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著作権判例セレクション

【写真著作物】独自の染色技術を用いた創作着物作品の制作工程写真・制作工程文章等の著作物性が問題となった事例

平成30619日東京地方裁判所[平成28()32742]
1 争点1(著作物性の有無)について
(1) 制作工程写真及び美術館写真の著作物性について
ア 制作工程写真について
制作工程写真は,別紙「制作工程写真目録」記載のとおり,故一竹による「辻が花染」の制作工程の各場面を撮影したものであるところ,これら制作工程写真の目的は,その性質上,いずれも制作工程の一場面を忠実に撮影することにあり,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光線との関係等といった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとならざるを得ず,誰が撮影しても同じように撮影されるべきものであって,撮影者の個性が表れないものというべきである。したがって,制作工程写真は,いずれも著作物とは認められない。これに反する原告らの主張は採用できない。
イ 美術館写真について
美術館写真は,別紙「美術館写真目録」記載のとおり,一竹美術館の外観又は内部を撮影したものであるところ,これら美術館写真の目的は,その性質上,いずれも一竹美術館の外観又は内部を忠実に撮影することにあり,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光線との関係等といった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとならざるを得ず,誰が撮影しても同じように撮影されるべきものであって,撮影者の個性が表れないものである。したがって,美術館写真は,いずれも著作物とは認められない。これに反する原告らの主張は採用できない。
(2) 制作工程文章の著作物性について
制作工程文章は,別紙「制作工程文章目録」記載のとおり,「辻が花染」の各制作工程を説明したものである。その目的は,各制作工程を説明することにあるため,表現上一定の制約はあるものの,制作工程文章が,同様に「辻が花染」の制作工程について説明した故一竹作成の文章とも異なっていることに照らしても,各制作工程文章の具体的表現は,その作成者の経験を踏まえた独自のものとなっており,作成者の個性が表現されているといえるから,制作工程文章は全体として創作性があり,著作物と認められる。
これに反する被告の主張は採用できない。
(3) 旧HPコンテンツの著作物性について
旧HPコンテンツは,別紙「旧HPコンテンツ目録」記載のとおりであり,旧HPコンテンツ1は「辻が花染」の歴史的説明,旧HPコンテンツ2は故一竹と「辻が花染」との関わり,旧HPコンテンツ3はフランス芸術文化勲章シュヴァリエ章勲章メッセージの和訳,旧HPコンテンツ4はスミソニアン国立自然史博物館からの感謝状の和訳である。旧HPコンテンツ1及び2はいずれも歴史的事実に関する記述ではあるものの,その事実の取捨選択,表現の仕方には様々なものがあり得,その具体的表現には筆者の個性が表れているといえるから,創作性があり,著作物と認められる。また,旧HPコンテンツ3及び4はいずれも仏語ないし英語の翻訳であるが,翻訳の表現には幅があり,用語の選択や訳し方等その具体的表現に翻訳者の個性が表れているといえるから,創作性があり,著作物と認められる。これに反する被告の主張は採用できない。