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著作権判例セレクション

【公表権】法183項を適用した事例/不動産鑑定書の著作物性を認めた事例

平成131220日東京高等裁判所[平成13(行コ)67]
不動産鑑定書は,不動産鑑定士がその専門的知識と経験に基づき不動産の価格を評価し,評価の前提事実,評価の過程,評価の結論等を記載するものであり,その記載内容は,基本的には客観的事項であるものの,創作的な表現部分も含まれているから,全体として,著作物性を否定することはできない。したがって,不動産鑑定士には鑑定書を無断で公表されない権利がある。
しかし,本件決定当時の著作権法18条2項が「著作者は,次の各号に掲げる場合には,当該各号に掲げる行為について同意したものと推定する。」として,同項1号が「その著作物でまだ公表されていないものの著作権を譲渡した場合 当該著作物をその著作権の行使により公衆に提供し,又は提示すること。」と定め,その後情報公開法の制定に伴う改正により同法18条に3項が追加され,改正後の同条3項が「著作者は,次の各号に掲げる場合には,当該各号に掲げる行為について同意したものとみなす。」として,同項1号が「その著作物でまだ公表されていないものを行政機関(…)に提供した場合(情報公開法第9条第1項の規定による開示する旨の決定の時までに別段の意思表示をした場合を除く。) 情報公開法の規定により行政機関の長が当該著作物を公衆に提供し,又は提示すること。」と,また,同項2号が「その著作物でまだ公表されていないものを地方公共団体に提供した場合(開示する旨の決定までに特段の意思表示をした場合を除く。) 情報公開条例(…)規定により当該地方公共団体の機関が当該著作物を公衆に提供し,又は提示すること。」と定めていることからすると,控訴人市から依頼を受けて作成し,控訴人市に交付した本件鑑定評価書について,著作者である不動産鑑定士は,控訴人市が情報公開条例に従ってこれを公開することについて同意したものと推定することができ,この推定を覆すに足りる証拠はない。したがって,本件鑑定評価書の開示は,著作者人格権を侵害するものではない。