Kaneda Legal Service {top}

著作権判例セレクション

【氏名表示権】著作者名の表示の省略(193)を認めなかった事例

▶平成240322日東京地方裁判所[平成22()34705]
2 争点2(被告らは,本件テレビ番組に原告の氏名表示を省略すること(著作権法19条3項)ができるか)について
被告らは,本件ビデオ映像は撮影対象であるSLの希少性に主たる価値があること,本件テレビ番組は被告O企画が本件ビデオ映像のごく一部を抽出して編集したものであり,本件ビデオ映像の全体とは相当質の異なる作品となっていること,映像作品においては,放送時間の制約もあり,氏名表示についても一定の制約があることなどを挙げ,本件テレビ番組に原告の氏名の表示を省略したとしても,著作物の利用の目的及び態様に照らし,著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがなく,公正な慣行にも反しない(著作権法19条3項)と主張する。
しかしながら,著作権法は,著作者の人格的利益を保護するために,著作者人格権としての氏名表示権を認めており,同権利は,二次的著作物の公衆への提供等に際しての原著作物の著作者名の表示についても認められることに鑑みれば,仮に,本件ビデオ映像の価値や本件テレビ番組の編集方法について,被告らの主張する事実が認められるとしても,そのことのみをもって,本件ビデオ映像を撮影した原告の氏名を,同映像を素材として制作された本件テレビ番組に表示しないことが,原告が著作者であることを主張する利益を害するおそれがないものとも,公正な慣行に反しないものであるともいうことはできない。
したがって,被告らの上記主張は理由がない。