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著作権判例セレクション

【著作権の制限】法381項の適用を認めなかった事例

▶平成200917日大阪高等裁判所[平成19()735]
4 争点4(本件店舗における演奏に著作権法38条1項が適用されるか否か。)について
(1) 管理著作物であっても,営利を目的とせず,かつ,聴衆又は観衆から料金を受けない場合には,公に演奏することができるが,実演家に対し報酬が支払われる場合はこの限りではない(著作権法38条1項)。 しかし,本件店舗におけるピアノ演奏については,前記3(1)において説示したとおり,1審被告がピアノ演奏を利用して本件店舗の雰囲気作りをしていると認められる以上,それによって醸成された雰囲気を好む客の来集を図っているものと評価できるから,営利を目的としないとはいえない。なお,1審原告が主張する平成17年5月31日の「Dライブ」,平成18年6月17日のライブ及び貸切営業における演奏及び「サッカーワールドカップ第2回観戦会」における演奏は,前記3(2)(3)のとおり,1審被告が演奏主体となって管理著作物を使用しているものとは認められないから,これを前提とする同条項の適用の有無は検討するまでもない。
よって,本件店舗における管理著作物の上記演奏が著作権法38条1項に該当するとの1審被告の主張は理由がない。
そして,原判決認定のとおり,1審被告は,本件店舗における管理著作物の利用について1審原告の許諾を受けていなかったから,本件店舗におけるピアノ演奏及び本件店舗主催のライブ演奏で管理著作物を利用することは,1審原告の管理著作物の著作権を侵害するものであることが明らかである。
(2) 控訴審における当事者の主張について
1審被告は,著作権法38条1項は,非営利行為を著作権侵害に当たらないとするものであり,営利行為とは金銭の授受を伴う有償行為をいうと主張する。
しかし,同項は,同法22条が著作権の支分権として上演権・演奏権を規定することを前提に,「公表された著作物は,営利を目的とせず,かつ,聴衆又は観衆から料金(いずれの名目をもつてするかを問わず,著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には,公に上演し,演奏し,上映し,又は口述することができる。ただし,当該上演,演奏,上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は,この限りでない。」と定めるから,演奏に営利目的があれば,聴衆から料金を受けず,又は実演家に報酬が支払われない場合でも,同項の対象外であることは文言上明らかである。そうすると,「営利を目的」とするとは,演奏が直接的に対価(金銭の授受等)を伴わず,間接的に営利を目指している場合をも含むと解するほかない。よって,1審被告の上記主張は失当である。