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著作権判例セレクション
【渉外関係】職務著作の準拠法
▶平成31年2月8日東京地方裁判所[平成28(ワ)26612等]▶令和2年2月20日知的財産高等裁判所[平成31(ネ)10033]
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争点9(原告写真の著作権の所在)について
原告会社は,原告写真について,職務著作物としてJSインターナショナルに帰属し,その後,原告会社がJSインターナショナルから譲り受けたものであると主張するのに対し,被告は,その著作権が原告会社に帰属することを争う。
この点,職務著作に関する規律は,その性質上,法人その他使用者と被用者の雇用契約の準拠法国である米国著作権法の職務著作に関する規定によると解すべきところ,職務著作に関する米国著作権法101条(1)の「被用者」は雇用契約に限定されず,コモンロー上の代理契約を含み得るものであり,当該制作に対する指示関係の有無等も考慮しつつ認定されるべきものと解されていること,原告写真1~48を制作した丙の所属する丙社の代表者及び原告写真49~126を制作した丁は,上記各写真が職務著作物として作成され,その著作権がJSインターナショナルに帰属することを認めていることなどを考慮すると,原告写真の著作権はJSインターナショナルが有していたものと認めるのが相当である。
そして,証拠によれば,JSインターナショナル,JSジャパン及び原告らは,平成17年(2005年)5月16日,原告会社が,本件ブランド及び原告ジルの全ての広告及び宣伝用資料に関するアジア域内におけるあらゆる所有権(保有権)を原告会社に帰属させる旨の合意を書面で行ったとの事実が認められる。これによれば,原告写真の著作権は,JSインターナショナルから原告会社に譲渡されたものというべきである。
したがって,原告会社は原告写真の著作権を有するものと認められる。
[控訴審同旨]
⑽ 争点9(原告写真の著作権の所在)について
一審被告は,原告写真が職務著作物に当たる旨の原判決の認定は,職務著作の成立要件についての証拠上の裏付けが不十分である旨主張する。
しかしながら,原判決が認定した事実関係に加えて,対価の支払を受けて広告用に撮影して顧客に引き渡した写真に関して撮影者が著作権を保有しておく必要性は乏しいのが通常であることも考慮すれば,たとえ制作における具体的な指示等が具体的に認定されていないとしても,職務著作性を肯定するのに十分な状況が存したといえるのであるから,原判決の認定に誤りがあるとはいえない。
したがって,一審被告の上記主張は採用することができない。