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著作権判例セレクション

【編集著作物】年度版用語辞典の編集著作物性及び編集著作者性/レイアウト・フォーマット用紙の著作物性を否定した事例

▶平成100529日東京地方裁判所[平成7()5273]▶平成111028日東京高等裁判所[平成10()2983]
二1 弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる(証拠)並びに弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。
(一) 被告は、昭和63831日、同社が刊行を企画していた年度版用語辞典のブックデザインを原告に依頼した際、次のような右書籍の骨格を示した。
すなわち、本のサイズ及び縦組みとするか横組みとするかは作業進行を見て決定するものとされたが、①本文以外に「ハミダシ情報」をつけない代りに「F情報」爛を設けること、②「F情報」の字数は200字ないし300字であること、③本文1024ページ(予定)を約140の分野に分けて編集し、各分野には「分野見出し」がつくこと、③分野の中にも3ないし5の中見出しが入ること、④「分野見出し」には、筆者名、肩書き、略歴がつくこと、⑤見出し語には原則として英語表記(又は他の外国語)をつけ、本文解説との間は改行すること、⑥柱には「分野名」と「ページ・ノンブル」を入れること、⑥項目配列が50音順ではなく、読者が総索引で掲載ページを確認してから引くことになるので、ノンブルの見やすさが最優先課題とされたこと、⑥各分野には、当該分野の新傾向を要約した「ニュートレンド爛」(約1000字)、最新語をピックアップした「90年のニューワード爛」及び「本文解説」の三部構成となること等が被告から原告に示された。
(二) 被告は、各年度の本件知恵蔵が編集著作物であることを明らかに争わないから自白したものとみなす。本件知恵蔵は、用語が使用される社会事象を「国際関係」「経済」「産業」「社会」「政治」「サイエンス」「テクノロジー」「文化」「生活」「スポーツ」といった大きな分野に分類した上、その分野をさらに「経済」の分野であれば、「貿易」「日本経済」「財政」等、「政治」の分野であれば、「国会」「内閣・行政」「地方自治」「外交」「防衛」等の分野に分け、分けられた当該分野の見出しとともにその分野の傾向を記載した「ニュートレンド」、最新語を集めた「新語話題語」及びその分野の基本用語を集めた「用語」を配し、「用語」欄ではさらに中見出しが入って共通する項目ごとに基本用語が集められている。また、各用語の解説を補足するため写真や図表のほか、紙面上部には「F情報」と呼ばれる解説が付せられている。
なお、書籍末尾には、外来語・略語集、人名情報・統計・年表及び総索引が編纂され、年度毎に異なる特集も組まれている。
(三) 本件知恵蔵の紙面の一例は、(1)分野が偶数ページから始まる分野冒頭の見開き紙面につき別紙紙面例①、(2)分野が奇数ページから始まる分野冒頭の見開き紙面につき同②、(3)「新語話題語」から「用語」への切り替えがある分野途中の見開き紙面につき同③、(4)「用語」だけの分野途中の見開き紙面につき同④のとおりである。
三 原告の編集著作権について
そこで、本件知恵蔵につき、原告に編集著作物の著作者としての権利が認められるか否かを検討する。
1 著作権法121項は、「編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護する。」と規定し、旧著作権法のように著作物が利用されることを編集著作物の保護の要件としていず、事実やデータ等の著作物でないものも、編集物の素材となることを前提としている。しかしながら、そのことから、編集著作物の複製物、例えば書籍に具体的に記載、表現されているものの全てが選択、配列の創作性が問題となる素材となり得るものではない。
