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著作権判例セレクション
【引用】 法32条1項の「引用」に当たらないとされた事例
▶平成30年6月19日東京地方裁判所[平成28(ワ)32742]
7 争点7(著作権法32条1項の抗弁の成否)について
被告は,被告小冊子,被告パンフレット,被告特別割引券,被告展示案内チラシ,被告イベント案内チラシ及び被告 Facebook への投稿における一竹作品等の複製は,著作権法32条1項の「引用」に当たると主張する。
そこで検討するに,著作権法32条1項所定の適法な引用と認められるためには,①引用されるのが公表された著作物であること,②引用であること,③公正な慣行に合致すること,④報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われること,が必要である。
これを本件についてみるに,被告小冊子,被告パンフレット,被告特別割引券,被告展示案内チラシ,被告イベント案内チラシ及び被告 Facebook は,いずれも一竹美術館の顧客誘引目的に作成されたものであるところ,それらにおける一竹作品等の利用は,一竹美術館に顧客を誘引するために,一竹作品が美術館の展示品であることを示すもので,それ自体が主たる内容として用いられているものである。旧HPコンテンツの利用も,それ自体を主たる内容として掲載するものである。そうすると,これらはいずれも,そもそも引用に当たらないか,少なくとも公正な慣行に合致し,引用の目的上正当な範囲内で行われているものとは認められないから,著作権法32条1項の「引用」に当たらない。
したがって,被告の主張はいずれも採用できない。