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著作権判例セレクション

【映画著作物】報道番組での,自身(精神鑑定を行った医師)の映像・証言の使用が問題となった事例
▶平成231028日京都地方裁判所[平成21()3642]
() 「本件映像」は,被告の系列テレビ局である讀賣テレビが,平成12年2月11日ころ,原告に対して実施したインタビューを撮影して録画し,同日,讀賣テレビが放送したニュース番組において放送されたものである。上記インタビューは,平成11年12月に京都市伏見区の小学校で発生した児童刺殺事件(「別件殺人事件」)の犯人について,原告が,精神医学的観点から分析した見解を説明するものであった。

3 著作者人格権又は著作権の侵害(争点Ⅲ)
(1) 本件映像の著作物性
ア 本件映像は,讀賣テレビがニュース番組に使用するために原告をインタビュー取材して録画したものであるから,映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され,かつ,物であるビデオテープに固定された著作物であり,映画の著作物に該当する(著作権法2条3項,10条1項7号)。
イ 次に,本件映像のもととなった原告のインタビューでは,原告が,別件殺人事件の犯人について精神医学の専門家として分析した結果を述べているところ,その内容が原告の思想又は感情を創作的に表現したものであって,学術の範囲に属するものといえるときには,上記インタビューにおいて原告が口述した内容(以下「本件口述内容」という。)は,言語の著作物に該当する余地がある(著作権法10条1項1号)。なお,原告は,本件映像は映像及び音声が不可分一体として言語の著作物となると主張しているが,思想又は感情を創作的に表現した著作物として意味を持つのは,原告が音声により表現した本件口述内容の部分に限られるから,上記原告の主張は採用しない。
(2) 本件映像全体について
証拠によれば,原告は,本件映像の撮影に当たり,讀賣テレビの担当者との間で一度ないし複数回の打合せを行ったことが推測できるが,本件映像において,原告はあくまでインタビュー対象にすぎず,本件映像の全体的形成に創作的に寄与したということはできないから,映画の著作物である本件映像全体について,原告が著作者又は共同著作者であるということはできない。
したがって,原告は,本件映像全体について著作者人格権及び著作権を有していない。
(3) 本件口述内容について
本件口述内容は,上記(1)イ記載のとおり,原告の思想又は感情を表現したものとして言語の著作物となる余地があり,その作成過程によっては原告が著作者又は共同著作者であるということができるが,被告は,本件報道において,本件映像から音声を切り離し,映像部分のみを使用しているから,本件口述内容に関する著作権又は著作者人格権を侵害したとはいえない。