即ち、素材の選択又は配列に創作性の認められる編集物が著作物として保護されるのは、素材の選択又は配列に著作者の個性が何らかの形で現れていれば、当該編集物としての思想又は感情の創作的表現が認められるためであると解されるところ、具体的な編集物に記載、表現されているものの内、その選択、配列の創作性が問題とされる素材が何であるか、どのような意味での選択、配列の創作性が問題となるかは、当該編集物の性質、内容によって定まるものである。
2 前記二のとおり、本件知恵蔵は、今日の社会において用いられている用語の意味内容を分野毎に解説することを目的とした年度版用語辞典であって、その性質、目的からみて、数多ある用語の中から選択された用語とその解説が収集され、これを、経済、政治等の大分類の中の貿易、日本経済、財政、あるいは国会、内閣・行政、地方自治、外交、防衛等の一定の分野毎に、かつ、各分野の中では「新語話題語」及び「用語」欄に分け、「用語」欄は更に中分類して配列されるとともに、これを補足、説明する「F情報」や図表・写真、これらの用語の背景となった社会の傾向の解説記事(「ニュートレンド」)が選択配列されている点に、本件知恵蔵の編集著作物としての創作性が存在すると認められる。してみると、本件知恵蔵の創作的選択及び創作的配列の対象となった素材は、あくまで、右「新語話題語」及び「用語」欄に記載された用語とその解説、「F情報」の記述、図表・写真及び「ニュートレンド」の記述であると解するのが相当である。
他方、原告が本件知恵蔵の素材であると主張する柱、ノンブル、ツメの態様、分野の見出し、項目、解説本文等に使用された文字の大きさ、書体、使用された罫、約物の形状は、確かに本件知恵蔵の紙面に記載、表現されているものであるけれど、本件知恵蔵の年度版用語辞典という著作物としての性質、目的から考えれば、編集著作物としての本件知恵蔵の創作の対象となった素材とはなり得ない。また、原告が記事の一つに挙げる「分野見出し」も、本件知恵蔵の右素材の選択又は配列の基準となるものではあるが、それ自体は、収集された素材群が社会事象のどの分野に属するかを示すいわば枠組みに過ぎず、この種の用語辞典において50音順、いろは順等の音別配列でなく、事項別配列を採用する限り、何らかの「分野見出し」を掲げることは当該書籍にとって必要不可欠であるから、「分野見出し」という紙面構成上の記載をもって本件知恵蔵の素材とすることはできない。
そして、本件知恵蔵の素材であると認められる右「新語話題語」及び「用語」欄に記載された用語とその解説、「F情報」、図表・写真及び「ニュートレンド」に関して、どの用語を取り上げるか、どの解説を採用するか、どの用語との関係でどの図表・写真を採用するかという内容の選択に関与したのが原告であることを認めるに足りる証拠はなく、右素材の選択について、原告の創作的関与を認めることはできない。
3 また、本件知恵蔵の中での右のような素材の配列の創作性とは、右に見たように、本件知恵蔵の年度版用語辞典という性質及び目的の観点から考えれば、素材である用語とその解説、F情報、写真、図表、ニュートレンド等の素材をどのような大分野、分野に系統的に分類し、各分野の中で、「新語話題語」「ニュートレンド」「用語」に分類し、「用語」欄では更に中分類したかという、いかなる分類、順序で配列したかに見出すべきであって、原告がかかる意味における素材の創作的配列を行ったと認めるに足りる証拠はない。
原告は、本件知恵蔵の紙面における「新語話題語」「用語」「ニュートレンド」「F情報」及び写真・図表の配列を主張する。なる程、本件知恵蔵の「新語話題語」「用語」の掲載された頁を、開いたときに認識できる余白部分と文字や写真・図表の位置、文章が何段組みで、一行何字、一段何行で印刷するかを決定することを、国語的な意味では、素材である用語とその解説、写真・図表の「配列」と表現できないわけではない。また、これらの紙面上の配列(レイアウト)は、読者の読み易さ、紙面構成上の工夫や美的感覚に基づいて採用されたものであり、その決定、採用までには知的活動が行われ、創作的なものということができる余地もある。