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著作権判例セレクション

【侵害とみなす行為】「情を知って」(11312)の意義/113条に該当しない侵害幇助者に差止請求できるか

▶平成22226日東京地方裁判所[平成20()32593]▶平成220804日知的財産高等裁判所[平成22()10033]
前記のとおり,本件韓国語著作物は控訴人の翻訳権を侵害するものであり,また,】被告らは,原告から,各図書館等で所蔵する本件韓国語著作物が原告著作物を違法に複製・翻訳したものである旨の警告を受け,原告が株式会社高麗書林(韓国の高麗書林とは別法人)外1名を被告とする別件訴訟(当庁平成20年(ワ)第20337号事件)において著作権侵害を主張して争っているという事情を認識してはいるものの,本件韓国語著作物を原告の著作権を侵害する行為によって作成されたものであると知って所持しているものと【認めることはできないし,著作権法113条1項2号の「情を知って」とは,取引の安全を確保する必要から主観的要件が設けられた趣旨や同号違反には刑事罰が科せられること(最高裁平成6年(あ)第582号同7年4月4日第三小法廷決定参照)を考慮すると,単に侵害の警告を受けているとか侵害を理由とする訴えが提起されたとの事情を知るだけでは,これを肯定するに足らず,少なくとも,仮処分,判決等の公権的判断において,著作権を侵害する行為によって作成された物であることが示されたことを認識する必要があると解されるべきところ,本件において,本判決以前に,そのような公権的判断が示された事情はうかがわれず,被控訴人らについて同号】の「侵害とみなす行為」が成立するということもできない。

[控訴審]
4 争点4(差止請求等の可否)について
前記2及び3のとおり,被控訴人らは,いずれも,本件韓国語著作物を貸与等の目的をもって購入し,それぞれの図書館等において所蔵しているにすぎない者であって,控訴人著作物に係る控訴人の著作権や著作者人格権(以下「著作権等」という。)を直接的に侵害する主体と認められる者ではない。
そして,著作権法113条が,直接的に著作権等の侵害行為を構成するものではない幇助行為のうちの一定のものに限って著作権等侵害とみなすとしていることからしても,同条に該当しない著作権等侵害の幇助者にすぎない者の行為について,同法112条に基づく著作権等侵害による差止等請求を認めることは,明文で同法113条が規定されたことと整合せず,法的安定性を害するものであるから,直接的な著作権等の侵害行為や同条に該当する行為を行っておらず,これを行うおそれがあるとは認められない被控訴人らに対する差止等請求を認めることはできない。