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著作権判例セレクション
【パブリシティ権】パブリシティ権侵害による不法行為の成立を認定した事例
▶平成31年2月8日東京地方裁判所[平成28(ワ)26612等]▶令和2年2月20日知的財産高等裁判所[平成31(ネ)10033]
(注) 本件第1事件は,ファッションデザイナーである原告ジル及びそのマネジメント会社である原告会社が,被告に対し,被告のウェブサイトに被告表示1(原告ジルの氏名)及び2(同原告の肖像写真)を掲載した行為は原告ジルのパブリシティ権を侵害するなどと主張して,被告に対し,
パブリシティ権又は不競法3条1項に基づく上記ウェブサイトにおける被告表示1の表示の差止めなどを求めた事案である。
1 認定事実
前記前提事実に加え,後掲の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実を認めることができる。
(略)
2 争点1(原告ジルのパブリシティ権侵害による不法行為の成否)について
(1)
争点1-1(原告ジルのパブリシティ権の侵害の有無)について
ア 原告ジルの肖像等の顧客吸引力の有無
(ア) 前記認定事実によれば,原告ジルは,平成5年以降毎年ニューヨーク・コレクションに出展している世界的に有名なファッションデザイナーであって,原告ジルの氏名,肖像写真等が,単独又は被告や他のライセンシーの商品との関連で,我が国の新聞や雑誌等で多数回にわたり取り上げられ,服飾のみならず,化粧品,陶器,時計など多くの種類の商品が本件ブランドの商品として販売されていることに照らすと,原告ジルの肖像等は,被告商品を含むファッション関係の商品について,その販売等を促進する顧客吸引力を有するものと認められる。
したがって,原告ジルは,これらの商品に関し,その顧客吸引力を排他的に利用する権利であるパブリシティ権を有する。
(イ) これに対し,被告は,被告アンケート調査の結果に基づいて原告ジルの認知度が低いと主張するが,同アンケート調査は,原告ジルの肖像写真(被告表示2の写真)のみを示して当該写真の人物の認知度を調べるものであり,同調査においてその名前まで知っている回答者が少なかったとしても,そのことをもって,原告ジルの肖像等の顧客吸引力を否定することはできない。また,同調査においても,原告ジルの名前の付いた本件ブランドの認知度は8割を超えており,このことは原告ジルの知名度が高いことを示すものということができる。
イ 被告表示1及び2の使用目的等
(ア) 平成27年頃の被告ウェブサイトの構成は,前記前提事実記載のとおりであるところ,被告ウェブサイト上においては被告商品の紹介及び販売等がされていたのであるから,被告ウェブサイトの目的が,被告商品を宣伝広告し,その販売を促進することにあるのは明らかである。
そして,被告表示1及び2は,被告ウェブサイトの一部であるCONCEPTページに,被告表示3及び4とともに表示されていたものであって,同ページ自体は原告ジル個人の肖像等や言動,経歴等を紹介する内容を主とするものではあるものの,他のウェブページと一体となって,本件ブランドのイメージを向上させ,ひいては,被告商品の宣伝広告や販売促進を企図するものであるということができる。
そうすると,被告は,被告ウェブサイトにおいて,専ら原告ジルの肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的として,被告表示1及び2を被告商品の広告に使用していたと認めるのが相当である。被告英語版ウェブサイトのCONCEPTページについても,これと同様に解することができる。
(イ) これに対し,被告は,CONCEPTページは本件ブランドの来歴を示すもので,原告ジルの顧客吸引力を利用する目的のものではなく,実際のところ被告表示1~4の有無で被告の売上げに変化はないと主張する。しかし,肖像等の使用が専ら顧客吸引力の利用を目的としているかどうかは,肖像等の使用態様,使用目的等を総合的に考慮して判断されるべきであり,前記判示の事情によれば,被告表示1~4の有無により売上げの変動が認められなかったとしても,上記結論に影響を及ぼすものではないというべきである。
