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著作権判例セレクション

【その他】他人の著作権と抵触する商標は商標登録を受けられるか

令和元年1126日知的財産高等裁判所[令和1(行ケ)10086]
(1) 原告は,(中略) 以上の①ないし③によれば,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるといえるから,商標法4条1項7号に該当する旨主張する。
しかしながら,商標法上,他人の著作権と抵触する商標について,商標登録を受けることができない旨を定めた規定は存在しない。一方で,商標権と著作権が抵触する場合の規律に関し,同法29条は,商標権者は,指定商品又は指定役務についての登録商標の使用がその使用の態様によりその商標登録出願前に生じた他人の著作権又は著作隣接権と抵触するときは,指定商品又は指定役務のうち抵触する部分についてその態様により使用することができない旨を定めており,同条の規定は,他人の著作権と登録商標が抵触する場合があることを前提とするものであるから,商標法上,他人の著作物について商標登録出願を行うことを禁止するものではないものと解される。
そうすると,仮にPH5の立体的形状について本件商標の登録出願日前にヘニングセンの著作権が成立していたとしても,商標法上,PH5の立体的形状についてヘニングセン以外の第三者が商標登録出願を行うことが禁止されるものではないから,PH5の立体的形状について商標登録を取得できるのは,ヘニングセン及びその相続人のみであることを前提とする原告の上記①及び②の主張は,その前提において,採用することができない。
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以上のとおり,原告の上記①ないし③の主張はいずれも理由がないから,本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるとの原告の主張は採用することができない。