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著作権判例セレクション
【共有著作権】法117条の意義と解釈
▶平成28年6月22日知的財産高等裁判所[平成26(ネ)10019等]
… そして,著作権法117条は,原告[注:フランス民法上の不分割共同財産である著作権の管理者]の当事者適格の有無に影響を及ぼす規定と解することはできない。なぜなら,同条は,共同著作物の各著作権者等が,当該共同著作物に関して,差止請求又は損害賠償請求等を独立してできると規定し,当該著作権等の各共有者が行使できる権利やその行使に際しての条件を定めるものであるところ,その内容は,著作権法112条で定められた著作権又は著作者人格権等の物権類似の効力を前提として,民法で認められた共有関係や不法行為に関する条文及び解釈を反映したものであり,各共有者間において,実体的な権利関係や権利行使に関し,著作権法117条の内容とは異なる合意を一切許さないような効力を有する強行規定と解することはできないからである。
したがって,著作権法117条は,各共有者間において,法律の定めた権利内容や条件とは異なる内容の合意や,それに基づく新たな法律関係の形成を一律に排除するものではなく,共有者間で成立した権利不分割の合意を無効とする法的根拠とはなり得ないというべきである。