(2)
争点1-2(原告らによる同意,承諾の有無)について
被告は,修正サービス契約の解除(本件解除)の前後を問わず,被告が被告ウェブサイトに被告表示1~4を使用することについて原告らが同意,承諾をしていたと主張する。
ア 本件解除までの間について
(略)
イ 本件解除後について
(略)
ウ 以上によれば,被告が本件解除による修正サービス契約の終了後に被告ウェブサイトのCONCEPTページに被告表示1及び2を表示していた行為は,原告ジルのパブリシティ権を侵害するものであるということができる。
3 争点2(品質誤認惹起行為該当の有無)について
(略)
4 争点3(信義則違反ないし権利濫用の成否)について
被告は,本件解除の原因は原告らの債務不履行にあることや,原告らが被告に金銭を無心しようとして第1事件訴訟を提起したものであることなどを理由として,原告らが被告に対し差止めや損害賠償等を求めることは,信義則に反し,権利濫用に当たると主張する。
しかし,原告らがその請求に根拠がないことを認識しながら被告に金銭の支払を要求したと認めるに足りる証拠はなく,また,本件解除の原因のいかんにかかわらず,原告らが修正サービス契約の終了を前提として被告に被告表示1~5の差止めや損害賠償を求めることが信義則違反又は権利濫用に該当すると解すべき理由はない。
したがって,被告の上記主張は理由がない。
5 争点4(差止めの可否及び必要性)について
(1)
パブリシティ権に基づく請求について
ア 原告会社について
パブリシティ権は人格権に由来する権利であるから(最高裁平成24年2月2日第一小法廷判決参照),原告ジルの肖像等の商業的利用につき独占的利用権及び許諾権を有しているにすぎない原告会社は固有の差止請求権を有しない。
したがって,原告会社が原告ジルのパブリシティ権に基づき被告ウェブサイト等への被告表示1の表示の差止請求は理由がない。
イ 原告ジルについて
原告ジルは,前述のとおり,人格権に由来する権利であるパブリシティ権を有するから,これを侵害する者又は侵害するおそれがある者に対して差止請求をし得ると解すべきである。そして,原告ジルは,被告に対し,被告表示1及び2の被告ウェブサイト等における表示の差止めを求めていたところ,被告は,同表示2に関する請求は認諾したので,以下では,原告ジルの氏名を表す被告表示1の被告ウェブサイト等における表示の差止請求について検討する。
この点について,原告ジルは,被告は,被告英語版ウェブサイトにおいて被告表示1の表示を継続するなどしているのであるから,差止めの必要性があると主張する。しかし,前記認定のとおり,被告は,平成28年2月頃には被告ウェブサイトからCONCEPTページを削除し,第1事件の訴状受領後には,被告英語版ウェブサイトについても外部から閲覧できないようにするなどの措置を講じている上,被告が被告ウェブサイト等における被告表示2~4の表示の差止請求を認諾していることや,被告が原告側から別紙商標権目録記載の商標権等を譲り受けており,原告との紛争リスクを抱えながらあえて同様のウェブページを再度開設する必要性に乏しいことなどを考慮すると,今後,被告が再度CONCEPTページを復活させるなどして被告表示1を表示するとは考え難い。
また,被告が商標権譲渡契約に基づき原告会社等から譲り受けた「JS商標」に係る全ての権利には,「ジルスチュアート」,「JILL
STUART」の文字などを含む登録商標権が含まれており,被告がこれらの権利を行使することが妨げられるものではないことを考慮すると,被告が被告ウェブサイト等において被告表示1を表示したからといって,それが当然に原告ジルのパブリシティ権を侵害することになるものではない。そうすると,被告ウェブサイト等における被告表示1の表示位置や態様等を特定せずにその表示の差止めを認めることは,過剰な差止めというべきである。
以上のとおり,原告ジルの被告に対する被告表示1に関する差止請求は理由がない。
(2)
不競法に基づく請求について