しかし、一定の分類法によって配列されることによって、検索の便を図るとともに、相互の関連性が示された各用語の意味の文字による解説とそれを補うための写真・図表という表現された内容こそに価値がある年度版用語辞典という本件知恵蔵の性質、目的に照らせば、著作物としての本件知恵蔵の素材の選択、配列の創作性は、前記のような素材を前記のとおりどのように分類し、どのような順序で配列したかにあるのであって、原告主張のような紙面上の余白と文字や写真・図表の配置、文字を何段組みで一行何字、一段何列とするか等は、編集物である本件知恵蔵の創作性に何らかかわるものではない。そのことは、本件知恵蔵に依拠してその文字による用語解説、写真・図表による補足を、そのまま分類、順序を全て維持しつつ、原告が主張するような具体的な紙面における余白の配置、段数、一行の文字数、一段の行数、文字の大きさ、書体等は全て本件知恵蔵とは異なるものとした書籍を作成することは、編集著作物である本件知恵蔵の複製に当たると解されることからも明かである。してみると、原告の主張する「配列」は、本件知恵蔵の場合、編集著作物としての創作性の対象となる「配列」に当たるものではないから、原告の主張する「配列」を、本件知恵蔵の編集著作物としての創作的配列と見ることはできない。
4 原告は、本件知恵蔵あるいは一般的なブックデザインにおける「かたち」の重要性を指摘し、「かたち」と内容が一体のものとして相互に影響を与えながら編集行為が行われると主張する。
本の装丁ばかりでなく、読者の見易さや読者に与える印象、編集、製本上の便宜を考慮して、書籍における各紙面の構成を検討する行為が、今日の出版、編集作業において一定の役割を果たし、このようなブックデザインがブックデザイナーの知的活動に裏付けられていることは、被告が原告に本件知恵蔵のブックデザインをわざわざ依頼した事実からも、また、成立に争いのない(証拠)によっても認められるところではある。
しかしながら、著作権法は、出版業界において一般に「編集」と呼ばれている行為に関与した者、あるいは「編集行為」そのものを直ちに著作権法上の保護の対象としているわけでなく、また、編集物における「創作性」全てを保護の対象としているものではない。
また、原告は、本件知恵蔵が著作権法上保護を受ける編集著作物であることを前提として、原告が本件知恵蔵の「素材」の「かたち」を選択し、あるいは「配列」したことを、原告に編集著作権が成立する根拠としているが、原告の主張内容からすれば、著作権法上編集著作物とは認められない書籍に対しても、原告が主張する趣旨での素材の選択又は配列は可能である。そうすると、ブックデザインという知的活動内容に変わりはなくても、関与した書籍(編集物)が著作権法上保護を受ける編集著作物であるか否かによって、ブックデザイナーに編集著作権が成立したりしなかったりするという奇異な結果となる。このような結果の相違が生じるのは、原告が主張する創作性が、結局のところ、著作権法が編集物が著作物として保護される要件とした素材の選択又は配列の創作性とは異質のものであることを示すものである。
5 したがって、請求原因における原告の主張を前提としても、本件知恵蔵に、原告の編集著作権の準共有持分を認めることはできない。
四 本件レイアウト・フォーマット用紙の著作物性について
1 著作権法は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義し(211号)、保護の対象は「創作的な表現」であって、「思想又は感情」それ自体あるいはアイデアそのものではないことを前提としている。そして、著作権法における「創作性」とは、厳密な意味での独創性や新規性が要求されるわけではなく、思想又は感情の外部的表現に著作者の個性が何らかの形で現れていれば足りるものと解されるが、他方、一定のアイデアを表現すれば誰が著作しても同様の表現になるようなものは、創作的な表現とはいえない。
