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著作権判例セレクション

【著作権の制限】法47(1)の「小冊子」に当たらないとされた事例

平成100220日東京地方裁判所[平成6()18591]
四 抗弁2(解説又は紹介目的の小冊子)について
1 著作権法47[注:現第1]所定の観覧者のために美術の著作物又は写真の著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子とは、観覧者のために展示された著作物を解説又は紹介することを目的とする小型のカタログ、目録又は図録等を意味するものであり、展示された原作品を鑑賞しようとする観覧者のために著作物の解説又は紹介をすることを目的とするものであるから、掲載される作品の複製の質が複製自体の鑑賞を目的とするものではなく、展示された原作品と解説又は紹介との対応関係を明らかにする程度のものであることを前提としているものと解され、たとえ、観覧者に頒布されるものであっても、紙質、判型、作品の複製態様等を総合して、複製された作品の鑑賞用の図書として販売されているものと同様の価値を有するものは、同条所定の小冊子に含まれないと解するのが相当である。
2 前記(証拠)によれば、本件書籍は、約300mm×約225mmの規格で、上質紙が用いられており、総頁数136頁であるところ、そのうち92頁には本件展覧会で展示された作品80点が掲載されており、しかも、各作品は、1頁につき1点ないしは見開き2頁にわたって1点が掲載されている。そして、本件絵画は、縦がいずれも約200mm、横は作品によって約113ないし約147mmの大きさで、カラー印刷で7頁にわたって、各頁に本件絵画1ないし71点ずつ複製されており、各絵画についての解説文は各頁の下部約4分の1のスペースに印刷されているのみであることが認められる。
3 右のような本件書籍の紙質、判型、作品の複製態様等の事実によれば、本件書籍は、実質的に見て鑑賞用の画集として市中に販売されているものと同様の価値を有すると認められるものであるから、著作権法47条にいう著作物の解説又は紹介を目的とする小冊子に当たるということはできない。よって、抗弁2は認められない。