ア 被告表示1について
不競法に基づく被告表示1の表示の差止請求については,上記(1)イで判示したとおり,今後,被告が再度CONCEPTページを復活させるなどして被告表示1を表示するとは考え難いことから,被告表示1を今後も継続して使用するおそれがあると認めることはできない。
イ 被告表示5について
不競法に基づく被告表示5の表示の差止請求については,被告が,本件執行官保管に係る被告表示5の表示を付した商品タグの廃棄を求める部分に係る請求の認諾をしているので,その余の部分についての差止請求の可否が問題となる。
この点,原告らは,本件仮処分決定後も被告が被告表示5を商品タグに付した被告商品を店舗に陳列,販売していたことを考慮すると差止めの必要があると主張するが,被告は,本件執行により執行官保管されている商品タグ及び同商品タグを付した被告商品の廃棄については認諾しており,本件執行官保管に係る商品タグ以外に,被告表示5を付した商品タグや,同商品タグを付した被告商品が存在するとはうかがわれない。
そうすると,被告が被告表示5を今後も継続して使用するおそれはあるということはできず,不競法に基づく差止請求についても理由がない。
6 争点5(被告の故意,過失の有無)について
被告は,故意又は過失はないと主張するが,被告は,修正サービス契約の解除後も原告らに確認するなどの必要な対応をすることなく,被告表示1~4を被告ウェブサイト等に表示して被告商品の宣伝広告を行い,また,被告表示5を被告商品に付して販売していたのであるから,被告には,原告ジルのパブリシティ権の侵害及び不正競争行為について過失があるというべきである。
7 争点6(原告らの損害額)について
(1)
パブリシティ権侵害に基づく使用料相当損害について
ア 原告らは,被告による被告表示1及び2の使用により,使用料相当の損害を被ったと主張し,使用料相当損害額の算定方法としては,著作権法114条3項の類推適用により,売上高に相当な実施料率を乗じる方法によることが相当であると主張する。
しかし,前記判示のとおり,本件は,被告らが原告に無断で個々の商品に原告ジルの肖像等を表示するなどして被告商品を販売したという事案ではなく,原告らが,修正サービス契約の終了までの間は,被告表示1及び2を被告ウェブサイトに掲載して使用することを許諾していたものの,同許諾は修正サービス契約の終了(平成25年2月26日)とともに終了したため,同日以降も同各表示の掲載を継続したことについてパブリシティ権侵害が成立するという事案である。
本件事案のかかる事実関係の下においては,被告表示1及び2の使用許諾終了後の使用による損害を算定するに当たっては,同使用許諾の終了以前の状況,すなわち,原告らと被告との間の取引状況,原告ジルの肖像等の使用の対価の有無及びその額,被告表示1及び2の使用態様,それによる被告の得た経済的な利益の有無及びその額等を総合的に考慮して,損害額を検討するべきであり,売上高に相当な実施料率を乗じる方法により使用料相当損害額を算定することは相当ではない。
(略)
(2)
不正競争行為による損害について
被告は,原告らが我が国において被告商品と競合する製品についての営業をしていないことなどを指摘し,被告表示1~5の使用により原告らの営業上の利益の侵害(不競法4条)は認められないと主張する。
しかし,原告らは,我が国において,被告以外の他のライセンシーとともに本件ブランドに関する事業を展開していると認められるところ,原告ジルがいかなる商品のデザインに関与し,またいかなる商品を推奨しているかは,ジル・スチュアート・ブランドの商品全体の品質やイメージに影響を及ぼすものであるから,この点について事実に反する表示をすることは,原告らの営業上の利益を害するものということができる。
(略)
(6)
遅延損害金について
