作物該当性に関し,①「本命星早見表」(本件書籍(1)の表紙裏)及び「本命星の早見表」(本件書籍(5)の表紙裏),②「もくじ」(本件書籍(5)の4,5頁),③「方位盤」(本件書籍(1)の9頁及び本件書籍(5)の3頁),④「一白水星」ないし「九紫火星」(本件書籍(1)の55ないし153頁及び本件書籍(5)の64ないし225頁),⑤「カレンダー」(本件書籍(1)の裏表紙)が争われているところ,前記1のとおり,①及び②の作成者は被告Bであり,⑤の作成者は原告ではないと認められ,前記2のとおり,被告Bが作成したものが著作権法15条により原告又はフォーチューンが著作者となるとは認められないから,ここでは,③及び④について検討する。
(1) 方位盤(本件書籍(1)の9頁及び本件書籍(5)の3頁)
証拠によれば,本件書籍(1)の9頁及び本件書籍(5)の3頁の各方位盤(以下これらを「本件各方位盤」という。)は,相似形である6個の八角形から成っていること,最も内側の八角形の各頂点と最も外側の八角形の各頂点とは放射状の線で結ばれ,各線が中間にある4個の八角形の各頂点を通っていること,最も内側の八角形の内部に九星のうちの一つが,最も内側の八角形と内側から2番目の八角形との間に方位が,内側から2番目の八角形と内側から3番目の八角形との間に八卦のマークが,内側から3番目の八角形と内側から4番目の八角形との間に火の場所が,内側から4番目の八角形と内側から5番目の八角形との間に十二支が,内側から5番目の八角形と最も外側の八角形との間に九星が,それぞれ記されていること,最も外側の八角形の外に方位の吉凶が記されていること,以上の事実が認められる。
原告は,方位盤に方位,八卦のマーク,火の場所,十二支及び九星の5つの要素をすべて織り込んだのは原告の創作的な思想の表現であり,素材の選択及び配列方法にも創作性が認められるから,本件書籍(1)の9頁及び本件書籍(5)の3頁の方位盤は著作物ないし編集著作物に当たると主張する。
しかし,本件各方位盤は,方位の吉凶を示す図であり,気学では方位を特に重要視し,人の動きによって受ける吉凶の影響を前もって知っておくことの重要性を教えているというのであるから,方位の吉凶に関係のある要素を方位盤に織り込むことはありふれた表現にすぎない。また,方位盤が方位を示すものであることからすれば,これを八角形で表すこと自体はありふれた表現であるし,上記のように方位を八分割した八角形の図に吉凶を示す事項を記載することは,本件類似書籍にも見られるところである。方位,八卦のマーク,火の場所,十二支及び九星の5つの要素を織り込んだ点についても,本件各方位盤におけるそれらの表現は,同様にありふれたものである。
したがって,本件各方位盤は,原告の思想又は感情を創作的に表現したものとはいえず,素材の選択又は配列によって創作性を有するものともいえないから,著作物あるいは編集著作物とは認められない。
(2) 「一白水星」ないし「九紫火星」(本件書籍(1)の55ないし153頁及び本件書籍(5)の64ないし225頁)
ア 本件書籍(1)の「一白水星」ないし「九紫火星」(55ないし153頁)は,九星ごとに平成11年の運勢を記述したものであって,原告の思想又は感情を創作的に表現したものといえる。
また,本件書籍(1)の当該部分は,九星ごとに同一の構成がとられており,「一白水星」(55ないし65頁)を例に取ると,次のように構成されている。
55頁においては,上段に「一白水星」との表題が付され,その横に「一白水星年盤図」及び平成11年の基本的な運勢が記載されている。下段には,年間の運勢をグラフ化したものが記載され,同年の運勢が仕事運,家庭運,異性運,財運及び健康運に分けて簡潔に記載されている。
56頁においては,上段に「一白水星吉凶の図」が記載され,平成11年の方位の吉凶についての解説が記載され,下段に適職が記載されている。
57頁においては,平成11年の運勢が仕事運,恋愛運,健康運及び建築・移転運に分けて記載されている。
58頁においては,生まれ年ごとに平成11年の運勢及び運勢に基づく助言が記載されている。
59ないし64頁においては,各月ごとの運勢が記載されている。
65頁においては,各日ごとの運勢が表形式で記載されている。
これらの一定の主題の下にまとめられた文章,図及びグラフの選択及び配列には,編集著作物としての創作性が認められるものということができる。
イ 本件書籍(5)の「一白水星」ないし「九紫火星」(64ないし225頁)は,九星ごとに平成15年の運勢を記述したものであって,原告の思想又は感情を創作的に表現したものといえる。
また,本件書籍(5)の当該部分は,九星ごとに同一の構成がとられており,「一白水星」(64ないし81頁)を例に取ると,次のように構成されている。
64頁においては,上段に「一白水星」との表題が付され,その横に「一白水星年盤図」及び年間の運勢をグラフ化したものが記載され,下段には,平成15年が「頂上期」に当たることが記載されている。
65頁においては,上段に平成15年の基本的な運勢が記載され,下段には,平成15年の運勢が仕事運,家庭運,異性運,財運及び健康運に分けて簡潔に記載されている。
66頁においては,上段に「一白水星方位吉凶の図」が記載され,平成11年の方位の吉凶についての解説が記載され,下段に適職が記載されている。
67頁においては,平成15年の運勢が仕事運,恋愛運,健康運及び建築・移転運に分けて記載されている。
68頁においては,生まれ年ごとに平成15年の運勢及び運勢に基づく助言が記載されている。
69頁においては,「仕事」,「レジャー」,「インテリア」,「お金」,「ケイタイ電話」,「食べもの」,「おしゃれ」,「趣味」及び「化粧・服装」に分けて運勢及び運勢に基づく助言が記載されている。
70ないし81頁においては,各日ごとの運勢が記載されている。
これらの一定の主題の下にまとめられた文章,図及びグラフの選択及び配列には,編集著作物としての創作性が認められるものということができる。