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著作権判例セレクション
【共同著作】共同著作物の要件(共同意思が必要か)
▶平成31年2月15日東京地方裁判所[平成29(ワ)10909等]
2 争点2(プログラム著作権の複製権侵害の成否)について
(1)
本件プログラムのプログラム著作権の帰属に関し,証拠によれば,「なびシリーズ」の運営に必要なシステムの開発を行ったのは原告であると認められ,本件業務契約書第3項には,プログラムの所有権は原告に帰属する旨の規定が置かれている。これによれば,本件プログラムのプログラム著作権は原告に帰属すると認めるのが相当である。
これに対し,被告は,「なびシリーズ」は従前の「さいなび」を原型とするものであり,本件プログラムの前提となる着想や仕様はBが提供したものであることや,本件業務契約第3項も本件プログラムが共同著作物であることを定めていると主張する。
しかし,「さいなび」に係るプログラムはBが創作したものではなく,本件プログラムの前提となる具体的な着想や仕様をBが提供したと認めるに足りる証拠もない。また,仮に,Bが何らかの着想等を提供したことがあったとしても,共同著作物と認められるためには,「2人以上の者が共同して創作した」ことが必要であり,客観的に各著作者が共同して創作行為を行うこと,主観的に各著作者間に共同して1つの著作物を創作するという共同意思が必要であるところ,被告が客観的に本件プログラムの創作行為を行ったと認めるに足りる証拠はない。
さらに,本件業務契約第3項は,その文言に照らすと,本件プログラムのプログラム著作権が原告に帰属することを規定したと解するのが自然であり,本件プログラムが共同著作物であることを規定したものとは理解し得ない。
したがって,本件プログラムのプログラム著作権は原告に帰属すると認めるのが相当である。
(2)
そして,前記前提事実のとおり,原告が本件業務契約を解除後「なびシリーズ」プログラムを停止した後,被告が「なびシリーズ」プログラムのバックアップから原告が著作権を有するプログラムを原告に無断で「なびシリーズ」サーバに複製し,平成29年4月1日から同月23日までの間,これを認識しつつプログラムを再稼働させていたと認められる。被告の同行為は,本件プログラムのプログラム著作権の侵害となる。