Kaneda Legal Service {top}

著作権判例セレクション

【著作隣接権】レコード製作者の意義

▶平成190119日東京地方裁判所[平成18()1769]
ア レコード製作者の意義
著作権法上,レコード製作者とは,「レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう。」(著作権法2条1項6号)と定義されているから,レコード(同法2条1項5号)に入っている音を初めて蓄音機用音盤,録音テープその他の物に固定した者,すなわち,レコードの原盤の制作者を指すものと解される。そして,レコード製作者であるためには,いかなる方式の履行をも要しないものであるが(同法89条5項),物理的な録音行為の従事者ではなく,自己の計算と責任において録音する者,通常は,原盤制作時における費用の負担者がこれに該当するというべきである。また,レコード製作者が誰かについては,原盤制作と同時に原始的に決定されるべきものであり,原盤制作後の後発的な費用負担の変更等によって,レコード製作者たる地位そのものが変わることはないものと解される。
イ 本件におけるレコード製作者
これを本件についてみるに,本件各契約において,前記認定のとおり,第1契約,第2契約及び第3契約では,A音源に係る原盤の制作前に,原告とSMEが制作費の各2分の1を負担し,第4覚書では,B音源に係る原盤の制作前に,原告が制作費の全額を負担することが明示的に決まっていたものである。そして,A音源に係る原盤は,原告とSMEが共同で2分の1ずつ各自の計算と責任において制作し,B音源に係る原盤は,原告が自己の計算と責任において制作したものである。
したがって,これらの音源に係る原盤の制作時において,原始的に,A音源については,原告とSMEが各2分の1の割合をもって共同してレコード製作者の地位を取得し,B音源については,原告がその全部につき単独でレコード製作者の地位を取得したものと認められる。なお,本件において,A音源及びB音源に関するレコードが著作権法8条(保護を受けるレコード)の要件を充たしていることは明らかである。