2 ところで、(証拠等)によれば、本件レイアウト・フォーマット用紙における天地の空き寸法や段数、段間、行間、一行の文字数等の数値は、原告の知的活動の結果として提案され、被告の担当者が採用を決定し、本件レイアウト・フォーマット用紙A及びBとして完成をみたことが認められる。
しかしながら、別紙レイアウト・フォーマット用紙A及びBの体裁からも判るように、本件レイアウト・フォーマット用紙は、完成後の書籍の紙面を表す枠の中に本文紙面を1頁につき4段組み、段間2字分、118字、41行(A)、又は、5段組み、段間2字分、114字、41行(B)とし、上部欄外スペースを横組み4段、段間2字分、118字、9行(A、B共通)として、それらの文字に相当する位置に小四角形を配列し、字数や行数の計算がしやすいように最初の行や各行頭に番号を入れたものを見開き2頁分並べ、その上下左右の欄外に補助的に目盛りを入れる等したものであって、本件知恵蔵の紙面を構成する各記事や写真・図表、見出し等を各頁毎に要求される条件に応じて、どのように紙面に割り付けるかを検討し、決定し、これを記入して印刷担当者へ伝達するために使用されるものである。
ところで、本件レイアウト・フォーマット用紙A、Bのように、文字に相当する位置に小四角形を配列すること、最初の行や各行頭に番号を入れること、見開き2頁分を1枚の用紙におさめること、上下左右の欄外に補助的な目盛りを入れることは、レイアウト・フォーマット用紙としてありふれた態様であるから、これらの部分に創作的な表現を認められない。
次に、本文紙面あるいは上部欄外スペースに前記の段数、段間、1行の字数、1段の行数となるような位置に対応する個数の小四角形を配列したことは、本件知恵蔵で右のような本文紙面及び上部欄外スペースの段数、段間、行数、1行の文字数を基本とするレイアウトを実施するためであり、右のような段数、段間、行数、1行の文字数を基本とするレイアウトを実施するために、レイアウト・フォーマット用紙を作成しようとすれば、本件レイアウト・フォーマット用紙A又はBのような体裁とならざるを得ず、またそうでなければ、レイアウト・フォーマット用紙としての機能を発揮することはできないはずである。そうすると、本件レイアウト・フォーマット用紙中の小四角形の配列は、本文紙面及び上部欄外スペースを前記のような段数、段間、1行の文字数、行数を基本として、本件知恵蔵の各紙面を割付けるというアイデアそのものを視覚化ないし具体化したものに過ぎず、そのようなアイデアに基づいてレイアウト・フォーマット用紙を作成しようとすれば、小四角形の配列は本件レイアウト・フォーマット用紙のそれと大同小異とならざるを得ず、それ以外の表現の余地は多くはないから、創作的な表現ということはできず、著作物として、著作権法上の保護を受けることはできない。
3 原告は、本件レイアウト・フォーマット用紙は、原告の個性、学識、経験等の独創性の表出が存在すると主張する。本件における原告の主張からすると、その趣旨は、想定しうるレイアウトの中から本件レイアウト・フォーマット用紙に具体化されたレイアウトを選択したこと、あるいは、本文紙面の天地寸法及び段間2文字を変えないで、四段組みにも五段組みにも、更には、3段組み(124字)、3段組み(138字)にもできる78字というマッジクナンバーに着目し、四段組み118字及び5段組み114字を基本として想定しうるレイアウトの中から本件で具体化されたレイアウトを選択したこと、したがって、誰がレイアウトしても本件レイアウト・フォーマット用紙に到達するというものではないというものと理解できる。
しかしながら、本件レイアウト・フォーマット用紙の完成に至るまでにたとえ幾多の工夫や試行錯誤があったとしても、それは、本件知恵蔵の紙面構成、レイアウトをどのようにするかのアイデアが完成するまでの工夫や試行錯誤であって、その結果得られた前記のようなアイデアに基づいて本件知恵蔵が紙面の割付け作業を行うためのレイアウト・フォーマット用紙を具体的に作成しようとすれば、その具体的表現は唯一無二とはいえないにしても、本件レイアウト・フォーマット用紙は、限られた表現の一つに過ぎない。このような本件レイアウト・フォーマット用紙を著作物として著作権法により保護することは、結局のところ、本件レイアウト・フォーマットと密接不可分の紙面構成についてのアイデアを特定の者に長期間独占させるものであり、著作権法が予定する表現の保護を超える結果となる。
