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著作権判例セレクション

【著作権の制限】法41条の適用を認めなかった事例

▶令和3716日東京地方裁判所[令和3()4491]
() 原告は,別件の名誉毀損訴訟(「別件訴訟」)の訴訟代理人であり,被告は,同訴訟の被告の一人でもあるところ,被告は,原告に無断で,別件訴訟の第1回口頭弁論期日の前に,原告の作成した別件訴訟の訴状(「別件訴状」)を,自らのブログの記事内にそのデータファイルへのリンクを張る形で公表するなどした。
本件は,原告が,被告に対し,被告の上記行為は,別件訴状に係る原告の著作権(公衆送信権)及び著作者人格権(公表権)を侵害するものであるとして,慰謝料等の支払を求めた事案である。

3 争点3(著作権法41条(時事の事件の報道のための利用)の適用の有無)について
著作権法41条は,「時事の事件を報道する場合には,当該事件を構成…(す)る著作物は,報道の目的上正当な範囲内において,…利用することができる。」と規定するところ,被告は,別件訴状の公表は「時事の事件を報道する場合」に当たると主張する。
しかし,本件ブログ記事には,前記前提事実のとおり,「改めて訴状をいただいたことは大変遺憾です。」,「仮にBさんの感情を害するものがあっても受忍限度内であると考えます。」,「『デマを意図的に拡散した』かのごとく記載されたことについては,業界の大御所であるBさんからパワハラを受けたと感じています。」などと記載されており,その趣旨は,紛争状態にある別件訴訟原告から訴えを提起されたことについて,遺憾の意を表明し,あるいは訴状の内容の不当性を訴えるものであって,公衆に対し,当該訴訟や別件訴状の内容を社会的な意義のある時事の事件として客観的かつ正確に伝えようとするものであると解することはできない。
したがって,別件訴状の公表は,「時事の事件を報道する場合」に該当せず,著作権法41条は適用されない。