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著作権判例セレクション
【氏名表示権】氏名表示権侵害(「読売新聞社会部」→「読売社会部C班」)を認定した事例
▶平成26年9月12日東京地方裁判所[平成24(ワ)29975等]
(前提事実) 本件書籍には,その262頁から269頁にかけて,「本シリーズにあたってのあとがき」という表題の文章が記載されており,その末尾には,「2012年4月」「元読売新聞社会部
C」と記載されている(以下,この文章全体を「本件あとがき」という。)。本件あとがきは,全136行の8頁にわたる文章であり,その内容は基本的に,本件書籍の表題であり,本文のテーマでもある金融腐敗の検証に関連する記載から構成されているが,そのうち7頁目において,6行にわたり,Cが,株式会社読売巨人軍の専務取締役球団代表兼GMの職にあった2011年(平成23年)11月,読売新聞グループ本社代表取締役M会長(「M会長」)を記者会見で告発して解任されたこと,同告発は既に報告し確定していたコーチ人事を「鶴の一声」で覆す同会長の球団私物化の非を訴えたものであったなどと記述されている。また,本件書籍の著作者表示は,「読売社会部C班」である。
(2)
氏名表示権侵害について
著作権法19条1項によれば,著作者は,その著作物の原作品に,又は著作物を利用するに当たって著作者名を表示するか否か,表示するとすればいかなる著作者名を表示するかを決定することができると解されるところ,前記及び証拠によれば,原告は,原書籍 1 及び2の出版に当たり,その著作者名を「読売新聞社会部」とすることに決定して表示したこと,ところが,本件書籍は,原書籍1及び2の復刻版であるにもかかわらず,その著者名を原書籍 1 及び2のように「読売新聞社会部」とはせず,「読売社会部C班」とするものであること,原告は,本件書籍の著者名を「読売社会部C班」とすることに強く異議を述べていることが認められる。
かかる事情に鑑みると,著者名を「読売社会部C班」として本件書籍を発売等頒布した被告の行為は,著作者である原告が決定した著作者名の表示を原告の意に反して改変した上,これを公衆へ提供したものと認められるから,被告の上記行為は,原書籍1及び2について原告が保有する氏名表示権の侵害行為に該当すると認めるのが相当である。