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著作権判例セレクション
【写真著作物】スカイダイビング中に遠隔操作して撮影した写真の著作物性を認めた事例
▶平成15年02月26日東京高等裁判所[平成14(ネ)3296]
本件各写真は,被控訴人が,本件スカイダイビングに参加していた当時,自らもスカイダイビングの体勢をとり,頭部ヘルメット上に固定したカメラを手元で遠隔操作して,同じくスカイダイビング中の他の参加者等を空中で撮影した写真であって,その際,被控訴人は,事前に,地上の光量と上空の光量との違い,撮影すべき写真の構図及びシャッターチャンス,順光・逆光の選択等その撮影効果を検討,想定し,カメラの露出をセットするなどの準備をした上,スカイダイビング中において,自己及び撮影依頼者の安全に注意し,あらかじめ検討,想定した被写体との距離及び位置関係を保てるよう自己の位置を調整し,最も効果的な構図でシャッターを切る工夫をして撮影したものである。そうすると,本件各写真は,被控訴人において,上記諸要素を考慮して撮影効果を工夫し,自ら構図を決定し,シャッターチャンスをとらえて撮影した写真であるから,被控訴人の思想又は感情を一定の映像によって創作的に表現したものとして著作物性を有するというべきである。
控訴人らは,本件各写真が写真の著作物と認められるだけの創作性に欠けると主張し,その根拠として,スカイダイビング中の参加者の姿を単に撮影した記念写真にすぎないこと,撮影の過程には何ら独創的な工夫がされておらず,カメラという機械のメカニズムを利用して被写体を忠実に再製しただけのものであることを指摘するが,前者の点は,それ自体として著作物性を否定する根拠となるものではないし,また,本件各写真が,単なる機械的なメカニズムによる被写体の忠実な再製にとどまらず,独自の創作性を有し,その著作物性を優に肯定し得ることは上記のとおりであるから,控訴人らの主張は採用の限りではない。