4 よって、本件レイアウト・フォーマット用紙について著作権を取得したとする原告の主張は採用できない。
五 以上によれば、本件知恵蔵に原告の編集著作権が成立したこと及び本件レイアウト・フォーマット用紙の著作権を前提とした原告の利得償還請求は理由がない。
また、原告は、被告が1994年版及び1995年版の知恵蔵において、本件レイアウト・フォーマット用紙とこれに基づく紙面構成の方針を変えたことを不法行為であるとして、被告に対し慰謝料の支払いを求めているが、本件知恵蔵の紙面に原告の編集著作権が認められず、本件レイアウト・フォーマット用紙に著作権が認められないばかりでなく、被告が原告に知恵蔵のブックデザインを依頼しなくなった以上その紙面構成を変えることは当然であるから、被告の右行為に不法行為が成立する余地はない。

[控訴審]
二 編集著作権に基づく請求について
1 著作権法にいう著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであるが、控訴人が知恵蔵の素材であると主張する柱、ノンブル、ツメの態様、分野の見出し、項目、解説本文等に使用された文字の大きさ、書体、使用された罫、約物の形状などが配置される本件レイアウト・フォーマット用紙及び控訴人が知恵蔵の素材であると主張する柱、ノンブル、ツメの態様、分野の見出し、項目、解説本文等に使用された文字の大きさ、書体、使用された罫、約物の形状は、編集著作物である知恵蔵の編集過程における紙面の割付け方針を示すものであって、それが知恵蔵の編集過程を離れて独自の創作性を有し独自の表現をもたらすものと認めるべき特段の事情のない限り、それ自体に独立して著作物性を認めることはできない。控訴人の主位的請求原因が、1994年版と1995年版の知恵蔵に使用されたレイアウト・フォーマット用紙は控訴人が制作を担当した本件レイアウト・フォーマット用紙の複製であることを前提とするものである以上、控訴人の主張も、本件レイアウト・フォーマット用紙が、そのまま知恵蔵以外の他の書籍、特に被控訴人以外の出版社刊行の書籍に使用されるものであることを前提にしているものでないことは明らかである。
(注)「柱」とは、版面の周辺の余白に印刷した見出しを意味する。「ノンブル」とは、頁数を示す数字を意味する。「ツメ」とは、検索の便宜のために辞書等の小口に印刷する一定の記号等を意味する。「約物」とは、文字や数字以外の各種の記号活字の総称を意味する。
控訴人は、本件レイアウト・フォーマット用紙は被控訴人から独立したブックデザイナー固有の知的創作物である旨主張する。しかし、年度版用語辞典である知恵蔵のような編集著作物の刊行までの間には、その前後は別として、企画、原稿作成、割付けなどの作業が複合的に積み重ねられることは顕著な事実であるところ、本件における前記一認定の前提事実に照らすと、本件レイアウト・フォーマット用紙の作成も、控訴人の知的活動の結果であるということはいえても、それは、知恵蔵の刊行までの間の編集過程において示された編集あるいは割付け作業のアイデアが視覚化された段階のものにとどまり、そこに、選択され配列された分野別の「ニュートレンド」、「新語話題語」、「用語」等の解説記事や図表・写真を中心とする編集著作物である知恵蔵とは別に、本件レイアウト・フォーマット用紙自体に著作権法上保護されるべき独立の著作権が成立するものと認めることはできない。
2 したがって、控訴人が本件レイアウト・フォーマット用紙の著作権を有することを前提に、本件レイアウト・フォーマット用紙に基づく知恵蔵の紙面の割付け方針が控訴人の編集著作物ないし控訴人と被控訴人との共有著作物であるとする控訴人の主張は理由がなく、これを前提とする主位的請求(利得償還請求及び損害賠償請求)も理由がなく、これらの請求を棄却した原判決は相当である。