パブリシティ権侵害に係る使用料相当損害金に対する遅延損害金については,継続的不法行為であって日々発生するものとして計算すべきとの考え方もあり得るところであるが,ウェブサイト上の記載がその内容に変化なく継続しており,これに対する総額として損害賠償金を認定したという本件の事情に鑑みると,これを一連一体のものとして,前記損害総額100万円に対し,継続的不法行為の終了日である平成28年8月24日から支払済みまでの遅延損害金を認めるのが相当である(なお,原告らは,被告に対し,積極損害1万3230円については平成29年12月21日から,弁護士費用相当損害金10万円については第1事件の訴状送達の日の翌日である平成28年8月25日から,各支払済みまでの遅延損害金の支払を求めている。)。
8 争点7(謝罪広告又は訂正広告の要否)について
原告らは,被告の行為により,被告のパブリシティ権侵害行為や不正競争行為によって毀損された原告らのパブリシティ価値や営業上の毀損の程度が大きい上,損害賠償のみでは十分ではないとして,主位的に謝罪広告を,予備的に訂正広告の掲載を求めるが,その損害を填補するには損害賠償で十分に足りるというべきであり,原告らの謝罪広告請求及び訂正広告請求はいずれも理由がない。
9 争点8(誤認防止表示の要否)について
原告らは,原告らのパブリシティ価値の毀損及び営業上の信用毀損による損害を実効的に回復するためには,被告をして誤認防止表示を行わせるのが相当であると主張するが,その損害を填補するには損害賠償で十分に足りるというべきであり,更に誤認防止表示を認めることは相当ではない。
(以下略)
[控訴審同旨]
1 当裁判所も,原審と同様,一審原告らの請求は原判決が認容した限度で理由があると判断する。その理由は,以下のとおり補充するほか,原判決に記載のとおりであるからこれを引用する。
2 基本的な観点
⑴ 原判決を引用して認定した事実経過によれば,本件事案には,次のような事情がある。
⑵ 両当事者は,平成9年から平成25年までの間,本件ブランドを用いた日本での婦人服販売事業のための契約関係にあり,本件ブランドの知名度の向上について共通の利益を有していた。被告各表示の素材となった一審原告Xの肖像写真及び紹介文並びに被告写真に複製された原告写真は,上記事業における本件ブランドの宣伝広告の目的のために,一審原告側から提供された素材である。そして,その提供に当たっては,当時の両当事者は協力関係にあったという背景から,使用の目的,態様及び期間等について,文書等による明確な取極めはなされていなかった。
平成25年の修正サービス契約の解除(本件解除)により両当事者間の契約関係が解消された時点において,これらの素材は,被告ウェブサイト上及び店舗内の被告各表示及び被告写真として現に用いられていた。そのことは,一審原告側においても了知していた可能性が高いし,仮に了知していなかったとしても,被告ウェブサイトの閲覧及び店舗の訪問によって容易に知りうる状態にあった。
契約関係の解消後も,一審被告は,日本国内のJS商標を既に譲り受けていた以上,本件ブランドの下での婦人服販売事業をそれ以前とほぼ同じ態様で継続することが可能であり,そのことは一審原告側も了知していた。また,(証拠)の終了合意書が締結された平成14年以降,同事業における商品のデザインや宣伝広告の手法等について,一審原告側は具体的に関与する権利を失っていたから,本件解除によりすべての契約関係が解消されたからといって,一審被告が被告ウェブサイトを改修するなどして宣伝広告の内容を改めるべき事業上の必然性はなかった。そうすると,契約関係の解消後も,被告各表示及び被告写真をそれまでと同様に使用し続けることを,一審被告は予定しており,一審原告側も,これを予想していたか少なくとも予想し得たといえる。
また,JS商標は一審原告Xの氏名と同一であるから,JS商標及び各商標に関連するグッドウィルを商標権譲渡契約によって譲り受けた上で行う一審被告の事業活動は,その需要者層に,一審原告X個人がこれに関与しているとの認識又は印象を必然的に生じさせるものであったといえる。このような状況は,契約関係の終了後においても直ちに変わるものではない。
⑶ このように,本件事案は,長期間にわたり契約関係にあった当事者が,必ずしも明確に定めてこなかった事柄が問題となり,それが原因となってパブリシティ侵害行為,著作権侵害行為及び不正競争行為(いずれも法的性質としては不法行為)として損害賠償等が請求されている,というものである。
