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著作権判例セレクション

【言語著作物】ポケモン攻略の質問への回答の著作物性を肯定した事例

▶令和31018日東京地方裁判所[令和3()3397]
1 争点1-1(本件配信によって原告の著作権が侵害されたことが明らかであるか)について
(1) 別投稿(以下「本件投稿8」という。)の著作物性について
ア 証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件配信は,コンピュータを操作して本件コミュニティサイトを閲覧し,その際のコンピュータ画面の表示と閲覧者の発言を動画として配信するものであり,本件各投稿は,いずれも,上記のようにしてコンピュータ画面に表示されたものが本件動画として配信されたと認められるところ,本件配信による原告の著作権侵害の明白性について検討するに当たっては,事案に鑑み,まず,本件各投稿のうち本件投稿8についての著作権侵害の明白性から検討する。
イ 証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件投稿8は,本件コミュニティサイトのチャットにおいて,「C」とのハンドルネームを使用する人物が投稿したものであり,その内容は,他のチャット参加者からポケモンの対戦において勝算の高い選択肢の選び方について質問がされたことを受けて,別紙目録の番号8の「内容」欄記載のとおりの回答をしたものと認められる。
上記「内容」欄の記載によれば,本件投稿8は,勝算が高い選択肢を時間内に選べるようになるために,対戦の振り返りをすることが重要である旨を回答するものであるところ,「ここであれされて負けたからこっちが正解だったなあーと言った振り返りではなく,ここで○○される時は××,△△される時は□□(3つ以上の時もあります)が勝ちの選択肢になっている,と相手の選択肢によって自分が勝てる選択肢がそれぞれ思いついていれば十分なので,まずはそこから考えてみてください。」と振り返りの方法の要点を理解しやすく説明し,ポケモンの対戦の具体的なシミュレーション結果を例示するなどして,相当程度の長さを有する文章により,回答内容を表現しているということができる。したがって,本件投稿8は,投稿者の個性が現れた表現として,創作性を備える言語の著作物に該当すると認められる。
被告は,本件投稿8について,ゲームデータ上の仕様などの法則について記述したものであり,「思想又は感情」を「創作的」に表現したものともいえないから,著作物性は認められない旨主張する。しかしながら,本件投稿8の内容は上記のとおりであり,単に,ゲームの仕様といった事実ないし法則,あるいは,ゲームを有利に進めるためのアイデアを記述するにとどまるものではなく,質問に対応する形で,質問者が理解しやすいように工夫して,解決方法についての投稿者の考えを説明したものであるといえる。したがって,本件投稿8は,「思想又は感情」を「表現したもの」であって,かつ,投稿者の個性が現れている「創作的」な表現であるといえるから,被告の上記主張は採用することができない。
(2) 原告が本件配信時において本件投稿8の著作権を有していたかについて
証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件投稿8は,本件コミュニティサイトの管理者側の「C」のハンドルネームを使用する者が投稿したものであり,本件投稿8に係る著作権については,同人と本件コミュニティサイトの運営者である原告との合意に基づいて,本件配信に先立ち,原告に対して移転されたものと認められる。
したがって,原告は,本件配信時において,本件投稿8の著作権を有していたものである。
(3) 本件配信による本件投稿8に係る著作権侵害の有無について
証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件動画は,本件発信者が本件コミュニティサイトに参加の上,グループチャットの状況を閲覧し,その様子を動画として記録したものであり,本件動画内では,本件投稿8の内容がその画面上に表示されているものと認められ,当該画面表示は言語の著作物である本件投稿8の複製物といえる。
本件発信者は,本件動画を本件配信サイト上で配信したものであるから,本件配信によって,本件投稿8についても,その複製物が本件動画に含まれる形で公衆送信(著作権法23条1項)されたものと認められ,本件全証拠によっても,当該行為について,原告による許諾その他の違法性阻却事由の存在を窺わせる事情は認められない。
したがって,本件配信により少なくとも本件投稿8についての原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明白である。