そうすると,権利侵害の成否や損害額の算定の判断に当たっても,契約関係にない権利者と侵害被疑者との間の訴訟におけるものとは異なり,契約関係にあった当時の事情を踏まえた合理的な意思解釈が必要とされる。
⑷ そして,当裁判所は,上記⑶のような観点に立った上で,原審の判断は是認し得ると考え,原判決を引用して上記1のとおり判断するものである。
3 両当事者の当審における主張に対する判断
以下,両当事者の当審における主張につき,上記2で説示した内容も踏まえつつ,必要な限度で判断する。
⑴ 争点1-1(一審原告Xのパブリシティ権の侵害の有無)について
一審原告Xにパブリシティ権が成立し,かつ,一審被告が,これを利用する目的を有していたと認められることは原判決が説示するとおりである。一審被告は,写真の認知度に基づく調査において一審原告Xの認知度が極めて低かったとか,被告表示1~4を削除した後も,一審被告の売上に変化はないなどと主張するが,写真の認知度に基づく調査のみに基づいて,一審原告Xの知名度を論ずるのは相当とはいえないし,一審被告の売上の変化という「結果」によって,一審被告の「目的」を論ずるのも相当とはいえず,これらの主張は,いずれも採用することはできない。
(略)
⑺ 争点6(一審原告らの損害額)について
ア パブリシティ権侵害に基づく使用料相当損害について
原判決の認定した100万円という損害額につき,一審原告会社は高額に過ぎる旨主張し,一審被告は低額に過ぎる旨主張する。
そこで検討するに,本件においては,以下のような事情を考慮する必要があると考えられる。すなわち,
(略)
(ウ) 上記(ア)及び(イ)の事情によれば,一審原告Xの肖像等が顧客誘引力を有し同人にはパブリシティ権が認められるとしても,それらは,いわゆる超一流のファッションデザイナー(例えばB,C,Dにつき(証拠))のものと同列ではないし,パブリシティ権の形成に当たって一審被告がライセンシーとして寄与してきたという経緯を考慮すべきである。
(エ) 一審原告らは,一審原告Xのパブリシティ権の価値が高く,その侵害による損害が大きい旨の主張を裏付けるため,過去の裁判例及び文献の記載を多数援用する。しかしながら,過去においてパブリシティ権の価値が検討された事案の多くは,きわめて知名度が高い権利者(その多くは,知名度の高さが「公知の事実」に近いような芸能人,運動選手等である。)の名称及び肖像等が有する顧客誘引力を,その知名度の形成に寄与していない他者が利用した事案であるから,これらの事案を通じて形成された法理論及びマーケティング理論並びに個別の事案における裁判所の判断は,本件にそのまま適用できるものではない。もっとも,一審原告Xの我が国における認知度は,それなりに高いことからすると,その形成に当たって一審被告の貢献が大きいことを考慮しても,パブリシティ権侵害に対する損害賠償の額を余りに少額とすることもまた相当ではないというべきである。
上記(ア)~(エ)で検討した点を踏まえると,一審原告Xのパブリシティ侵害によって生じた使用料相当損害の額は,原判決が説示するとおり,100万円と評価するのが相当であって,これに反する一審原告会社及び一審被告の主張は,いずれも採用することができない。
(略)
⑼ 争点8(誤認防止表示の要否)について
一審原告会社は,被告表示5によって,需要者及び消費者の間に,一審原告側が被告商品のデザイン等に関与し又はこれを推奨しているとの誤った理解が生じている以上,需要者及び消費者の保護の観点から,一審原告らに対する損害賠償とは別に誤認防止表示を命じる必要がある旨主張する。
しかしながら,上記アンケート結果も踏まえると,そのような誤認がどの程度需要者及び消費者の間に生じたかは具体的に明らかでない上,かかる誤認の発生は,被告各表示によるものというよりも,商標権譲渡契約の効果として,一審原告Xの氏名と同一のJS商標を一審被告が自由に使用し得ることから不可避的に生じるところが大きいといえることからも,一審被告に対して誤認防止表示を命じるのは相当でない。
したがって,一審原告会社の上記主張は採用することができない。